インダストリアル エンジニアリング(IE)とは?その定義と代表的な手法を紹介
こんにちは!
産業用ロボットの情報を発信している製造DX.comです。[◎△◎]
生産ラインでの生産性を向上させたいのですが、何から取り組めば良いのでしょうか?
それならIE手法がおすすめですね。インダストリアル・エンジニアリングです。
インダストリアルエンジニアリング(Industrial engineering・IE)とは、工程管理技術の一つ。日本語では、「生産工学」などと呼ばれています。
インダストリアルエンジニアリングは新しい技術というわけではなく、古くから製造業の生産性向上を目的として取り入れられている手法です。
そこで、本記事ではインダストリアルエンジニアリングの具体的な手法やメリットなどについて詳しく解説しました。
作業方法や時間の使い方を工夫する上で大きなヒントとなることは間違いありません。ぜひ、生産ラインの生産性向上への取り組みを実施するうえで参考にしてください。
工場自動化・ロボット導入に関してお悩みがあれば、お気軽に製造DX.comまでお問い合わせください!
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もくじ
インダストリアル エンジニアリングとは?
インダストリアルエンジニアリング(以下IEと表記)は、戦後アメリカから導入された手法で、主に「生産性向上」と「原価低減」を実現するためのものです。
具体的には生産ラインの「工程」や「作業」を科学的に細かく分析。その際に工程から作業へ分解、更に一つ一つの動作へと分解していきます。つまり、細かく分解しながら、現状のムダを分析していくという手法です。
実際のIEでは下記の2点を行います。
- 生産管理の最適化
- 技術者の質を向上
IEは工程管理が目的。したがって、まずは生産管理における「ムリ」「ムラ」「ムダ」を発見することが最初のステップ。発見できたら、一つずつ排除することで最適化していきます。
また、IEの手法は感覚的なものではなく、科学的なアプローチです。したがって、取り組む技術者の質も向上します。
つまり、生産性の向上・収益の向上だけでなく多くの優秀な技術者を育て上げることができ、企業全体のレベルアップが可能。結果として、働きやすい職場環境をつくることも大きなメリットです。
実際に、世界のトップ企業であるトヨタでもカイゼン活動としてIEの手法が使われています。
それでは、インダストリアルエンジニアリングの代表的な手法について解説していきましょう。
代表的な3つのIE手法
IEは大きく分類すると、次の3種類の手法となります。
- 方法研究
- 作業測定
- 方法研究と作業測定の組み合わせ
また、それぞれの手法についても更に分類されています。もう少し詳しく解説していきましょう。
方法研究によるIE手法
一つ目のIE手法として紹介するのは方法研究です。
方法研究はその名の通り、様々な方法を研究するというもの。つまり、製造ラインの作業工程において、最も良い方法を追求する手法です。
IEの方法研究には次の3種類の分析方法があります。
- 工程分析:材料から製品が製造されるまでの作業や工程の順序を分析
- 動作研究:1つの作業や一連の作業における作業者の動作内容を分析
- 運搬分析(マテハン):材料や製品の搬送や扱い方を分析
つまり、工程の流れ・作業員の動作・運搬などについて細かく分析し、ムリ・ムダ・ムラを洗い出す分析方法。それぞれの改善点が見付かれば、改善策を考えて対策を実施します。
中でも、マテハンは付加価値を生まない工程なので、運搬工数や手法を改善することで生産性も大きく改善するでしょう。
マテハンの改善方法や活用事例に関しては、別記事にて詳しく解説しています。詳細は下記の記事を御覧ください。
>>マテハン(マテリアルハンドリング)とは?導入するメリットや活用事例などを紹介
作業測定によるIE手法
二つ目のIE手法は作業時間を目で見える形にする作業測定です。具体的には現状の生産状況を下記2つの方法で分析します。
- 時間分析:各動作やステップにかかる時間を測定
- 稼働分析:非稼働時間・実生産時間を測定
時間分析の目的は、工程内の時間がかかる作業を把握することです。どの工程・ステップに時間がかかっているのかを把握することで、改善点も見付けやすくなります。
また、稼働分析によって生産以外に費やす時間(非稼働時間)の原因などを把握することで、生産ラインの生産性向上が可能です。トラブルなどによって発生する非稼働時間をいかに少なくするかが改善の鍵となります。
方法研究と作業測定を組み合わせたIE手法
実は、上記の方法研究と作業測定を組み合わせた応用的な手法もあります。主な手法としては下記の3種類。
- 連合作業分析
- ラインバランス分析
- プラント・レイアウト
生産ラインの中でムダが出やすいのが人と設備、人と人の連携部分です。したがって、連携する作業を分析することで改善点が見付かります。これが連合作業分析です。
また、生産ラインの中でも時間のかかる工程と時間のかからない工程があった場合、時間のかかる工程によって生産効率が決まります。
したがって、生産ラインの各工程においてうまくバランスを取らなければなりません。ラインバランス分析では、そういった各工程の生産能力を分析して改善するという考え方です。
プラントレイアウトは生産ラインのレイアウトを検討する手法。
- 生産設備
- 作業員
- 工具
- 材料保管庫
- 通路
などのレイアウトを検討することによって生産性を向上させるという考え方です。ただし、プランレイアウトは生産性だけではなく、安全性や生産に対する柔軟性などを考慮しなければなりません。
近年では多品種少量生産が主流となっています。生産性の向上という点においてもプランレイアウトにおける柔軟な品種対応は重要です。
ところで、IEはどのように発展してきたのでしょう?
