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この記事の要点
ティーチングペンダントとは、産業用ロボットに位置データや動作を教える「教示(ティーチング)」に使う手持ちの操作端末です。教示のほかプログラミングやパラメータ設定にも使われ、非常停止スイッチとイネーブルスイッチ(デッドマンスイッチ)という安全機構を備えています。呼称や操作体系はメーカーごとに異なり、教示等の業務には労働安全衛生規則に基づく特別教育が必要です。
ロボットメーカーによっては「ティーチペンダント」や「ティーチングボックス」などとも呼ばれますが、一般的には「ティーチングペンダント」で通用します。メーカーによって機能や使用方法が異なるため、複数メーカーのロボットを同時に扱うと戸惑うことも多いはずです。本記事では、ティーチングペンダントの基本的な使用方法や機能、メーカーごとの呼称の違い、操作に必要な資格までを2026年7月時点の情報で解説します。
もくじ
ティーチングペンダントとは、ロボットに位置や動き方を教える「教示(ティーチング)」操作を行うための端末です。ロボットを動作させるには、ロボット側に位置や動き方などを教えなければなりません。この操作を「教示」または「ティーチング」と言います。
ただし、ティーチングペンダントの役割は単純に位置を教示するだけではありません。たとえばプログラミングやパラメータの設定などです。また、ティーチングペンダントはロボットメーカーや機種によって異なります。機能だけでなく操作方法や用語も違うため、他の機種を使用する際に混乱するかもしれません。その点は注意が必要です。
ロボットの教示方法には「オフラインティーチング」と「オンラインティーチング」の2種類があります。ティーチングペンダントはどちらの教示方法にも対応していますが、得意とするのはオンラインティーチングの方です。
オフラインティーチングとは、ロボットの実機のない状態での教示やロボットのプログラミングを指します。ロボットの動作を想定してプログラミングすることは机上でも可能です。動作位置についても、機械図面やCADデータから割り出すことができます。オフラインティーチングの場合はティーチングペンダントではなくパソコンツールを使用することも多いでしょう。
オフラインティーチングの注意点は、実際の位置とオフラインでの位置データは異なる場合が多いことです。したがって、ほとんどの場合、最終的にオンラインティーチングでの位置補正が必要となります。
オンラインティーチングとは、ロボットの実機とワークを使って位置データの教示やプログラミングを行う方法です。オンラインティーチングでは、ティーチングペンダントを使用して教示を行うのが一般的です。時には機械の中に頭を入れて、ワークと機械の干渉などを確認しなければなりません。したがって危険を伴う可能性があり、安全には十分注意する必要があります。
ティーチングペンダントの主な機能は、非常停止スイッチ、イネーブルスイッチ(デッドマンスイッチ)、表示板(タッチパネル)、軸操作キー、運転・停止・JOGキーの5つです。もう少し具体的に解説しましょう。
どのメーカーのティーチングペンダントにも必ず付属しているのが非常停止スイッチです。教示中はもちろん、通常運転時にも有効となります。試運転時には必須の機能と言えるでしょう。機種によってはティーチングペンダントを取り外すことで非常停止状態となるものもあり、その場合には専用のキャップが必要です。
非常停止スイッチと同じく安全装置として、イネーブルスイッチとデッドマンスイッチがあります。両方がON状態のときのみロボットの動作が可能です。イネーブルスイッチはティーチングペンダントの表面に、デッドマンスイッチは背面にあります。
人は身の危険を感じたときに手を強く握り込む習性があります。デッドマンスイッチはこの習性を前提に、「握らない(停止)」「軽く握る(動作可能)」「強く握る(停止)」の3ポジションで設計されており、強く握り込んだ場合にも非常停止状態となります。なお、デッドマンスイッチは多関節ロボットのティーチングペンダントには付属していますが、単軸ロボットや2軸ロボットなどでは単純なイネーブルスイッチでのモード切り替えとなる場合があります。
表示板には位置データやプログラム、パラメータ、アラームなどの情報が表示されます。近年はタッチパネル式が主流です。軸操作キーは、ロボットの各軸を1軸ずつ動かす「JOG送り」に使用します。教示位置へロボットを少しずつ近づける際に多用するキーであり、教示作業の使い勝手を左右します。あわせて、プログラムの確認・編集や運転・停止の操作もペンダント上で行えます。
ティーチングペンダントの呼称・キー配置・用語・プログラム言語はメーカーごとに異なります。教示・JOG送り・非常停止・イネーブルといった基本概念は共通ですが、同じ操作でもキーの位置や画面構成が違うため、機種が変わると覚え直しが必要になる部分があります。
産業用ロボットを調べ始めると、すぐに20社近くのメーカーがあることに気が付きます。
【2026年最新】産業用ロボットメーカー比較|世界4強(ABB・ファナック・安川・KUKA)+国内5社のシェア・特徴とライバル関係を解説
世界4強と呼ばれる主要メーカーのペンダント呼称を整理すると、次のとおりです。
| メーカー | ペンダントの呼称 | 補足 |
|---|---|---|
| ABB | FlexPendant | タッチパネル主体の操作端末 |
| ファナック | iPendant | タッチ操作対応の「iPendant Touch」もあり |
| 安川電機 | プログラミングペンダント | 協働ロボット向けには「スマートペンダント」も展開 |
| KUKA | smartPAD | タッチパネルと物理キーを組み合わせた操作端末 |
