PLM(製品情報管理)とは?PDMとの違いや導入メリットも分かりやすく解説
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製品を製造する際にデータを管理する方法としてPLMというのがあるそうなのですが、どのようなものですか?
PLMですね。「企画から廃棄・リサイクルまで」のデータを管理するようなイメージです。
製品を製造する際には莫大な量のデータを扱います。しかし、データを取得しても効率的に管理しなければ全く意味がありません。そこで注目されているのがPLMです。
本記事ではPLMとは何か、またPDMとは何が異なるのかについて詳しく解説しました。
PLMを導入することで多くのメリットが得られます。データの一元管理やデータのリアルタイム共有でお悩みの方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
もくじ
PLMとPDMとの違いは?
まずはPLMとPDMの違いについて簡単に解説しましょう。
PDMとPLMとの違いは、簡潔に言うと特化する工程の違いです。PLMとPDMはそれぞれ下記の頭文字を取ったものです。
- PLM:Product Lifecycle Management
- PDM:Product Data Management
共通するのは、どちらも「製品を管理する」という点になります。異なる点は「Lifecycle」を管理するのか「Data」を管理するのかという点。つまり、製品のライフサイクル全体を管理するのか、製品データを管理するのかということです。
PDMは設計における製品データを一元管理します。特に設計時のCADデータやBOM(部品表:Bill Of Materials)などの管理に特化するもので、製品設計で大きな問題となるのが下記3点です。
- 情報量が膨大
- 必要なデータが分からない
- 最新データか分からない
これらの問題を解決するために1980年代から開発されてきたのがPDMでした。大手CADベンダーが自社設計システムとして開発を行い、現在ではBOMの管理やデータ分析まで実施できるものとなっています。
それではPLMについても詳しく解説していきましょう。
PLMとは?誕生した背景とその役割り
PLMを日本語に直訳すると、製品のライフサイクル全体を一元管理するという意味になります。ライフサイクルを分類すると主に下記の9種類です。
- 製品企画
- 設計・開発
- 資材調達
- 生産準備
- 生産
- 市場投入
- 販売
- 保守(メンテナンス)
- 廃棄・リサイクル
つまり、製品が企画されるところから、廃棄・リサイクルされるところまでを一元管理するのがPLM。それでは、PLMにはどのような歴史的背景があるのでしょうか。
PLMが誕生した背景
実は、PLMはPDMから出発し、時を経て範囲の拡がりとともにPLMに変化してきました。PDMは前述したとおり、製品設計時のCADデータやBOMの管理を行うものです。
製品設計はコンピュータの発達により、手描きの図面から2次元の図面を電子化するCAD(Computer Aided Design)に変化しました。電子化は便利で設計時間の短縮ができる反面、設計情報に関してはデータが膨大となるデメリットもあります。
さらに2次元CADが3次元化されるようになり、データ量も増加しました。また、データ量が増えることで、データ管理が必要となります。また、組立図面は部品単品図面の集合体です。設計データをそのまま加工データや部品表データとして利用されるようになりました。
このようにして始まったのがPDMです。
しかし、PDMだけでは利益を最大化させるのに不十分でした。利益を最大化するには、QCD(Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期))が重要となります。QCDを高めるには、CADやBOMデータだけでは不十分。
そこで、下記のようなデータも同時に管理するようになりました。
- ポートフォリオ
- 要件管理
- 取引先情報管理
- 製品データ
- サービス部品の管理
このようにして、自動車産業や電機産業で導入されたのがPLMです。それでは、PLMを導入することで、どのようなことができるでしょうか。具体的な内容について見ていきましょう。
PLMの導入で可能なこと
前述したように、PLMを導入することで様々なデータの管理が可能です。しかし、各部門・各工程によって管理すべきデータは大きく異なります。
PLMの基本はそれぞれの部門や工程でのデータ管理です。しかし、それぞれの部門でのデータだけを扱うことは稀で、実際は複数の機能を合わせて運用することになります。
つまり、各部門・各工程で管理されているデータはネットワークを通じて一元管理されることが多いでしょう。一元管理することによって、リアルタイムで情報を得ることができるだけでなく、トラブルにも迅速な対応ができるようになります。
ところで、PLMに必要な機能はどのようなものがありますか?
PLMを導入・実行していく際に必要な機能は?
