セル生産方式とは?ライン生産方式との違いやそれぞれのメリットとデメリットも紹介

セル生産方式とは?ライン生産方式との違いやそれぞれのメリットとデメリットも紹介
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こんにちは!
産業用ロボットの情報を発信している製造DX.comです。[◎△◎]

工場の生産ラインって、少しずつ変わって来てますよね?

大きく分類すると、セル生産方式からライン生産方式に変わりました。今後はダイナミックセル生産方式になっていくかもしれませんね。

世の中の流れと共に、工場での生産方式も変化しています。それは、時代に合った方法で生産しなければならないからです。

高度経済成長期を経てバブル期には、とにかく大量生産するという生産方式でした。しかし、現在では多品種少量生産が当たり前という時代。

生産方式もセル生産方式からライン生産方式へと変化しました。

そこで、本記事ではセル生産方式とライン生産方式の違いやダイナミックセル生産方式について詳しく解説します。

今後は世の中全体がダイナミックセル生産方式へと変化していくでしょう。まずは基礎的な部分をしっかり抑え、今後の生産に取り入れてみてください。

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セル生産方式とは

まず、「セル」とは何なのか考えてみましょう。セルとは英語の「cell」のことです。表計算ソフト(Excelやスプレッドシートなど)の一つの区切りのことも同じくセルと言います。英単語の意味は「細胞」や「小部屋」。つまり、狭い範囲の区切られた空間というイメージです。

では、「セル生産方式」とはどのような生産方法なのでしょうか。

現在の生産ラインのイメージはコンベヤが製品を運び、流れ作業的に製品が組み上がっていくという感じではないでしょうか。しかし、セル生産方式では基本的にコンベヤを使用しません。

つまり、セル生産方式は、コンベヤを取り除き区切られた空間でワークを手送りして製品を作るラインのことです。具体的には次のような方式があります。

  • U字型ライン生産方式
  • 分割ラインセル生産方式
  • 一人屋台方式
  • 巡回方式
  • 二の字ライン
  • フラワーライン
  • アコーディオンライン
  • ひまわりライン

上記の中から、代表的なセル生産方式についてもう少し詳しく見ていきましょう。

セル生産方式の第一歩!U字型ライン生産方式

日本において、最初に考えられたセル生産方式がU字型ライン生産方式です。1980年代、トヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)やJIT(Just In Time)では下記のような方法での生産を開始しました。

  • 複数の大型工作機をU字型に並べる
  • 多能工が工作機を渡り歩いて作業する

これがU字型ライン生産方式です。セル生産方式と呼ばれるようになったのは、1990年代のこと。したがって、U字型ライン生産方式が開始された1980年代には、まだセル生産方式という言葉はありませんでした。

分割ラインセル生産方式とは

分割ラインセル生産方式とは、複数の作業者が手渡しで半製品を送って順に作業を進めていくという方法です。現在主流の流れ作業を狭い場所で行っていたというイメージになります。

すべて一人で完了するセル生産方式「一人屋台方式」

一人屋台方式は、一人の作業者が一人用の作業ステーションで生産します。この時の作業ステーションが「屋台」と呼ばれ、屋台での生産なので「一人屋台方式」です。

一人屋台方式はU字型ライン生産方式とよく似ています。異なる点は作業ステーションの規模が一人用で小さいことです。

一人で仕掛け品を運ぶ「巡回方式」とは

巡回方式は一人屋台方式とは異なり、作業を行うステーションが手の届く範囲にはありません。よって、作業者が仕掛け品を持ち運びながら、工程を巡回して作業をする必要があります。最終的に、工程を一巡することで製品が完成するという方式です。

巡回方式の特徴としては、1個作りが基本となるので分業できないという点。また、生産性を考えると、作業者の人数調整が必要となります。

ところで、ライン方式とセル生産方式は何が違うのでしょう?

ライン生産方式とセル生産方式の違いとは?

