制御盤の中は何から決めるのか?——機器配置・発熱・配線の順番と、後から機器が入らなくなる4条件【2026年版】

装置の仕様が固まり、いよいよ制御盤を設計する段階になると、最初に手が止まるのが「何から決めればいいのか」です。機器を並べてから盤の大きさを決めると、あとで発熱が収まらない、配線が通らない、改造時に機器が入らないといった問題が出てきます。この記事では、制御盤の中身を決める順番と、それぞれの段階で使う判断基準、そして後から機器が入らなくなる条件を整理します。
この記事の要点
- 制御盤は①機器リスト ②保護 ③発熱と盤の大きさ ④機器配置 ⑤配線 ⑥予備と図面の順に決めます。配置から始めると、あとで盤の大きさを決め直すことになります。
- 盤の大きさは機器の面積ではなく、機器の発熱量の合計と、盤内の温度上昇の許容値から逆算します。
- 配置は重い機器は下、発熱する機器は上、熱に弱い機器は発熱源の真上を避けるのが基本です。
- 配線は動力線と信号線をダクトごと分けるのが基本で、インバータやサーボの出力線はノイズ源として扱います。
- 予備スペースを取っていない、発熱を計算せずに筐体を先に決めた盤は、後から機器が入らなくなる典型です。
この記事はどんな判断に役立つ?
この記事が支援する判断:装置設計・電気設計の担当者が、制御盤の筐体を手配する前に「盤の大きさ・冷却方式・機器の並べ方」を決める場面を支援します。制御盤の定義や中に入る機器の役割は別記事で扱っており、本記事は決める順番と判断基準に絞っています。
制御盤の設計は、何から順に決めるのか?
結論から言えば、機器の並べ方は4番目です。先に入れる機器と保護の方式を決め、発熱量から盤の大きさと冷却方式を決めてから配置に入ります。図1の6段階は、前の段階の答えが次の段階の条件になる順に並べています。
たとえば、③で盤の大きさが決まらないうちに④で配置を描くと、発熱が収まらなかったときに筐体ごと描き直すことになります。⑤の配線ルートは④の配置で決まり、⑥の予備スペースは③〜⑤の余りではなく、最初から確保する面積として扱います。
保護の方式は、なぜ配置より先に決めるのか?
遮断器や漏電遮断器は、盤に電気が入ってくる入口に置く機器で、方式によって大きさと発熱が変わるからです。電気設備に関する技術基準を定める省令の第14条は「電路の必要な箇所には、過電流による過熱焼損から電線及び電気機械器具を保護し、かつ、火災の発生を防止できるよう、過電流遮断器を施設しなければならない」と定めています(出典:電気設備に関する技術基準を定める省令)。モーターの回路では、過負荷と短絡を別の機器で守る点にも注意が要ります。
サーマルリレーが守るのは過負荷(モーターの焼損につながる継続的な過電流)であり、短絡(ショート)の保護は配線用遮断器(MCCB)やヒューズの役割です。
マグネットスイッチ(電磁接触器)とは?仕組み・電磁開閉器/リレー/サーマルとの違い・記号・選び方を図解で解説【2026年版】
盤の大きさは、何で決まるのか?
盤の大きさは、機器が並ぶ面積ではなく、機器の発熱を盤の表面から逃がせるかで決まります。盤内の温度上昇は、発熱量の合計を P(W)、熱を逃がせる盤の表面積を A(m²)、熱の逃げやすさを表す係数を k とすると、おおよそ ΔT=P÷(k×A)で見積もれます。塗装した鋼板の盤では k に 5.5 W/(m²·K) 程度を使うのが一般的です(IEC TR 60890 の考え方)。
たとえば発熱量の合計が 300W、壁に付けない面の表面積が 2.0m² の盤なら、ΔT=300÷(5.5×2.0)で約27℃上がります。外気が35℃の工場では盤内が約62℃になり、使用周囲温度が55℃までの機器は使えません。発熱量は、インバータやサーボアンプ、電源ユニットのメーカー資料に書かれた値(W)を足し合わせます。
冷却方式は、どう選べばよいのか?
計算した温度上昇が許容値を超えたら、盤を大きくするか冷却を足します。どの冷却方式を選ぶかは、外気の温度と、盤のまわりの粉塵・油ミストの量で決まります。表1は、その判断基準をまとめたものです。
| 冷却方式 | 選ぶ条件 | 向かない条件 |
|---|---|---|
| 自然放熱 | 計算した温度上昇が許容値に収まる | 発熱の大きい機器がある |
| 換気ファン+フィルタ | 外気が盤内の許容温度より十分低い | 粉塵・油ミスト・切削液が多い |
| 熱交換器 | 外気は低いが、外気を盤内に入れたくない | 外気が盤内の許容温度に近い |
| 盤用クーラ | 外気が盤内の許容温度に近い、または超える | 結露への対策が取れない |
省令の第59条も、電気使用場所の電気機械器具について「人体に危害を及ぼし、又は火災が発生するおそれがある発熱がないように施設しなければならない」と定めています。発熱の計算は、機器を守るためだけでなく、安全のための確認でもあります。
機器は、盤のどこに置くのか?
