元ロボットSIerが語る!ロボットSIerのキャリアについて
- #人材育成
もくじ
こんにちは。
株式会社ファースト・オートメーション代表の伊藤です。
弊社は工場自動化の分野でSaaSサービスを提供しておりますが、業界に身を置く企業として「工場自動化・産業用ロボット業界のことを多くの方に知っていただきたい」、さらには「ロボットSIerや工場自動化のエンジニアを目指す若者がもっと増えてほしい」と思っています。特にこの業界は若年層の採用に苦労している企業が多いように感じています。
しかし、ロボットSIerという職業はまだまだ世間では認知度が低いのが現実です。今後業界に優秀な人材を呼び込むには、ロボットSIerという職業の認知度を向上させることが必須条件です。そこで今回は基本中の基本ということで、そもそも「ロボットSIer」とはどういう存在なの?ということを、元ロボットSIerの私がご説明したいと思います。
伊藤 雅也
株式会社ファーストオートメーション CEO
1995年生まれ。愛知県の工業高校卒業後、自動車部品メーカーへ入社し、生産管理部に従事。
大手ロボットSIerの株式会社豊電子工業に転職し、技術営業として工場自動化、ロボット化の提案営業を行う。自動車業界に限らず、物流業界、食品業界、医薬品業界の企業様を担当。画像解析や自動制御技術を活用したロボットシステム提案も経験。
2020年9月、株式会社ファースト・オートメーションを創業。FA設備の調達プロセスを効率化するプラットフォームROGEARを展開し、業界全体の問題解決に取り組む一方で、自社メディアであるROBoINにてロボットSIerや業界の認知度を向上させる活動にも積極的に取り組む。
では、ロボットSIerとはどういった存在なのか。一般的に単にSIerと言えばIT業界が思い浮かぶ人が多いのではないでしょうか?ロボットSIerも業界は違えど立場や役割はIT業界のSIerと共通する点が多いです。大前提としてロボットSIerとは「ロボットを導入する際に欠かせない存在」です。そして、今後も業界が発展していくうえで必須の存在であり、工場自動化に関わる最新技術を常にキャッチアップして即座に顧客へ供給するイケてるエキスパート集団です。
この業界には新しい技術を活用した製品が次々と出てきます。ロボットSIerはそういった新しい技術を活用したいという顧客からの要望にも応えなければいけません。もちろん、ただモノづくりをするのではなくその技術活用が取引先にとって最適なのかも考えつつ、顧客の要望に沿った提案をする必要があります。今後益々需要が拡大していくロボット産業に対して誰よりも知識を持ち、生産現場の問題解決をサポートし、最新技術を自由自在に活用しているロボットSIer。カッコいいですよね。
この国の労働力人口の減少問題を考えると、今後更に国内で工場自動化を推進していく必要があるでしょう。一昔前までは工場自動化・ロボット導入は”大手が行うもの”という風潮がありました。実際、中小規模の製造業を中心にお話を伺っていても、未だにどこか他人事だと思っている企業が多いです。しかし今やその需要は中小企業にも広がっており、業界の全ての企業にとって検討する必要のある事柄になっているのです。
これには、そもそも工場には人材が集まりにくいという問題が挙げられるでしょう。これは中小企業ならなおさら顕著な問題となります。現職の職人が永遠に働くことはできないので、人間の代わりにロボットに技術を継承していくことを検討している企業が増えています。自動化を検討する際にはロボットに限らず機械設備を導入するという選択肢もありますが、複数の回転軸を自由自在に操れるロボットは柔軟性が高く、より人間に近い動きを実現できるため、工場自動化をおこなう際の中心的なアイテムになりつつあります。今後はよりロボットを中心に置いた工場自動化案件が増えていきます。そのような背景からロボットSIerの需要はますます増加傾向にあるのです。
一言でロボットSIerとは言ってもその役割は様々な分野に分かれています。どの範囲を担当するかは企業規模などによってまちまちなので、どの分野に興味があるのか、どの分野が自分に向いていそうかで目指す方向性は変わってくると言えるでしょう。場合によっては1人で複数の分野を兼任する必要も出てくるでしょう。基本的には企業規模が大きければ大きいほど分業化が進んでいる傾向にあります。ここでは各分野について簡単に説明していくので参考にしてみてください。
顧客の要求事項を吸い上げて自社が対応できる技術範囲でソリューションを提案します。とにかく案件を取ってくるというだけではなく、顧客の要求事項に対して実現できるものなのか、実現できるとしてどのような技術を活用すれば実現できるのか、実現するにあたって何が必要になるかなどポイントを抑えて提案できる営業マンは「技術営業」と言われています。技術営業は通常の営業と比べ、営業マンとしての価値が格段に高いと言えるでしょう。