実際に使用する前には、各メーカーで開催されているロボット講習会に参加したり、ロボットSIerに相談したりするのがおすすめです。メーカー選定そのものの比較は、上で引用した産業用ロボットメーカー比較の記事が参考になります。
産業用ロボットの教示等の業務に従事するには、労働安全衛生規則第36条第31号に基づく特別教育の受講が必要です。特別教育は学科と実技で構成され、ロボットの構造や操作方法、教示作業の危険性などを学びます。ティーチングペンダントの操作そのものに国家資格は不要ですが、教示等の業務に就く場合はこの特別教育が法令上の要件となります。
また、産業用ロボットの国際安全規格であるISO 10218-1/-2は2025年に約14年ぶりに改訂され、協働ロボットの安全要求事項(旧ISO/TS 15066)が本体規格に統合されました。安全柵の要否や協働運転の設計は、この規格とリスクアセスメントに基づいて判断されます。教示作業の安全確保は「ペンダントの安全機構」と「法令・規格に基づく運用」の両輪で成り立っていると言えます。
ティーチングペンダントのメリットは、①操作が比較的簡単であること、②持ち運びが容易でロボットのそばで作業できること、③非常停止ボタンやデッドマンスイッチによって緊急停止ができることの3点です。実機を目視しながら位置を追い込めるため、干渉やワークのばらつきに合わせた微調整に向いています。
デメリットとして主に考えられるのは、①操作に危険を伴う場合があること、②ロボットの動作中にデータの変更ができないこと、③規模の大きなプログラミングは手間がかかることの3点です。
教示の際には安全柵などの安全装置を解除した状態で行う場合があり、作業員が狭いところに手や頭を入れながら教示をしなければならないこともあります。危険を伴うことを念頭に置き、安全に注意しながら作業をする必要があります。また、ロボットのデータを変更する場合にはロボットを停止させなければならないため、操作時には一時的な生産ロスが発生する可能性もあります。規模の大きなプログラムは、パソコンのツールなどでオフライン作成してコントローラーに転送する方法が良いでしょう。
ティーチングペンダントの操作を覚えることと、教示業務が回り続けることは、実は別の問題です。教示のノウハウ——干渉を避ける経由点の取り方、ワークのばらつきへの余裕の持たせ方、アラーム復旧の手順——は、多くの現場で特定のベテランの頭の中にだけあります。メーカーごとにペンダントの操作体系が異なることは、この属人化をさらに強めます。担当者が変わるたびに「その機種を触れる人」を探すところから始まるためです。
これはティーチングに限った話ではありません。生産技術業務の属人化について、当サイトでは次のように整理しています。
生産計画の属人化は、担当者の努力不足ではなく、制約条件を持つ基盤が業務フローにないという構造の問題です。
生産計画が特定のベテランしか立てられない構造——需要・材料・段取りが一人の頭でしか繋がらない理由と、生産技術OSでそろえられる範囲
教示条件・復旧手順・設備ごとの癖といった情報が、個人のメモや記憶ではなく、業務の流れの中に基盤として残る状態をつくれるかどうか。この観点で近年注目されているのが「業務OS」という考え方です。
業務OSとは、設計・調達・品質・生産技術といった「業務領域ごと」に、その領域の文書・データ・フロー・AIエージェントをパッケージとして束ねた基盤です。
業務OSとは何か——製造業ERPでもPLMでもない、第3の業務基盤の正体
ロボットの立ち上げ・保全・改善を含む生産技術業務のどこが属人化しやすく、どこを基盤でそろえられるかは、生産計画の属人化を扱った記事で具体的に分解しています。教示ノウハウの引き継ぎに課題を感じている方は、あわせてご覧ください。
産業用ロボットに位置や動作を教える教示(ティーチング)に使う手持ちの操作端末です。教示のほか、プログラミングやパラメータ設定、状態表示にも使われます。
指すものは同じで、呼び方の違いです。メーカーによって「ティーチペンダント」「ティーチングボックス」「プログラミングペンダント」などと呼ばれますが、一般的には「ティーチングペンダント」で通用します。
産業用ロボットの教示等の業務に従事する場合は、労働安全衛生規則第36条第31号に基づく特別教育(学科・実技)の受講が必要です。国家資格は不要ですが、特別教育は法令上の要件です。
人は危険を感じると手を強く握り込む習性があるためです。「軽く握る」ときだけ動作可能で、「離す」「強く握る」はいずれも停止になるよう設計されています。
教示・JOG送り・非常停止・イネーブルといった基本概念は共通ですが、呼称・キー配置・用語・プログラム言語はメーカーごとに異なります。機種ごとの講習会の受講や、社内での教示手順の文書化が推奨されます。
本記事はロボットの教示に使用するティーチングペンダントの機能やメリット・デメリット、メーカーごとの呼称、必要な教育について解説しました。ティーチングペンダントは位置データの教示やプログラミング、パラメータ設定などが可能なツールで、非常停止スイッチ・イネーブルスイッチ(デッドマンスイッチ)・表示板・軸操作キー・運転キーが基本構成です。
ティーチングペンダントはロボット操作には無くてはならない存在です。ただし操作時には危険を伴う可能性があるため、特別教育の受講と安全機構の理解を前提に、安全に注意しながら作業を行いましょう。メーカーや機種によって操作方法が異なるため、実際に使用する前には各メーカーのロボット講習会への参加やロボットSIerへの相談がおすすめです。あわせて、教示ノウハウを個人の記憶に留めず業務の基盤に残す仕組みづくりも、これからの生産技術部門の重要なテーマです。
※上記リンクはいずれも2026年7月8日に編集部で到達・内容を確認しています。
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