盤の大きさが決まったら、機器の置き場所を決めます。盤の中の機器は、一般に次のような並びになっています。
制御盤の扉を開けると、機器はおおむね「上から電源系、中段に制御系、下段に端子台」というレイアウトで並んでいます。
制御盤とは?配電盤・分電盤との違いと内部の主要機器8つ・動力回路と制御回路を図解で解説【2026年版】
この並びを基本に、個々の機器の場所は重さ・熱・ノイズ・保守の高さの4つで決めます。熱は盤の上部にたまるため、発熱の大きい機器は上に置き、PLCや通信機器など熱に弱い機器を発熱源の真上に置かないようにします。図2は、この考え方で機器を並べた例です。
表2は、機器ごとの置き場所の判断基準です。保守の高さについては、機械の電気装置の規格 JIS C 60204-1(IEC 60204-1)が、点検や交換が必要な制御機器を作業床から0.4〜2.0mの範囲に取り付けることを推奨しています。
| 機器 | 置く場所 | 理由 |
|---|---|---|
| インバータ・サーボアンプ | 上段、排気の近く | 発熱とノイズが大きい |
| PLC・通信機器 | 中段、発熱源の真上を避ける | 熱とノイズに弱く、保守で触る |
| 変圧器・大型の電源 | 下段 | 重く、盤の重心を下げる |
| 端子台 | 下段、外部配線の出入口の近く | 現場配線を短く、つなぎやすくする |
配線は、何と何を分ければよいのか?
分けるのは、大きな電流が流れる動力線と、DC24Vなどの小さな信号が流れる信号線です。同じダクトに入れると、動力線から出るノイズが信号線に乗り、センサの誤検出や通信のエラーの原因になります。ダクトを別にし、どうしても交差させる場合は直角に交差させて、並んで走る距離を短くします。
特に注意が要るのは、インバータやサーボアンプの出力線です。インバータの選定を扱った過去記事でも、盤内のノイズ対策が成否を分ける条件として挙げています。
成否を分けるのは本体よりも、モータ側の冷却と絶縁、盤内のノイズ対策という周辺条件です。
インバータ(VVVF)の選び方とは?V/f制御とベクトル制御の違い・容量選定・向かない条件を図解で解説【2026年版】
省令の第16条も「電気設備は、他の電気設備その他の物件の機能に電気的又は磁気的な障害を与えないように施設しなければならない」と定めています。ノイズ対策は、動力線と信号線を分けるダクトの配置と、接地の取り方までを配置の段階で決めておくのが近道です。
後から機器が入らなくなるのはどんなときか?——避けるべき4つの条件
制御盤は、装置の立ち上げ後に機器を足す場面が必ずあります。センサの追加、安全機器の追加、通信の変更などです。次の条件に当てはまる設計は、その時点で盤の増設や作り直しが必要になるため避けるべきです。
- 予備スペースを取っていない——取付板の面積とダクトに余裕がなければ、機器1台の追加でも盤の増設になる。目安として面積の2割程度を、最初から予備として図面に描いておく(編集部の目安)。
- 発熱を計算せずに筐体を先に決めた——機器を1台足しただけで温度が許容値を超え、冷却の追加や盤の交換が必要になる。
- ダクトが満杯のまま配線した——電線を足せず、ダクトの外に束ねた配線が増えて、動力線と信号線の分離が崩れる。
- 改造が図面に反映されていない——どこに余裕があるのか誰も分からず、実物を開けて調べるところから始まる。
4つ目は、設計の問題というより運用の問題です。改造のたびに図面を直す手順と担当を、盤の設計と同時に決めておくと、後から機器を足すときの調査の手間が大きく減ります。
まとめ——盤の中は「発熱」から決める
制御盤の中身は、機器リスト→保護→発熱と盤の大きさ→機器配置→配線→予備と図面の順に決めます。盤の大きさは機器の発熱量の合計から逆算し、冷却方式は外気の温度と粉塵の量で選びます。配置は重さ・熱・ノイズ・保守の高さで決め、動力線と信号線はダクトごと分けます。予備スペースを取らない設計や、発熱を計算しないまま筐体を決めた設計は、後から機器が入らなくなる条件として避けてください。
盤設計の判断基準が担当者ごとに違う、改造の履歴が図面に残らないといった詰まりは、設計業務の流れを分解すると所在が見えます。設計業務の進め方を相談する(無料)
よくある質問(FAQ)
盤の大きさは、機器の面積の何倍で決めればよいですか?
面積の倍率で決めるのではなく、発熱量から決めます。機器の発熱量の合計と盤の表面積から温度上昇を見積もり、許容値に収まる大きさを選びます。そのうえで、配線ダクトと予備スペースの面積を確保できるかを確認します。
換気ファンと盤用クーラは、どちらを選べばよいですか?
外気が盤内の許容温度より十分低く、粉塵や油ミストが少なければ換気ファンで足ります。外気が許容温度に近い、または粉塵の多い環境では、外気を盤内に入れない熱交換器や盤用クーラを選びます。
動力線と信号線は、同じダクトに入れてはいけませんか?
ノイズによる誤動作を防ぐため、ダクトを分けるのが基本です。盤が小さくてダクトを分けられない場合は、仕切りのあるダクトを使うか、信号線にシールド線を使って接地します。
出典
- 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成九年通商産業省令第五十二号)第14条・第16条・第59条 e-Gov法令検索(2026年9月28日に法令APIで原文を照合)
- JIS C 60204-1(IEC 60204-1)「機械類の安全性―機械の電気装置―第1部:一般要求事項」
- IEC TR 60890「低圧開閉装置及び制御装置の温度上昇の計算による検証方法」
- JIS C 0920「電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)」










