不適合品の処置はどう決めるのか?——特採・手直し・修理・格下げ・廃棄の選び方と、特採にしてはいけない5条件【2026年版】

寸法が公差から外れた、外観にキズがあった——不適合品が見つかったとき、現場ではその日のうちに「使うか、直すか、捨てるか」を決めなければなりません。ところが処置の選択肢は5つ以上あり、選ぶ順番を決めていない職場では、担当者や納期の状況で処置が変わります。この記事では、処置の選択肢の違いと選ぶ順番、そして特採にしてはいけない条件を整理します。
この記事の要点
- 不適合品の処置は手直し・修理・特採(特別採用)・格下げ・廃棄が基本で、購入品なら返却が加わります。違いは処置のあとに製品が要求事項に適合しているかです。
- 処置を選ぶ前に現品を止めて、不適合の範囲(ロット)を確定させるのが先です。範囲が決まらないまま処置を選ぶと、同じ不適合品が後から出てきます。
- 選ぶ順番は①法令・安全に関わるか ②手直しで戻せるか ③そのまま使える根拠があるか ④別の等級なら使えるかの4問です。
- 法令・安全規格に関わる不適合、範囲や原因が分からない不適合は、そのまま使えそうに見えても特採に適さない条件です。
この記事はどんな判断に役立つ?
この記事が支援する判断:品質保証・製造・生産管理の担当者が、不適合品が見つかった当日に「手直しするか、特採で出すか、廃棄するか」を決める場面を支援します。特採の定義や、特採の判断根拠が記録に残らない問題は別記事で扱っており、本記事は処置をどの順番で選ぶかに絞っています。
不適合品が出たとき、最初に何を決めるのか?
結論から言えば、最初に決めるのは処置ではなく「どこまでが不適合品か」という範囲です。見つかった1個だけを処置しても、同じロットや前後のロットに同じ不適合があれば、処置を決め直すことになります。出荷済みの製品が含まれていれば、顧客への連絡も必要です。
不適合品が出てから処置を決めるまでは、図1の5つの手順で進めます。処置を選ぶのは4番目で、その前に現品を隔離して表示をつけ、範囲を確定させ、どの要求から外れたのかを分けておきます。3番目の分類が、4番目で選べる処置を狭めるからです。
手順1の隔離と表示を省くと、不適合品が良品に混ざって次工程へ流れます。医療機器の品質管理を定めた省令でも、不適合製品を識別し、意図しない使用や出荷を防ぐことが最初に求められています(出典:医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令 第60条)。
処置の選択肢には、どんな違いがあるのか?
処置の選択肢は、処置のあとに製品が当初の要求事項に適合しているかどうかで区別できます。ISO 9000:2015(JIS Q 9000:2015)の用語の定義をもとに整理すると、表1のようになります。
| 処置 | 何をするか | 処置後の製品 | 承認の目安 |
|---|---|---|---|
| 手直し | 追加工・再調整などで元の要求事項に適合させる | 適合(再検査で確認) | 社内の手順どおり |
| 修理 | 要求事項には戻らないが、意図した用途に使える状態にする | 不適合のまま | 権限者。客先仕様なら顧客 |
| 特採 | 手を加えず、そのまま使用・出荷を認める | 不適合のまま | 権限者。客先仕様なら顧客 |
| 格下げ | 当初と別の等級・用途の要求事項に適合させる | 別の要求に適合 | 社内(用途の変更管理) |
| 廃棄 | 当初の用途に使えないようにする | — | 社内 |
法令では、処置の選択肢がどう書かれているか?
処置の選択肢を法令で明文化した例に、医療機器の品質管理を定めた省令があります。同省令の第60条の2は、出荷前の不適合製品を「発見された不適合を除去するための措置をとること」「本来の意図された使用又は操作ができないようにするための措置をとること」「特別採用の下で、使用若しくは操作の許可、工程の次の段階に進むことの許可又は出荷の決定を行うこと」のいずれかで処理すると定めています。表1の手直し・廃棄・特採に当たり、医療機器以外でも処置を考える骨組みとして使えます。
どの処置を選ぶかは、何の順番で決めるのか?
処置は、選択肢を並べて比べるのではなく、図2の4つの問いを上から順に当てはめて決めます。特に1問目は、2問目以降で「そのまま使えそうだ」となっても覆らない条件として扱います。
表2は、それぞれの問いで確かめることと、答えを出すために必要な材料をまとめたものです。材料がそろわず答えが出せない問いがあれば、その時点で処置を保留にし、範囲の確定や原因の調査に戻ります。
| 問い | 確かめること | 答えを出す材料 |
|---|---|---|
| ①法令・安全に関わるか | 外れた特性が法令・安全規格・認証の要求か | 図面の重要特性の指定、適用規格 |
| ②手直しで戻せるか | 元の要求に戻せる工程があり、戻したことを検査で確かめられるか | 手直し手順、検査方法 |
| ③そのまま使えるか | 機能・組立・寿命に影響しないと説明できるか | 設計者の見解、相手部品の寸法 |
| ④別の等級なら使えるか | 要求の緩い製品や用途があり、混入を防げるか | 品番・等級の管理ルール |
この順番が機能するかどうかは、判断の材料が担当者によらずそろうかにかかっています。検査の判定のばらつきを扱った過去記事でも、同じ構造を指摘しました。
判定差は「やる気」や「経験年数」だけの問題ではなく、判断に使う情報がそろっていないことから生まれる構造的な現象です。
同じ図面なのに検査員によって合否が変わる——品質判定のばらつきが生むコストと、検査基準を品質OSにそろえる順番
特採が適さない5つの条件——そのまま出してはいけないのはどんなときか?
