工場の設備基準には満たさなければいけない基準が多すぎる・・・
こんにちは!
産業用ロボットの情報を発信している製造DX.comです。[◎△◎]
お客さんから、工場設備の発注を頂いたのですが、設備基準が多くて大変です。読んでいるだけで眠くなりそうで……
工場の設備基準は確かに量が多いですね。私が若い頃に比べると、かなり増えた印象です。納入先が海外の工場だったりすると、さらに大変ですよ。
工場に何らかの設備を導入する際に必要となるのが設備基準です。しかし、単純に設備基準といっても、ISOや安全基準、その工場や業界特有の設計基準など、様々な基準や規格があります。
そこで本記事では、工場の設備で満たさなければならない設備基準や規格についてわかりやすく解説しました。
それぞれの基準や規格を解説していると膨大な量になるので、詳細を解説することは不可能です。したがって、なぜその基準や規格が必要なのか、基本的な考え方を抑えておきましょう。
もくじ
満たさなければいけない規格や基準
工場の設備ではいくつもの満たさなければいけない規格や基準があります。主なものは次の6種類です。
- ISO規格
- IEC規格とIEEE規格
- JIS規格
- 安全規格
- 輸出する際に必要な規格(CEマーキング・CSA規格など)
- 工場独自の設計基準・納入基準
それぞれの留意点などについて解説していきましょう。
ISO規格の留意点
ISO(アイエスオー)とは、「International Organization for Standardization」の略。つまり、国際標準化機構のことです。近年は国際化が進み、日本国内の企業でも国際化されたJIS規格に従ってものづくりをしなければならなくなってきました。
ところで、どうしてISO規格ができたのでしょうか。
ISOの背景
ISOは、国際的な標準を制定するための組織として1947年に設立されました。その主な目的は、製品やサービスの品質、安全性、効率性を向上させるための国際的な合意に基づく標準を提供することです。国際的な標準は、技術的な仕様や要件、方法や過程などの様々な分野をカバーしています。
ISOの規格制定の背景には、以下のような要因があります
1. 国際的な取引の促進: 異なる国々の間での商品やサービスの取引を容易にするため、共通の標準が必要です。
2. 製品の品質と安全性: 消費者の信頼を得るために、製品の品質や安全性に関する共通の基準が求められます。
3. イノベーションと技術的な進歩の支援: 新しい技術や製品が市場に導入される際、それをサポートする標準が必要となることがあります。
WTOとTBT協定の関連性
WTOは、国際的な貿易に関するルールや手続きを定める多国間の組織で、TBT協定はその一部として存在します。TBT協定の主な目的は、技術的な規制や基準、試験・認証の手続きが、不必要に国際的な貿易を制限する障壁とならないようにすることです。
TBT協定とISOの関連性は以下のようになります
1. TBT協定は、加盟国に対して、国際的な標準を考慮するよう奨励します。そのため、ISOなどの国際標準化組織が制定した標準は、WTO加盟国にとって非常に重要です。
2. この協定は、技術的な障壁が正当なもの(例:人の生命や健康の保護)である場合を除き、取引の障壁となるような措置を取らないように国々に促します。ISOの標準がこの枠組みに合致していれば、それは加盟国に受け入れられやすくなります。
要するに、ISOの標準は、国際的な貿易の障壁を低減し、WTOのTBT協定の目的をサポートする重要な役割を果たしています。
そうして、できたのがISO規格。したがって、ISOの下に各国の基準があるイメージです。
各国の基準は、例えばJIS(日本工業規格)、EN(ヨーロッパ規格)などがあります。それぞれ異なる地域や範囲での技術的な規格や基準を示すものです。これらの規格とTBT協定との関連性は以下の通りです
- 地域的・国別の認知: JISやENなどの地域的または国別の規格も、TBT協定の下で認められる場合があります。特に、その規格が公平かつ透明で、かつ国際貿易の不必要な障壁を生じさせない場合には、TBT協定の枠組み内での認知が可能です。
- 相互認識: さらに、TBT協定の下では、異なる国や地域間での規格や試験手続きの相互認識を推進することが奨励されています。これにより、一国で認証された製品が他国でも認証されることを容易にし、貿易の流れをスムーズにすることを目指しています。
- 透明性: TBT協定は、新しい規格や規制が導入される際の透明性を求めています。これにより、関連する企業や他の利害関係者が新しい規格や規制に適応するための準備をすることができます。
要するに、TBT協定は、地域的、国別の標準(例:JIS、EN)が、公平かつ透明な方法で策定・採用され、国際貿易の不必要な障壁を生じさせないようにすることも目的としています。これにより、商品やサービスが異なる市場にスムーズにアクセスできるようになります。日本の場合は、JISに従って作ることが重要です。
ただし、電気・電子分野に特化した部分はISOで取り決めていません。電気・電子分野についてはIEC規格が該当します。
JIS規格の留意点
JISは「Japanese Industrial Standards」の略で、日本産業規格を現します。以前は日本工業規格でしたが、2019年に日本産業規格に変更されました。
JIS規格はIECやIEEEのように電気・電子分野に限らず、工業製品全てを網羅している規格でした。しかし、現在は工業製品だけでなく、データやサービス等を含めた産業全体の規格となっています。したがって、日本国内の産業はJIS規格に準じていることが基本となります。
JIS規格は基本的に国際規格とイコールであり、国際基準に準ずるものと認識すれば良いでしょう。
JISそのものは法令ではありませんが、安全衛生法ではリスクアセスメントが要求されているため、基本的にはJISのリスクアセスメントに従うことになります。また、種別によってはJIS規格に準ずると書かれた法律があるので、その場合もJIS規格に従わなければなりません。
工場設備における安全規格の留意点
