ハンドリングロボットとは?——ピック&プレース・箱詰め・パレタイジングの違いと、ロボットの型・ハンドの選び方、向かない4条件【2026年版】

この記事の要点
- ハンドリングロボットは、ワークをつかんで別の場所へ移す作業を受け持つ産業用ロボットの呼び名です。用途はピック&プレース・箱詰め(梱包)・パレタイジングの3つに大きく分かれます。
- 3つの用途は、ワークの重さ・動かす範囲・1サイクルの時間が違うため、向くロボットの型も変わります。
- 選ぶ順番は「ワーク → 動作 → ロボットの型 → ハンド → 安全と設置場所」です。型から決めると、ハンドや柵の段階で手戻りが出ます。
- 人の負担が大きい重量物の区間ほど優先度が高く、厚生労働省の腰痛予防対策指針も自動化を原則としています。
- ワークの姿勢がそろわない、品種や荷姿がよく変わる、物量が少ない、柵を置く場所がない——このどれかに当てはまる区間は、先に条件を整えてから検討します。
この記事が支援する判断:生産技術や製造の担当者が、工程間の「取り出す・並べる・箱に詰める・積む」作業をロボットに置き換えられるかを検討するときに、どの用途に当たり、どの型のロボットとハンドを候補にし、どの区間は人の作業のまま残すかを決める場面を支援します。
「ハンドリングロボット」という言葉は、カタログでも求人でも広い意味で使われます。結論から言えば、これは特定のロボットの型の名前ではなく、物を移す作業という用途の名前です。同じハンドリングでも、電子部品を並べ替える作業と、20kgの段ボールを積む作業では、選ぶロボットもハンドもまったく違います。本稿では、用途ごとの違いと選ぶ順番、ロボットにしない方がいい条件を整理します。
ハンドリングロボットとは、どんなロボットか?
ハンドリングロボットとは、製品・部品・材料をつかみ(または吸着し)、決められた場所へ移して置く作業を受け持つ産業用ロボットです。加工・溶接・塗装といった工程そのものではなく、工程と工程のあいだの「移す」作業を担うのが特徴です。
法令上は、労働安全衛生規則第36条第31号が、マニプレータと記憶装置を持ち「記憶装置の情報に基づきマニプレータの伸縮、屈伸、上下移動、左右移動若しくは旋回の動作又はこれらの複合動作を自動的に行うことができる機械」を産業用ロボットと定めています(e-Gov法令検索で2026年10月13日に確認)。ハンドリングに使うロボットもこの定義に入るため、教示や柵などの規定がそのまま適用されます。
ピック&プレース・箱詰め・パレタイジングは何が違うのか?
3つの用途は、扱うワークの重さと、1回に動かす範囲、求められる速さが違います。表1で自社の作業がどれに当たるかを先に確かめてください。
| 用途 | 作業の中身 | 典型的なワーク | 候補になりやすい型 | 決め手になる条件 |
|---|---|---|---|---|
| ピック&プレース | 決まった位置から取り、別の位置に置く。整列・載せ替え・供給 | 小物部品、電子部品、成形品 | スカラ、パラレルリンク、直交 | 1サイクルの時間と位置の精度 |
| 箱詰め(梱包) | 製品を箱やトレイに決まった並びで入れる | 袋物、小箱、ボトル | 垂直多関節、スカラ、パラレルリンク | 入れ方の種類と箱の形の変わりやすさ |
| パレタイジング | 箱や袋をパレットに段積みする(逆はデパレタイジング) | 段ボール、紙袋、ケース | 垂直多関節(パレタイズ用の4軸を含む)、直交(門型) | ワークの重さ・積む高さ・積み付けパターンの数 |
同じ工程に複数の用途が混ざることもあります。たとえば、ラインの終端で製品を取り出して箱に詰め、箱をパレットに積む流れは、ピック&プレース・箱詰め・パレタイジングの3つが続いた形です。1台に全部を受け持たせるか分けるかは、次の「選ぶ順番」の中で決めます。
ハンドリングロボットは、どの順番で選ぶのか?
カタログを見比べてロボットの型から決めると、後になって「このワークはつかめない」「柵を置く場所がない」と分かり、手戻りになります。選ぶ順番は図1のとおりです。
とくに見落とされやすいのが③と④の関係です。ロボットの可搬質量は、ワークだけでなくハンドの重さを足した値で見る必要があります。吸着パッドと真空発生器を載せたハンドや、爪を開閉するハンドは、それ自体が数kgになることがあります。ハンドの選び方はロボットハンドの選び方を整理した記事で詳しく扱っています。
ハンドの方式を決めるときの考え方は、過去記事で次のように整理しています。
結論から言えば、ハンドの方式は「ワークが何でできていて、どこを持てるか」でほぼ決まります。
ロボットハンドは吸着・爪・磁石のどれを選ぶのか?——ワーク条件で絞る5つの確認と、真空パッドの必要な力の出し方【2026年版】
ロボットの型は、何を基準に選ぶのか?
