いまさら聞けない製造業のバリューチェーンとは?付加価値を高める手法
こんにちは!
産業用ロボットの情報を発信している製造DX.comです。[◎△◎]
100円の商品を1万円で売れるような付加価値の付け方を教えてください。
バリューチェーンで他の犬が真似できないようなサービスを付ければ1万円くらいの価値になるかもしれませんよ!
商品やサービスで重要なのは付加価値です。市場の商品は付加価値によって購買意欲につながります。では、どのようにすれば付加価値が付くのでしょうか。
製造業が商品販売によって利益を追求するうえで、製造から販売後のサービスにおいて様々な付加価値を付けなければなりません。その時に有効となるのが、「価値の連鎖」として捉える「バリューチェーン」という考え方です。
そこで今回は、製造業におけるバリューチェーンとはどのようなものかということについて詳しく解説しましょう。本記事では、主に下記の3点について取り上げました。
- バリューチェーンとは何か
- バリューチェーンのメリット
- 製造業におけるバリューチェーンの具体的事例
もしかするとあなたは、バリューチェーンという言葉は聞いたことがあっても具体的なイメージが持てなかったかもしれません。しかし、この記事を読むことでバリューチェーンを理解できるでしょう。
いまさら聞けないと言わず、記事を読んでみてください。きっと、明日からは製造業における付加価値をより大きなものにできるのではないでしょうか。
もくじ
製造業のバリューチェーン!5つの主活動と4つの支援活動
バリューチェーンとは、1985年にマイケル・ポーター氏が著書「競争優位の戦略」の中で用いた概念です。バリューチェーンを要約すると以下のように言い表せます。
バリューチェーンとは
企業が消費者に販売し、支払いを受け取る商品やサービスの価値を増大する企業内の機能。
製造業の各工程から商品の販売、販売後のサービスにおいて価値を高めていくというものです。つまり、製造工程における各事業のプロセスにおいて、
- どの事業部門でどれくらいのコストがかかっているか
- どの事業部門でどれくらいの付加価値が出ているか
を分析し、事業全体での価値を高めると考えればわかりやすいでしょう。
付加価値とは、他社にはない独自の価値が製品やサービスそのものにプラスされたもの。付加価値を高めるには各プロセス毎に付加価値を付ける必要があります。
では、具体的にはどのように付加価値を高めていくのでしょうか。
バリューチェーンの概念では「主活動」と「支援活動」という2種類の活動に分けて分析しています。
バリューチェーン!製造業における5つの主活動とは?
製造業におけるビジネスの流れは、概ね下記のようになります。
- 購買物流
- 製造
- 出荷物流
- 販売・マーケティング
- サービス
これが基本となる5つの主活動と言われるものです。製造業においては、主に1~3までを担うことになります。場合によっては5つ全ての活動を行うこともあるかもしれません。
製造業のバリューチェーンでは上記5つの主活動において付加価値を付ける必要があります。それでは、それぞれの活動について解説していきましょう。
1.購買物流
製造業における購買物流とは、製品製造のための原材料や部品の仕入れです。また、材料などを保管する倉庫業などについても含まれています。
製造業のバリューチェーンとしては、原材料や部品の見積りやサプライヤーとの調整によってコストを抑える必要があるでしょう。そのうえで、より高い付加価値を実現しなければなりません。
2.製造
製造業において、最も重点を置かなければならないのが製造活動です。バリューチェーンにおける製造活動は主に下記のようなプロセスがあります。
- 製品の製造
- 装置・設備のメンテナンス
- 検品・検査
