設備の予備品はどこまで持つべきか?——在庫を持つ・持たないの判断基準と、止まると効く部品の見分け方・持つ数の決め方【2026年版】

設備が止まってから部品を探し、届くまでの数週間ラインが動かない——保全の現場でよく聞く話です。一方で、念のためにと予備品を持ち続けた結果、倉庫に使われない部品が積み上がっている工場も少なくありません。この記事では、予備品を持つか持たないかを「止まったときの損失」と「調達にかかる日数」で決める判断基準と、止まると効く部品の見分け方、持つ場合の数の決め方を整理します。
この記事の要点
- 予備品を持つかどうかは、①止まったときの損失 ②調達にかかる日数 ③代わりの手段があるかの3つで決まります。部品の値段では決まりません。
- 損失が大きく調達に日数がかかる部品は必ず持ち、損失が小さく翌日に届く部品は持たずに都度手配します。
- 安全装置の部品、特注品、生産中止が近い部品は、止まると効く部品として別扱いにします。
- 持つ数の目安は「調達期間中に使う見込みの数+同時故障の余裕」です。
- 型番が実機と合っていない、保管中に劣化する部品を長く置くといった持ち方は、持っていても役に立たない典型です。
この記事はどんな判断に役立つ?
この記事が支援する判断:工場の保全担当や生産技術の担当者が、予備品の棚卸しや保全予算の見直しの場面で「どの部品を在庫として持ち、どの部品は持たないか」「何個持つか」を決める場面を支援します。設備ごとの保全方式(TBM・CBM)の選び方は別記事で扱っており、本記事は予備品の持ち方に絞っています。
予備品を持つかどうかは、何で決まるのか?
結論から言えば、決め手は部品の値段ではなく「止まったときの損失」と「調達にかかる日数」です。数千円の部品でも、届くまでに1か月かかり、その間ラインが止まるなら、在庫を持つ理由になります。反対に高価な部品でも、予備機に切り替えられる設備や翌日に届く部品なら、持つ必要はありません。図1は、この2つの軸で部品を4つに分けたものです。
3つ目の軸は、代わりの手段があるかどうかです。予備機がある、別のラインで代わりに生産できる、応急の部品で一時的に動かせるといった手段があれば、右上に入る部品でも持つ数を減らせます。保全方式の選び方を扱った過去記事でも、予備品の入手期間を方式を決める材料の一つに挙げています。
割り当てを決める材料は4つ。止まったときの波及・予備品の入手期間・劣化が時間に比例するか・法定検査の有無です。
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止まると効く部品は、どう見分けるのか?
図1の右上に入る部品は、実際にはいくつかの型に分かれます。表1は、部品の種類ごとに持つかどうかの判断基準をまとめたものです。棚卸しのときは、設備ごとの部品表をこの区分で分けると、持つべき部品が絞り込めます。
| 部品の種類 | 持つかどうか | 判断の理由 | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 安全装置の部品(非常停止スイッチ、安全リレー、ライトカーテン) | 持つ | 壊れたら直すまで運転できない | 同じ型番か、認証を満たす後継品か |
| 特注品・加工品(治具、専用ギア、専用基板) | 持つ | 調達に数週間〜数か月かかる | 図面と加工先が残っているか |
| 生産中止が近い部品(旧型のPLC、サーボアンプ) | 持つ、または更新を前倒し | 後継品では置き換えられないことがある | メーカーの生産中止の案内 |
| 交換頻度の高い消耗品(ベルト、フィルタ、吸着パッド) | 発注点で持つ | 1個ずつ手配すると手間がかかる | 年間の使用数 |
| 翌日に届く汎用品(ねじ、汎用リレー、ヒューズ) | 持たない(少量なら可) | 都度手配で止まる時間が短い | 手配先の在庫と納期 |
安全装置の部品を、なぜ別扱いにするのか?
安全装置は、壊れたまま設備を動かすことが許されない部品だからです。労働安全衛生規則の第28条は「事業者は、法及びこれに基づく命令により設けた安全装置、覆い、囲い等(以下「安全装置等」という。)が有効な状態で使用されるようそれらの点検及び整備を行なわなければならない」と定めています(出典:労働安全衛生規則)。産業用ロボットについても第151条が、教示等の作業の前の点検で異常を認めたときは「直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない」としています。
つまり、安全装置の部品が壊れたら、部品が届くまでその設備は止まります。値段が安く、ふだんめったに壊れない部品でも、止まったときの損失は設備全体の停止と同じ大きさになります。安全装置の部品は、同じ型番、または安全の認証を満たす後継品を、設備ごとに最低1個は手元に置いておくのが基本です。
予備品は、何個持てばよいのか?