近年は安全規格について厳しくなってきた印象です。厚生労働省の資料によると、機械災害の発生数は年々減っていますが、ゼロにはなりません。災害をゼロにするため、災害が発生する度に安全規格の項目が増えるような印象を受けます。
安全については、下記の記事も参考にしてください。
このように安全基準は非常に厳しいものです。また、前述のISOの中にもISO12100として基本安全規格が決められています。
工場設備の基準としても、危険性のある機械を導入することはできません。したがって、安全規格は全ての産業において重要視されています。
工場設備を輸出する際に必要な規格の留意点
工場設備を製造する際には輸出に必要な規格を意識しなければならない場合もあります。機械を輸出するには、CEマーキングやUL規格、CSA規格などの輸出対象の国や地域の規格に準じなければなりません。
また、安全保障上の問題から、設備に使用されている機器の「被害等証明書」が必要となります。
日本国内の工場設備と考えた場合、輸出とは無関係な場合もあるでしょう。しかし、日本国内の設備を海外の工場に移設する可能性も考えられるので、一概に無関係とは言い切れません。
工場設備を輸出する際、JIS(日本工業規格)に準拠している設備は、多くの場合、国際的な標準にも合致しています。そのため、海外の市場や規格要求に対応するための証明書の取得もスムーズに進めることが可能です。
工場独自の設計基準・納入基準の留意点
上記の国際基準や安全規格に準じていれば、工場設備の基準としては概ね問題ないでしょう。しかし、多くの工場では独自の設計基準や納入基準などを設けています。
工場独自の設備基準では、使用箇所や用途によって塗装色や表面処理方法を指定している場合があります。また、使用する材料や最終的な設備の大きさ、制御盤の大きさなどについても工場によって基準があるかもしれません。
たとえば、制御盤の板厚や外側の塗装色、内側の塗装色などです。
電線に関しても多くの工場では三相交流に使用する配線色を赤・白・黒としていますが、中には茶・白・青と指定する工場もあります。設備の電源電圧に関しても、AC400V・AC200V・A100Vなど様々。
また、同じ工場であっても導入する場所によって異なる可能性もあります。極端に言えば、食品関係の製品を製造している工場と、工業用の製品を製造している工場では作業環境が異なるために基準が全く違うものになるかもしれません。
したがって、工場ごとに設備基準を熟知する必要があるでしょう。
同じ工場内に導入する設備でも基準や規格が異なることがあるとはびっくりです。
様々な状況を網羅しなければならないので、どうしても規格や基準が増えてしまいます。
工場設備の規格や基準が多すぎる問題
例として挙げられるのが国土交通省の設備基準ではないでしょうか。多くの項目が記載されているので、読むだけでも大変な状況です。
また、国土交通省の設備基準とJIS(日本工業規格)は、矛盾を感じることもあります。
それぞれ異なる目的と範囲で策定される規格や基準であり、必ずしも常に一致するわけではありません。
- 目的の違い:
- JIS: JISは、製品やサービスの品質、効率、互換性を確保し、消費者の信頼を獲得するための技術的な基準を提供することを目的としています。
- 国土交通省の設備基準: 国土交通省の基準は、主に公共の安全や健康を確保する目的で設定されるものです。これには、建築物や交通インフラなど、広範な分野が含まれます。
- 矛盾の可能性:
- 一般的に、公的な規制や基準は最低限の要件を定めるものであり、JISのような技術的な規格はより詳細かつ具体的な基準を提供することが多いです。しかし、時には公的な基準とJISの間で微妙な違いや矛盾が生じることがあります。
- これは、規格や基準が更新されるタイミングや背景、参考とした情報などが異なるために起こることがあります。
多くの基準や規格がある中で矛盾が生じていると開発する人はとても困ります。どうしてこのように多くの基準や規格があるのでしょうか。
工場設備の規格や基準はなぜ多いのか?
国土交通省の設備基準や国際基準などは、かなり詳しく書かれているうえに導入予定の工場設備には無関係なことも多く記載されています。つまり、あらゆる設備について必要な規格や基準が網羅されているものです。
また、基準や規格は業界や国、地域によって異なることもあります。それらを統一するためのISO規格ですが、まだまだ浸透していない部分もあり、問題は山積です。
設備基準が多過ぎることによる弊害
一般的な設備基準の中には工場設備を製造する際に不要な規格や基準もあります。また、異なる規格・基準であっても同様の内容が記載されている部分もあるので注意が必要です。
設備基準が多いことで、今までバラバラだったものが標準化されることは良いことでしょう。しかし、実際は設備基準が多過ぎることによる弊害もあります。
基本的には同じ機能なのに、以前の規格では問題なく使用できていたものが使えなくなった経験はないでしょうか。実際、規格が多過ぎることで、製品規格が細分化され融通が利かなくなることもあります。
また、安全基準についても同様です。安全に関する認識は年々厳しくなり、安全に関する製品も増えてきました。工場の設備基準では、最新の安全機器を導入する必要があります。したがって、工場独特に基準などには最新の情報を追加しなければなりません。
したがって、古い設備を使用し続けるには、オーバーホールなどによって新しい基準を満たすように機能追加が必要な場合もあります。
規格や基準が多過ぎることは、多くの弊害があることも覚えておきましょう。
工場設備の規格や基準にはじっくり取り組む必要がありそうですね。
まとめ
本記事では工場設備の規格や基準についてわかりやすく解説しました。工場設備を導入する際には、発注側と受注側の両方が規格や基準を熟知しておかなければなりません。
工場設備の製作には国際規格やJISなどに準拠したものを求められます。特に大きな企業の工場設備では規格や基準も厳しくなる傾向です。
また、社内で独自の基準を作る際には、JISや国土交通省の設備基準や各自治体の設備基準などを参考に、必要な部分だけ採用することをおすすめします。
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