昨今の製造業ではIoT機器が増え、デジタル化することでより付加価値を増大している企業が増えました。ロボットを導入して自動化することでスマートファクトリー化を実現するなど、付加価値を高める方法は多岐に渡ります。
また、直接的に製品を製造するのではなく、製造工程に必要な間接部門においても同様に付加価値を付けることが可能です。
各プロセスにおいて、どのようなコストがかかり、どれだけの利益が得られるかを正しく把握しましょう。その概念が製造業における付加価値の基本となります。
3.出荷活動
出荷活動は製品の工場から倉庫や店舗への物流を指します。
完成した製品を出荷する出荷活動においてもコストを考慮し、付加価値を付けることで利益を増大させることが可能です。
製造業におけるバリューチェーンは5つの主活動を指しますが、その中でものメインは製造から出荷までと言えるでしょう。
ただし、出荷活動以降の活動においても製造部門でどれだけ付加価値を付けられるかが利益に大きく影響することを忘れてはなりません。
4.販売・マーケティング
バリューチェーンにおける販売・マーケティング活動としては、主に次の2つのプロセスがあります。
- 製品のマーケティング
- 製品の販売
販売・マーケティング活動は製品の企画段階で市場規模の把握や販売予測などが可能です。したがって、それらのデータを元にどのような工夫をして販売につなげるかということが活動内容となります。
5.サービス
バリューチェーンにおける最後の主活動はサービスです。製造業でのサービスは下記のようなアフターサービスを指します。
- クレーム対応
- 販売後の導入支援
- 保守・運用サービス
顧客の声を直接聞くのがサービス活動。顧客からのクレームや問い合わせは今後のサービス向上にもつながる重要な活動です。
以上が製造業のバリューチェーンにおける5つ主活動でした。それでは引き続き、支援活動について解説します。
バリューチェーン!製造業における4つの支援活動とは?
上記の5つの主活動とは別に、消費活動に直接的な関わりを持たない活動が必要です。これらの活動を支援活動または副次的活動と言います。
支援活動は、主活動を効果的・効率的に行うための活動となります。製造業のバリューチェーンにおける支援活動は下記の4つです。
- 全般管理(インストラクチャー)
- 人事管理
- 技術開発
- 調達活動
それぞれについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
全般管理
全般管理は下記のような事業全体に関わる活動です。
- 経営企画
- 財務
- 経理
人事管理
人事管理は主に人事に関する活動となります。主な活動としては下記の5つです。
- 労務
- 組織に関わる総務
- 採用・育成
- 給与・賞与などの報酬制度
- 福利厚生の整備
技術開発
技術開発は以下のような製造に掛かる前の支援活動となります。
- 商品サービスの設計
- 商品開発
調達活動
調達活動は主に下記の2つの活動を指します。
- 物やサービスの購入
- 外部との交渉
以上が製造業のバリューチェーンにおける4つの支援活動です。
ところで、バリューチェーンとサプライチェーンってこんがらがっちゃうのですが、どう違うのでしょう?
製造業におけるバリューチェーンとサプライチェーンとの違い
バリューチェーンとサプライチェーンはチェーンのようにつながっているという構造はよく似ているでしょう。しかし、構造は似ていてもそれぞれの目的が異なります。具体的な相違点は下記の通り。
- サプライチェーン:誰が何をどのように担うべきか
- バリューチェーン:どこにコストをかけ、どこで価値を生み出すべきか
製造業において、サプライチェーンとバリューチェーンは全く無関係ではありません。相互の分析と活動を補うことで、より高い価値を生み出すことにつながります。
ところで、バリューチェーンにはどのようなメリットがあるのでしょう?
