近年、需要の高まりにより右肩上がりの成長を見せる産業用ロボット業界。2019年~2020年には米中貿易摩擦やコロナウイルスの影響により一時停滞したものの、2021年には過去最高の生産金額を記録するなど、産業用ロボットは今後更なる発展が期待される業界の1つです。そして、産業用ロボットには絶対に欠かせない要素であるロボットハンド。人間の手の代わりとなるロボットハンドは物をつかむ、持ち上げるといった重要な役割を担っており、扱うワークによってその種類は様々です。そんなロボットハンド技術をベースに事業展開をしているのが、滝本さんが代表取締役CEOを務めるKiQ Robotics株式会社。今回は滝本さんと、片山さんに同社が展開するロボットハンドである”ラティス構造柔軟指”についてお話を伺いました。
―まず、御社の事業内容について教えてください
滝本
我々はロボットハンド技術をベースに設立した会社になります。いわゆる大学発のベンチャー企業になりますが、ロボットハンドの中でもソフトハンドの領域で自動化の適用範囲を広げていこうということで設立された経緯があります。また、我々は「世界一働きやすい生産現場を造る」ということをミッションとしています。我々の持つロボットハンドという技術を用いて、現場で本当に困っている人に対して自動化・ロボット化を提供するため日々活動しています。
開発の背景とラティス構造柔軟指の特徴
―そもそもこの柔軟指はどのような背景で開発がスタートしたのでしょうか?
片山
近年の国内製造現場では少量多品種というよりかは、もはや大量多品種を実現しようという流れが生まれつつあるかと思います。特に国土も限られている日本の場合、同一ラインで多品種を生み出せるような仕組み造りは今後必須になってくると思っています。そのような中で例えばロボット搬送にスポットを当てると、同じロボットでたくさんの物が運べる必要があります。ラティス構造柔軟指はロボットハンドに柔軟性を持たせることで、それらを実現する1つの技術になり得るのではないかという着想のもと開発がスタートしました。
―なるほど、業界の今後の課題に対しての1つの答えという感じがしますね。御社の開発するラティス構造柔軟指は従来のものと比べ、どのような点が異なっているのでしょうか?
滝本
一番の特徴としては成形容易性が挙げられるかと思います。
片山
そうですね。従来のゲルやスポンジなどの素材だと任意の形に加工するためには多くの工程を踏む必要があるかと思います。しかし弊社の柔軟指は3Dプリンターで形状を生成しているので、CADデータさえあれば対象物に合わせて様々な形状を実現することが可能になっています。
滝本
また、ゲルやスポンジ、ゴムなどの素材と比べると耐久性があるので、そういった素材でうまくいかなかった場合でも弊社の柔軟指であればうまく適応できる可能性はありますね。
―開発に当たって苦労された点はありましたか?
片山
開発における難しさで言うと、柔らかさのあたり付けのところは未だに試行錯誤しながらやっていますね。大きな変形を伴う場合、一般的に知られる定石が存在しないので、感覚値を蓄積しながらやっているのが現状です。
―開発には職人的な技術が必要になってくるということでしょうか?
片山
そうですね。ただもちろんこの状態を良しとはしていません。その辺りをうまく数値化していくのが今後の課題になってくると思っていますし、そのために引き続き実績を重ねていく必要があると思っています。
トヨタ自動車でも採用され、実際に運用がスタート
―最近だとトヨタ自動車でも御社のラティス構造柔軟指が採用されていると伺っています
滝本
そうですね。トヨタ自動車モノづくりエンジニアリング部の担当者の方が弊社の製品を気に入ってくれて導入がスタートしました。この事例では特定の部品というよりかはプラスチックコンテナの搬送を目的としていて、様々な規格・形状の通い箱が混載されている状況下において、「箱を安定して把持できない」ことや「箱が割れてしまう」といった問題がありました。ラティス構造柔軟指は構造によって変形を適切に調整できるため、通い箱を安定して把持することが可能となり、今回、弊社の製品を導入したことで、これらの問題が解決できたと評価をいただいています。
―業界最大手であるトヨタ自動車の製造現場において効果を発揮しているということからも、製品の信頼性が見て取れますね。ラティス構造柔軟指について今後の展望をお聞かせください
滝本
もちろん、トヨタ自動車さんのような事例は今後どんどん増やしていきたいですね。現在でも何社かお問い合わせをいただいているので、適用事例を積み重ねていくことでラティス構造柔軟指の認知度を上げていければと思います。
ラティス構造柔軟指を通して製造現場の改善を共に目指していく
ラティス構造柔軟指を新たに導入したい場合は、その都度ユーザーの状況に合わせて開発を行っていく流れになるのでしょうか?
滝本
基本的にはその流れになります。やはり3Dプリントで制作するため、対象物に合わせてしっかりと最適化していく必要があります。環境を見ながら数種類のサンプルを試してみて、お客様と一緒に一番良い物を見出していくことが理想だと思っています。実現可能かどうかも含めてしっかりと対応させていただくので、まずはお気軽にお問合せ頂ければ嬉しいですね。
片山
ただし、使用する素材からしてどうしても基準を満たせないので、食品関係には対応ができません。あくまでも工業部品などを想定した導入を検討していただければと思います。
ありがとうございます。因みに今回トヨタ自動車で採用された製品をそのまま使いたい場合は購入も可能なのでしょうか?
片山
もちろん可能です。その場合もお気軽にお問合せ頂ければ対応させていただきます。
ラティス構造柔軟指についてのお問い合わせはこちら
今回はKiQ Robotics株式会社にお話を伺いました。業界最大手であるトヨタ自動車にも採用されたラティス構造柔軟指は、状況に合わせて様々な現場に対応が可能とのことでした。ラティス構造柔軟指については下記のリンクからお問い合わせが可能です。
会社名: KiQ Robotics株式会社
所在地: 〒802-0001 福岡県北九州市小倉北区浅野一丁目3番1号