現在の工場における生産ラインは「ライン生産方式」が主流となっています。それでは、「ライン生産方式」「セル生産方式」がどのように違うのか、簡単に解説しましょう。

ライン生産方式は、主にベルトコンベヤーを用いて半製品を運び、各ステーションで作業を行うという方式です。一方、セル生産方式はベルトコンベヤーを使用せずに作業を行うという方式。

それぞれの方式についての具体的な違いを下表にまとめました。

生産方式ライン生産セル生産
業務内容少ない多い
半製品の流れベルトコンベヤーなどで搬送手渡しもしくは自身で持ち運ぶ
作業場所ベルトコンベヤー前の所定の位置所定の位置もしくは適宜移動
人数多い少ない
生産ロット数少品種多量生産向き多品種少量生産向き
教育コスト少なく済む
(業務内容が少ないため)
多くかかる
(業務内容が多く覚えることも多い)
ライン生産方式とセル生産方式の違い

近年はセル生産方式が少なくなっていますが、セル生産方式に向いている作業もあることを覚えておいてください。

セル生産方式にも何らかのメリットがあるとうことですね!

セル生産方式のメリット

セル生産方式には以下のようなメリットがあります。

  • 生産ラインを止めずに多品種生産が可能
  • スキルアップで作業員のモチベーションが上がる
  • 少ない人数で作業効率の向上が期待できる

セル生産方式の最大のメリットと言えば、品種の切り替えが容易であるという点です。半製品がコンベヤで流れる場合とは異なり、使用する部品や組み付け方法などを1台ずつ変えることも可能となります。

また、一人が複数の作業をこなす必要があるので、多くのスキルが必要です。一つ一つの作業が単純なものであっても、多くの作業なので必要なスキルの数も多くなります。

よって、セル生産方式の作業員はスキルアップを通じてモチベーションも向上するでしょう。

先程の表にもありましたが、セル生産方式は少人数での生産活動です。少人数なので、無駄な作業を削減することも容易となります。つまり、無駄を省くことで作業効率の向上が可能です。

もちろん、生産状況や規模などにも拠るところがあるので一概には言えません。

ただし、セル方式にもデメリットがあります!

セル生産方式のデメリット

セル生産方式のデメリットとして主に考えられるのは次の2点です。

  • 作業員に高いスキルが求められる
  • 大量生産には不向き

セル生産方式のメリットとして、スキルアップによってモチベーションが上がると紹介しました。しかし、多くのスキルが必要なので作業員によっては不向きな場合もあります。

高いスキルを求めることが逆に重荷となり、離職へとつながるかもしれません。正に表裏一体という感じでしょう。

また、セル生産方式では多品種少量生産には対応できますが、大量生産には不向きです。

したがって、メリットとデメリットを鑑みて、セル生産方式のメリットを活かせる工程で導入してください。

では、引き続きライン生産方式のメリットとデメリットについて考えてみましょう。

ライン生産方式のメリット

ライン生産方式の主なメリットは下記の4点です。

  • 少品種での生産効率が高い
  • 少品種生産での計画が立てやすい
  • 作業者の教育コストが安い
  • 自動化の導入が比較的容易

前述した通り、ライン生産方式では少品種の生産に長けています。したがって、少品種生産を行なう場合には計画も立てやすく、生産効率も良いことが大きなメリットです。

ライン生産では、一人の業務内容は少なくなります。業務内容が少なくなることで教育内容も少なくなり、教育コストという点でもメリットがあるでしょう。

また、工作機械やロボットなどを導入して自動化することが比較的容易です。組み立て工程だけでなく、検査工程なども画像認識技術AI技術の進歩によって容易になってきました。

ライン生産方式のデメリット

ライン生産方式のデメリットとして、主に考えられるのは次の4点です。

  • 設備の導入費用が大きい
  • 作業者のモチベーション維持が難しい
  • 多品種少量生産には不向き
  • 不良が出た場合の影響が大きい

ライン生産方式にはベルトコンベヤを始めとする周辺機器や工作機械や産業用ロボットなどを導入する必要があるので、セル生産方式より導入費用が高くなります。

ただし、導入に際しては補助金などが利用できる場合もあるので、自治体等に問い合わせるのがおすすめ。補助金に関しては下記の記事も参考にしてください。

また、ライン生産方式は作業者の業務内容が少ないことでモチベーションの維持が難しいというデメリットも考えられます。モチベーション向上のためには、待遇の改善や適正な目標設定などを検討しなければなりません。

ライン生産方式は少品種向けの方式なので、多品種少量生産を行なうには不向きです。近年は多品種というだけではなく、市場の動向としてオプションの幅を増やす傾向にあります。よって、ライン生産方式では対応が難しくなってくるでしょう。