| 型 | 得意な動き | 向くハンドリング | 確かめること |
|---|---|---|---|
| 垂直多関節 | 立体的な動き、ワークの向きを変える | 箱詰め、パレタイジング、機械への供給 | 周囲に広い可動範囲が要る。柵の位置と床面積 |
| スカラ(水平多関節) | 水平面での速い移動と上下 | 小物のピック&プレース、整列 | 傾けて置く・向きを大きく変える動作には向かない |
| パラレルリンク | 上から下への高速な取り出し | コンベヤ上の軽いワークの整列・箱詰め | 扱える重さが小さい。天井側に架台が要る |
| 直交(門型を含む) | X・Y・Zの直線移動 | 載せ替え、大きなワークの移送、パレタイジング | 動作範囲を広げやすいが、架台が大きくなる |
型ごとの構造や軸の数は産業用ロボットの種類を一覧にした記事にまとめています。候補を2つに絞ったら、ワークの重さとハンドの重さを足した値、最も遠い置き場所までの距離、1サイクルの時間の3つをメーカーやSIerに伝えて、型と機種の当てはまりを確かめてもらうのが確実です。
どの区間からロボットにすべきか?
優先するのは、人の体への負担が大きい区間です。厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」は、重量物取扱い作業について「適切な動力装置等により自動化し、それが困難な場合は、台車、補助機器の使用等により人力の負担を軽減することを原則とすること」と定めています(出典:厚生労働省、別紙 I-1)。同じ指針は、人力で扱う重量の目安を、満18歳以上の男性で体重のおおむね40%以下としています。
候補を挙げるときは、移す作業ごとに「ワークの重さ」「1日の回数」「腰をかがめる・ひねる動作の有無」を書き出し、重い区間と回数の多い区間から順に並べます。重さの基準や女性・年少者の上限は重量物の基準を整理した記事で扱っています。
ハンドリングロボットに向かない4条件とは?
次のどれかに当てはまる区間は、ロボットを入れても止まる・待つ・人が手を貸すが続きます。先に条件を整えるか、人の作業のまま残してください。
- ワークの姿勢や位置がそろわない——箱の中にばら積みされた部品を取り出す作業は、ビジョンとハンドの条件が厳しくなります。止まる条件はピッキングの自動化を扱った記事で整理しています。
- 品種や荷姿がよく変わる——箱の寸法や積み付けパターンが頻繁に変わると、段取り替えと教示のやり直しが続きます。判断の軸は多品種少量生産の自動化を扱った記事が参考になります。
- 物量が少ない——1日に数回しか発生しない移し替えは、ロボットの待ち時間が長くなり、置き場所の分だけ床が減ります。
- 柵や安全装置を置く場所がない——労働安全衛生規則第150条の4は、運転中の産業用ロボットに接触する危険があるときは「さく又は囲いを設ける等当該危険を防止するために必要な措置を講じなければならない」と定めています。柵なしで運転できる条件は産業用ロボットの事故と柵の要否を扱った記事で確かめてください。
とくに1つ目は、ロボットを選ぶ前に供給のしかたを見直すだけで解けることがあります。ピッキングの自動化を扱った過去記事でも、次のように述べています。
前工程でトレイに並べて供給できれば、ビジョンも経路計画も要りません。
ピッキングの自動化はどこまでできるのか?——バラ積み取り出しが止まる5つの条件と、ハンド・ビジョンを決める前に測る5項目
よくある質問(FAQ)
ハンドリングロボットと搬送ロボットは何が違いますか?
ハンドリングロボットは、その場でワークをつかんで近くの決まった位置へ移す作業を受け持ちます。搬送ロボット(AGV・AMRなど)は、ワークを載せて離れた場所まで運ぶ作業を受け持ちます。工程間では、搬送ロボットが運んだワークをハンドリングロボットが取り出す、という組み合わせもよく使われます。
ロボットの可搬質量は、ワークの重さだけで選んでよいですか?
ワークの重さにハンドの重さを足した値で選びます。重心がロボットの手首から離れるほど負荷が大きくなるため、メーカーが示す手首の許容値もあわせて確かめます。
協働ロボットをハンドリングに使えば、柵は要りませんか?
製品の種類だけでは決まりません。リスクアセスメントで、接触により危険が生ずるおそれが無くなったと評価できる場合に、柵なしの運転が認められます。重いワークや角の鋭いワークを扱う場合は、協働ロボットでも柵や安全装置が必要になることがあります。
まとめ
ハンドリングロボットは、ワークを移す作業という用途の呼び名で、ピック&プレース・箱詰め・パレタイジングの3つに分かれます。選ぶ順番は、ワーク・動作・型・ハンド・安全と設置場所の順で、可搬質量はハンドの重さを含めて見ます。候補は人の負担が大きい重量物の区間から挙げ、姿勢がそろわない・品種がよく変わる・物量が少ない・柵を置けない区間は、先に条件を整えてから検討します。
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出典・参考
- 労働安全衛生規則 第36条第31号・第150条の4(e-Gov法令検索。2026年10月13日に条文を確認)
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日改訂)別紙「作業態様別の対策」I 重量物取扱い作業 1・2 PDF(2026年10月13日に原文を確認)
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