特採は、実害のない不適合品を廃棄せずに使うための正当な処置です。過去記事では、特採の位置づけを次のように説明しています。
特採は品質を軽んじる行為ではありません。限られた納期とコストのなかで、実害のある不適合と実害のない不適合を切り分ける現場の重要な判断です。
特採(特別採用)とは?不適合品を「是」で通した判断の根拠が案件に残らない構造と、業務OSでそろえられる範囲【2026年】
ただし、次の条件に当てはまる場合は、機能上は使えそうに見えても特採を選ぶのは避けるべきです。
- 法令・安全規格・認証の要求から外れている——医療機器の省令は、法令の規定等に適合しない場合に特採による処理を禁じています(第60条の2第2項)。
- 顧客の承認が必要なのに取れていない——客先図面の要求から外れた特採を社内の判断だけで出荷しない。
- 不適合の範囲が確定していない——1個を特採で通しても、同じロットの残りを誰も見ていない。
- 原因が分からず、次のロットも同じになる——特採を繰り返すと、図面の公差が事実上変わる。
- 使えると判断した根拠を書けない——「前も大丈夫だった」は根拠にならない。
手直しが逆効果になるのはどんなときか?
手直しは製品を要求事項に戻す処置ですが、手直しの工程で別の特性を悪くする場合や、戻したことを確かめる手段がない場合は逆効果になります。たとえば、浸炭や高周波焼入れで表面を硬化させた部品を追加工すると硬化層が薄くなり、寸法は合っても硬さが要求を下回ることがあります。溶接部の補修を重ねると、熱の影響で周辺の強度が変わります。
医療機器の省令は、製造し直す場合には製品への悪影響を考慮した手順書を定め、製造し直した製品について判定基準への適合を再検証するよう求めています(第60条の4)。医療機器以外でも考え方は同じで、手直しの手順書がない、または手直し後の検査項目が決まっていない不適合は、手直しではなく修理・特採・廃棄のどれかとして扱うほうが安全です。
処置を決めたら、何を記録に残すのか?
ISO 9001:2015 の 8.7.2 は、不適合の内容、とった処置、取得した特別採用、処置を決めた権限者の4点を記録として残すよう求めています。この4点に加えて、処置を選んだ理由を書いておくと、次に似た不適合が出たときに同じ判断を短時間で再現できます。
記録は、処置で終わらせずに原因への対策につなげて初めて役に立ちます。同じ不適合が別のラインで出ていないかを確かめるのが水平展開で、過去記事では次のように定義しています。
水平展開とは、ある工程で見つかった不具合の対策を、同じ条件を持つ他の工程・製品・拠点にも先回りで適用する活動です。
是正処置が同じ不具合を繰り返す構造——品質保証の「水平展開」が形骸化する理由とAIで補える範囲
まとめ——処置は「順番」で決める
不適合品の処置は、止める→範囲を決める→外れた要求を分ける→処置を選ぶ→記録して原因への順で進めます。処置を選ぶときは、法令・安全に関わるか、手直しで戻せるか、そのまま使える根拠があるか、別の等級なら使えるかの4問を上から当てはめます。法令・安全に関わる不適合や、範囲・原因が分からない不適合は、特採に適さない条件として扱ってください。
処置の判断材料が担当者によってそろわない、記録が次の判断に使えていないといった詰まりは、業務の流れを分解すると所在が見えます。品質業務の進め方を相談する(無料)
よくある質問(FAQ)
特採と修理は何が違うのですか?
どちらも要求事項に適合しないまま使う点は同じです。特採は手を加えずにそのまま使い、修理は意図した用途に使える状態まで手を加えてから使います。修理しても要求事項には戻らないため、特採と同じく承認を取る扱いにするのが一般的です。
手直しした製品は、もう一度検査が必要ですか?
必要です。ISO 9001:2015 の 8.7 は、不適合を修正したときに要求事項への適合を検証することを求めています。手直しの工程で別の特性が変わることもあるため、手直しした項目だけでなく影響しうる項目まで検査します。
特採の承認は誰が出すべきですか?
品質マニュアルで定めた、処置を決める権限者が出します。顧客の図面や仕様で決まった要求から外れた場合は、顧客の承認も必要です。
出典
- 医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成十六年厚生労働省令第百六十九号)第60条〜第60条の4 e-Gov法令検索(2026年9月25日に法令APIで原文を照合)
- ISO 9001:2015/JIS Q 9001:2015「品質マネジメントシステム―要求事項」8.7 不適合なアウトプットの管理
- ISO 9000:2015/JIS Q 9000:2015「品質マネジメントシステム―基本及び用語」(手直し・修理・特別採用・格下げ・スクラップの定義)