持つ数の目安は、「調達にかかる期間のあいだに使う見込みの数」に「同時に壊れたときの余裕」を足した数です。たとえば、年に4個交換する部品で、発注から届くまで3か月かかるなら、その3か月に使う見込みは 4×3÷12=1個です。ここに余裕として1個を足し、2個を持ちます。同じ部品を使う設備が複数台あるなら、余裕の数を台数に応じて増やします。
在庫が減ったら補充する「発注点」も、同じ考え方で決まります。上の例なら、残りが1個になった時点で発注すれば、届くまでの3か月をしのげます。年間の使用数が分からない部品は、過去の交換記録や修理の伝票から数えるところから始めます。記録が無い部品は、まずは1個を持ち、1年分の交換実績を集めてから数を見直すのが現実的です。
生産中止の部品は、どう扱えばよいのか?
設備は、帳簿上の耐用年数を過ぎても動き続けます。過去記事でも、法定耐用年数と実際に使える年数は別のものだと整理しました。
法定耐用年数を過ぎてもロボットは使えますが、税務上は固定資産としての価値がなくなったものとして扱われます。
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長く使う設備ほど、途中で部品の生産中止に当たります。生産中止の案内が出たら、①後継品でそのまま置き換えられるか ②置き換えにプログラムや配線の変更が要るかを確認します。①ならそのまま後継品を予備品にし、②なら残りの使用年数分を確保するか、設備の更新を前倒しするかを決めます。PLCのメーカー選びでも、保守部品が長く手に入るかは選定の条件になります。
予備品を持っていても役に立たない——避けるべき4つの持ち方
予備品は、持っているだけでは止まった設備を救えません。次の持ち方に当てはまる場合は、いざというときに使えないため避けるべきです。
- 型番が実機と合っていない——据え付け時や修理のときに部品を変えたのに、部品表が直っていない。予備品が届いてから合わないと分かる。
- 保管中に劣化する部品を長く置く——ゴムのシールやベルト、電池、電解コンデンサを使う基板は、使わなくても劣化する。保管期限を決めて入れ替える。
- 置き場所が担当者しか分からない——夜間や休日に止まったとき、予備品があるのに見つからない。
- 数を決めずに持っている——使った分を補充する人が決まっておらず、必要なときに在庫が0になっている。
1つ目は特に見落とされがちです。装置メーカー側の保守部品の問い合わせ対応を扱った過去記事でも、同じ断点を指摘しています。
予備品情報は「引渡」の時点で更新が止まります。据付時の現地調整や調達段階の代替品採用が部品表に戻らないことが最大の断点です。
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まとめ——予備品は「止まったときの損失」と「調達日数」で決める
予備品を持つかどうかは、部品の値段ではなく、止まったときの損失・調達にかかる日数・代わりの手段の3つで決めます。安全装置の部品、特注品、生産中止が近い部品は、止まると効く部品として必ず持つ側に入れます。数は「調達期間中に使う見込み+同時故障の余裕」で決め、型番が実機と合っているか、保管中に劣化しないかを定期的に確かめてください。いつ部品を交換するかの判断が人によって違う場合は、保全の判断が属人化する構造を扱った記事も参考になります。
どの設備のどの部品を持つかの判断が担当者の記憶に頼っている、部品表と実機が合っているか分からないといった詰まりは、保全業務の流れを分解すると所在が見えます。保全業務の進め方を相談する(無料)
よくある質問(FAQ)
予備品の在庫は、何個持てばよいですか?
調達にかかる期間のあいだに使う見込みの数に、同時に壊れたときの余裕を足した数が目安です。年に4個使う部品で調達に3か月かかるなら、期間中の見込みは1個で、余裕を1個足して2個になります。
汎用の消耗品も、予備品として持つべきですか?
翌日に届く汎用品は、止まったときの損失が小さければ持たずに都度手配でかまいません。ただし、交換の頻度が高く1個ずつ手配すると手間がかかる部品は、発注点を決めて少量を持つほうが効率的です。
生産中止になった部品は、どう備えればよいですか?
メーカーの生産中止の案内が出た時点で、後継品で置き換えられるかを確認します。置き換えに設計変更が要る部品は、残りの使用年数分をまとめて確保するか、更新の計画を前倒しするかを判断します。
出典
- 労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第28条・第151条 e-Gov法令検索(2026年9月28日に法令APIで原文を照合)
- JIS Z 8115:2019「ディペンダビリティ(総合信頼性)用語」— 予防保全・事後保全の用語の定義
本文中の図表と在庫数の計算例は、判断の考え方を示すための例です。個々の部品の交換周期・保管期限・後継品の可否は、設備と部品のメーカーの資料で確認してください。