PLMシステムでデータ管理を行うには、下記4つの管理機能が必要です。
- 変更(世代)管理
- 権限管理
- 構成管理
- 追跡性/関連の管理
これら4つの管理機能はPLCシステムにおける中枢的な役割を果たしています。ここでは、上記4つの管理機能について詳しく解説し、さらに具体的な各工程における必要な機能についても紹介しましょう。
変更(世代)管理機能
製品の設計では、仕様変更しなければならない場合があります。したがって、仕様変更する度に変更内容や変更履歴を管理しなければなりません。そこで重要となるのが変更(世代)管理機能です。
変更(世代)管理機能によって、世代ごとの変更内容(履歴)を適切に管理できます。
権限管理機能
PLMシステムにおいて、様々なデータを管理するには編集権限や閲覧権限が必要です。しかし、同時に権限を管理する必要もあります。ユーザーの権限を管理するのが権限管理機能です。
構成管理機能
近年の製造方法は多品種少量生産が多く、商品バリエーションも豊富になっています。また、商品の入れ替わりも激しく、短期間での仕様変更や改良をしなければなりません。したがって、各々の仕様の違いなどを比較する構成管理機能が必要です。
追跡性/関連の管理機能
製品情報間には何らかの関連性があります。また、各々に因果関係があることも。追跡性/関連の管理機能は情報の関連性や因果関係を管理する機能です。
それでは続いて、各工程において必要な機能を具体的に紹介しましょう。
PLMの各工程における必要な機能
PLMを実行していくにあたって、各工程で必要な機能は下記のものです。
- 企画工程
製品ポートフォリオ管理・予算編成・要件管理 - 設計工程
CAM・CADなどのデータ管理・部品表(E-BOM・M-BOM)管理
シミュレーション管理設計・設計変更管理・開発スケジュール管理 - 資材調達工程
取引先情報管理・購買品管理・提案・見積管理 - 製造工程
部品表の管理・製造工程表の管理
時間管理・製造データの管理・製造条件管理
品質管理・原価管理 - メンテナンス
部品管理・保守・修理の管理
技術文書の作成・管理
上記を見ればよくわかりますが、各工程によって必要な機能は異なります。また、同じ工程だった場合でも、業務内容によっても異なるため、PLMの導入は容易ではありません。多くの企業では、必要に応じてカスタマイズを施した形で実用化しています。
ところで、PLMを導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょう?
PLMを導入するメリットは?
前述したとおり、PLMはQCDを高めるために考えられたものです。したがって、PLMを導入することで、QCDを高められるという大きなメリットがあります。具体的には、下記3つのメリットです。
- 業務効率の改善
- 品質の向上
- コスト削減
それぞれについてもう少し詳しく解説しましょう。
業務効率の改善
PLMを導入することで、業務効率は大幅に改善されます。
たとえば原材料を購入するタイミングがわからないという場合を考えてみましょう。製品の製造工程において、PLMを導入していればリアルタイムで情報を得られます。PLMから得られた情報によって、材料購入のタイミングや最適な量の把握が可能です。
また、他にも製造工程の見直しが必要な場合でもPLMからの情報による工程管理も可能となります。近年は図面データだけでも膨大な量のデータです。大量のデータを管理することで、業務効率も大きく改善されるでしょう。
品質の向上
PLMの導入によってQCDが高められます。特に近年は以前よりも「Q(Quality・品質)」の向上が求められるようになってきました。PLMを導入することで、製品情報の一元管理ができます。
たとえば製造時の不具合が見つかった場合を考えてみましょう。PLMによって、すぐに設計にフィードバックが可能です。
結果として、業務効率を改善しつつ品質も向上。顧客のニーズに品質という形で応えることができ、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
コスト削減
コスト削減の第一歩はどれだけコストが掛かっているのかを把握するところから始まります。その点、PLMを導入することで、
- 人件費
- 材料代
- 必要工数(時間)
などの正確な把握が可能です。さらに社内で情報を共有できるのも大きなメリット。コスト削減や工程や作業内容の改善も容易となるでしょう。
PLMを導入したいけど、ちょっとハードルが高そうです。
それなら、PLMの導入時に注意しなければならない点を考えてみましょう。
PLMを導入する際の注意点
PLMの導入に踏み切れないという話を耳にすることがあります。確かにPLMは導入障壁が高い部分があるかもしれません。しかし、導入時の注意点を意識して取り組むことで、PLM導入も成功するでしょう。
PLMの導入する上での主なポイントは下記の通りです。
- 経営層の全面的な協力を得る
- IT管理者と現場の認識にズレがない
- システム導入後の運用計画を事前に把握
- スモールスタート
- 他の業務システムと連携
最も重要なのが社内が一体となってPLM導入に取り組むという点です。そのためには経営層が理解を示さなければなりません。PLM導入で失敗するケースとして多いのが、経営層が懐疑的である場合です。PLMの効果を経営層に把握してもらうことから始めましょう。
PLMを導入して、いざ使用してみようという段階で現場の思いと異なる場合にも要注意です。現場の認識や要望がIT管理者に上手く伝わっていなければ良いシステムはできません。認識のズレが無いようにしましょう。
また、PLMの導入後にどのように運用していくのかという点も重要です。導入から運用に至るまでの計画を立て、事前に把握しておかなければなりません。前述したとおり、社内が一体となって同じ方向へと進むためには事前の計画はとても重要です。
しかし、上記の点に注意していても、最初から大きなシステムに導入すると失敗するかもしれません。失敗の際にもリカバリーに苦労する可能性もあります。
したがって、小さなシステムでのスモールスタートがおすすめです。スモールスタートでPLM導入が上手くいきそうなら、少しずつ他のシステムとも連携していくのが良いでしょう。
何となくPLM導入がイメージできました!
PLMについてのまとめ
本記事では主にPLMについて取り上げました。もう一度記事を振り返ってみましょう。
PLMはProduct Lifecycle Managementの頭文字を取った略語でした。PLMに似た言葉で、PDM(Product Data Management)というものもあります。どちらも製品に関するデータを一元管理するというものです。PLMとPCMが大きく異なるのは、受け持つパートの違いになります。
PLMは製品のライフサイクル全体を一元管理するのに対し、PDMで扱うものは設計における製品データのみです。したがって、PLMの方が管理する範囲が広く、全体の把握に役立ちます。
製品のQCD(品質・コスト・納期)を高めるなら、PLMを導入しましょう。
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