更に、大量生産向けの設備なので、不良が発生した場合の影響が大きいこともデメリットです。不良が発覚した時には、既に多くの不良品が発生していたということもあるので、早期に発見する仕組みづくりをしなければなりません。

実は、セル生産方式とライン生産方式の良いところを取ったような「ダイナミックセル生産方式」というものがあります。

セル生産方式の進化系「ダイナミックセル生産方式」

これまで、セル生産方式とライン生産方式について詳しく解説してきました。どちらの方式にもメリットとデメリットがあり、生産方法に最適な方式を選択する必要があります。

つまり、どちらの方式も【帯に短し襷に長し】と感じることになるでしょう。そんな時におすすめしたいのが、「ダイナミックセル生産方式」です。

ダイナミックセル生産方式は、セル生産方式とライン生産方式のメリットを組み合わせたような生産方式。実は、インダストリー4.0(第四次産業革命)のテーマの一つとされていて、現在は世界中で多くの企業が取り組んでいる生産方式です。

ダイナミックセル生産方式は、セル生産方式と同様に各工程をユニットとして考えます。ただし、各ユニットはクラウド上にある生産システムに接続され、一元管理されるのが大きな特徴です。

また、ライン生産方式と同様に各工程はラインで接続されていますが、各工程がユニット毎に独立しているという特徴があります。したがって、細かな仕様変更にも対応が可能となり、多品種少量生産にも対応が可能です。

それでは、ダイナミックセル生産方式のメリットとデメリットについて、簡単に解説しましょう。

ダイナミックセル生産方式のメリット

ダイナミックセル生産方式の主なメリットとしては次の3点です。

  • 仕様変更が容易
  • AI技術との親和性が高い
  • 省人化・省力化が可能

ダイナミックセル生産方式はセル生産方式のように小回りが効く生産方式なので、仕様変更が容易です。近年の主流である「オプションの幅が広い製品」の製造にも対応可能。柔軟な生産ラインが実現します。

また、ダイナミックセル生産方式はAI技術との親和性が高く、

  • 設備の稼働予測
  • 設備の故障予測
  • 設備の異常検知

などが容易になる点も大きなメリットです。

ダイナミックセル生産方式では、上記のような理由だけでなく生産管理システムの自動化も可能です。よって、省人化・省力化も実現できるでしょう。

ダイナミックセル生産方式のデメリット

ダイナミックセル生産方式の主なデメリットは次の4点です。

  • 導入費用が大きい
  • ランニングコストが大きい
  • 工場全体の最適化が必要
  • 重工業では導入が難しい

ダイナミックセル生産方式の最も大きなデメリットは、費用の問題です。最新の設備を導入する必要があるので、導入コスト・ライニングコストが大きくなります。

また、導入の際には他の工程との兼ね合いも考え、工場全体での対応をしていかなければなりません。

ただし、造船など大型製品を製造するにはデメリットが大きい生産方式と言えます。よって、生産状況などを考慮したうえで導入してください。

セル生産方式についてのまとめ

本記事では、「セル生産方式」「ライン生産方式」「ダイナミックセル生産方式」について詳しく解説しました。もう一度記事を振り返ってみましょう。

それぞれの生産方式を簡単にまとめると下記のようになります。

  • セル生産方式:コンベヤを取り除きワークを手送りして製品を作るライン
  • ライン生産方式:ベルトコンベヤーを用いて半製品を運び、各ステーションで作業を行う
  • ダイナミックセル生産方式:セル方式とライン生産方式を組み合わせた生産方式

また、「ライン生産」と「セル生産」の主な違いは下記の通り。

生産方式ライン生産セル生産
業務内容少ない多い
半製品の流れベルトコンベヤーなどで搬送手渡しもしくは自身で持ち運ぶ
作業場所ベルトコンベヤー前の所定の位置所定の位置もしくは適宜移動
人数多い少ない
生産ロット数少品種多量生産向き多品種少量生産向き
教育コスト少なく済む
(業務内容が少ないため)
多くかかる
(業務内容が多く覚えることも多い)
ライン生産方式とセル生産方式の違い

そして、セル生産方式とライン生産方式のメリットを組み合わせた方式がダイナミックセル生産方式です。

それぞれの生産方式のメリット・デメリットを考慮して、設備の導入を検討してください。

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