IEの代表的なテーラーとギルプレスの研究
IEは戦後アメリカから持ち込まれた技術ということでしたが、実はかなり古くから考えられていた手法でした。
IEが現代のような手法となったのは、テーラーの科学的管理法からと言われています。さらに「動作研究」に取り組んだのがギルブレスでした。
- フレデリック・W.テーラー (1856~1915年)
- フランク・B.ギルブレス (1868~1924年)
この二人の功績によってIE手法は大きく発展し、現代にも受け継がれているのです。それでは、上記の二人がどのような研究を行ったのか簡単に解説していきましょう。
フレデリック・W.テーラー
フレデリック・W.テーラーは時間管理という点において近代IEの概念を確立した人物です。
テーラーは1874年から機械工見習いとなった後、エンジニアとしての資格を得ています。その後、テーラーはいくつかの会社での工場管理を経て、1898年にベスレヘム・スチール社に勤務。労働者の作業や道具の標準化に取り組みました。
テーラーの行った研究の中でも、特に有名なのが「テーラーのシャベルすくいの実験」です。標準時間の設定や1日に終わらせるべき作業量などを科学的管理法の確立として提唱しました。
テーラーの提唱した科学的管理法は生産現場の近代化とマネジメントの概念を確立したと言えます。
フランク・B.ギルブレス
テーラーと同時期に建設会社に勤務していたのがギルブレスです。テーラーが時間管理を確立したのに対し、ギルブレスは動作研究に取り組みました。
ギルブレスはレンガ積みの作業から
- 専用容器運搬化
- 足場の調整台の考案
- 両手作業化
などの提案を行い、1時間当たりの作業目標の改善に成功しました。
ギルブレスの提唱した「動作研究の確立」は、現在でも「サーブリッグ分析」「動作経済の原則」として活用されています。
テーラーとギルブレスのIEへの貢献によって、現在では多くのメリットが得られるということですね!
IE実施による4つのメリット
IEの実施では生産性の向上という大きなメリットが期待できます。実はそれ以外にも多くのメリットがありました。具体的には下記の4点です。
- 業務全体の数値化による現状把握が可能
- 記号化・図表化することにより客観視が可能
- 誰でも 同じ結果が得られる
- 改善や標準化を体系的に実施できること
IEのメリットを一言で表現するなら、「わかりやすい」ということでしょう。数値化・記号化・図表化によって、生産ラインに潜んでいるムリ・ムダ・ムラを明確にできます。
また、様々な事象を客観的に捉えることで標準化も比較的容易となり、さらに生産性向上が期待できるでしょう。
つまり、事象を定量的に捉えることができ、標準化することで誰でも再現が可能となります。
このように多くのメリットが得られるIEの手法は製造業から始まったIEの手法ですが、現在ではサービス業などでも広く活用されるようになっています。
まとめ
本記事ではインダストリアルエンジニアリング(IE)について詳しく解説しました。もう一度記事を振り返ってみましょう。
IEは「生産工学」などと呼ばれ古くから取り入れられている手法。生産管理における「ムリ」「ムラ」「ムダ」を科学的なアプローチによって発見し、排除するというものです。
IEの手法を確立したのは、フレデリック・W.テーラーの「科学的管理法」と フランク・B.ギルブレス の「動作研究」による功績が大きいと言えます。二人の研究により、生産現場の近代化とマネジメントの概念が確立しました。
そして、現在のIEには次の3つの手法があります。
- 方法研究
- 作業測定
- 方法研究と作業測定の組み合わせ
これらのIE手法を取り入れることで、生産性の向上以外にも下記のようなメリットが得られます。
- 業務全体の数値化による現状把握が可能
- 記号化・図表化することにより客観視が可能
- 誰でも 同じ結果が得られる
- 改善や標準化を体系的に実施できること
IE手法を利用して生産ラインのムリ・ムダ・ムラを省き、生産性向上に努めましょう。
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