製造業がバリューチェーン分析を行うメリット
製造業におけるバリューチェーン分析を行うことで、以下のようなメリットが得られます。
- コストのかかっているところが分かる
- 利益を高めるための着眼点が得られる
- 競争力を高めるための着眼点が得られる
- 他社のバリューチェーンとの比較で自社の強み・弱みが把握できる
バリューチェーン分析を行うことで、主活動・支援活動毎にかかっているコストや利益が明らかになります。また、付加価値という観点から見ても把握しやすくなるので、さらに付加価値の追求が可能です。
製造業の規模が大きくなると、部署や工数が増えるだけでなく工程や物の流れが複雑になります。つまり、規模が大きな企業ほど全体を把握することは難しく、改善活動も捗らないでしょう。
そんな時に有効となるのが、バリューチェーンです。付加価値創出という観点からも、是非バリューチェーンという概念を活用しましょう。
それでは、バリューチェーンを活用した具体的な事例を紹介しましょう。
製造業におけるバリューチェーンの事例
バリューチェーンという視点で業務改善に取り組んでいる製造業の事例を紹介します。取り上げるのは、次の2社です。
- トヨタ自動車
- 日立製作所
どちらも誰もが知っている大企業ですが、手法を参考にすれば中小企業の経営にも活用できる内容です。それでは、具体的な例を見ていきましょう。
トヨタ自動車は既存のバリューチェーンを更に強固に!
日本の製造業を牽引するトヨタ自動車は、2016年に「コネクティッド戦略」を発表。トヨタは「カーカンパニー」から「モビリティカンパニー」へと変革しつつあります。
つまり、車の価値だけでなく、「移動」そのものに価値を見出すという新たな考え方です。そこで重要となってくるのがバリューチェーン。
トヨタは下記の3点によって、顧客との信頼関係を確立することで既存のバリューチェーンを維持・拡大しようとしています。
- 攻め
車の新たな価値・新たなモビリティ事業を創出 - 守り
顧客との長期的な信頼関係を確立
既存のバリューチェーンを 維持・拡大 - 改善
品質・リードタイム・生産性を飛躍的に改善
また、ICT(情報通信技術)を活用したMaaS(マース:Mobility as a service)によって様々なサービス展開を加速するのが目的です。
特に、近年需要が高まっている下記のサービスに着目し、さらなるサービス展開を予定しています。
- カーシェアリング
- ライドシェア
- サブスクリプションサービス
現在、自動車業界では脱炭素という大きな課題があります。その中でトヨタが今後どのようなバリューチェーンへの取り組みを行っていくのかという点についても注目していきたいところです。
バリューチェーン全体の最適化に取り組む日立製作所
日立製作所ではLumdaというIoTプラットフォームを提供しています。Lumdaではビッグデータ分析やAI、ロボティクスなどを活用し、バリューチェーン全体の最適化を可能にしました。
ビッグデータに関しては下記の記事を参考にしてください。
>>ビッグデータを活用した工場自動化とは?
日立製作所のLumdaをうまく活用することで、バリューチェーン全体の情報を見える化することができます。見える化ができることで、バリューチェーンの主活動全ての最適化が可能。その結果、経営効率化や競争力向上が期待できます。
バリューチェーン分析を行うと、自社を客観視できる、有利な競争戦略を策定できる、といったメリットがあります。
製造業はバリューチェーンで利潤追求を!
本記事では製造業のバリューチェーンについて詳しく解説しました。バリューチェーンは製造業の各工程から商品の販売、販売後のサービスにおいて価値を高めていくというものです。
バリューチェーンの概念では、どの事業部門でどれくらいのコストがかかり、どれくらいの利益が出ているのかということを分析することができます。バリューチェーンの分析方法は5つの主活動と4つの支援活動に別けて考えなければなりません。
主活動は下記の5つの工程です。
- 購買物流
- 製造
- 出荷物流
- 販売・マーケティング
- サービス
支援活動は主活動を効果的・効率的に行うための活動で、次の4つになります。
- 全般管理(インストラクチャー)
- 人事管理
- 技術開発
- 調達活動
バリューチェーンでは上記の主活動と支援活動を分析することによって得られる主なメリットは下記の4点です。
- コストのかかっているところが分かる
- 利益を高めるための着眼点が得られる
- 競争力を高めるための着眼点が得られる
- 他社のバリューチェーンとの比較で自社の強み・弱みが把握できる
製造業では製品やサービスに付加価値を付けることで、利益を得ることができます。より多くの利益を得られるように、バリューチェーンを活用しましょう。
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