受注前段階にどこまで詳細に顧客と議論し要求事項を整理できるかで、プロジェクトの成功に大きく影響してくるため、受注前段階に詳細な要件定義ができ精度の高い見積もりを作れる技術営業が求められています。また、プロジェクトマネジメントも含め営業マンがおこなっている会社もあります。
設計は顧客の要求事項を形にする分野です。ロボットにおこなわせる作業の内容や目的に応じて、ロボット本体の選定や付帯する設備や機器の選定、生産ラインのレイアウト設計など、ロボットを中心とした生産ライン全体に関わる設計を行います。この際にロボットの動作フローやレイアウトの各設備の距離感などからサイクルタイムは何秒になるかなども計算し、顧客の要求事項を満たせるか判断していきます。また、ただ形にするだけではなく規格に準拠した設計を行う必要があります。設計者はメカ設計・電気設計・制御設計の3種類に分類されている事が多いです。
製造は設計したものを組み上げ現地工事をおこないます。製造メンバーはメカ製造・電気製造の2種類に分類されている事が多いです。また、電気工事士などの資格が必要になります。ロボットはティーチングすることで制限されている動作範囲内で自由に動かすことができますが、一方で予測しづらい部分もあるため、その場合は設備を組み上げた後に部品の作り変えやレイアウト変更を必要とすることもあります。そういった突発的な対応も求められます。ただ、こういった対応はないに越したことはないので改善が求められている部分でもあります。
ティーチングはロボットに動きを記憶させる分野です。ティーチングマンは制御設計者が兼任していることもあります。また、ティーチングをする人は労働安全衛生法により、特別な教育を受けることが義務付けられているので、ティーチングをおこなう場合は特別教育の受講が必要です。このような講習会は全国の職業訓練校や各企業が開催しています。詳細については別の記事で解説していますのでそちらを参照してみてください。
近年ではティーチングレスの技術が登場していますが、そういった技術では再現できない動作はやはりまだまだティーチングマンに頼る必要があります。ティーチング方法もペンダントでプログラムを書き込む方式や、ロボットを手で動かしながら軌跡や位置を記憶させるダイレクトティーチングなど様々な方法があります。ティーチングは非常に属人的な分野です。ティーチング作業をおこなう人によって、ロボットの動きや作業速度、精度に大きな差が出ます。ですので、より簡単にだれでも精度の高いティーチングができるように様々な方法が生まれている分野でもあります。
調達はロボットシステムを構築する際に必要な部品を調達します。ロボット業界は世界的に需要が急拡大しています。納期に間に合わせるための交渉やメーカー選定なども設計と協力しておこなう必要があります。常に情報収集と自社の各部門へ情報展開をおこなう必要もあります。どれだけ要件定義の精度が高くても、他の要求事項を満たして受注できたとしても、納期が大幅に遅れてしまってはプロジェクトは大失敗ですので非常に重要なポジションになります。
管理は自社で抱えるすべてのプロジェクトのスケジュール管理や、自社工場の組み上げスペース管理など指揮官的な役割を担います。企業の割けるリソースも限られていますのでスケジュールと担当者の割り振りが非常に重要です。また、自社工場もスペースが限られていますので、他の案件が出荷できない限りスペースが空かず次の案件を受注しても組み上げられません。他部門とコミュニケーションをしっかりと取り、生産にかかわる人材とスペースを管理してスケジュールを組んでいく繊細な舵取りが求められる重要なポジションです。
私はロボットSIerの技術営業として多数のプロジェクトを担当してきました。苦労することももちろんありましたが、建屋だけの状態だった工場にロボットなどの設備を設置していき、自分の担当した生産ラインが問題なく稼働し製品を生産している光景を見たり、取引先の担当者や自社メンバーと協力しながら導入した設備が期待通りもしくはそれ以上の効果を出した際は、とてもやりがいを感じました。この記事を読んでロボットSIerを目指す人が増えると嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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伊藤 雅也
株式会社ファーストオートメーション CEO
1995年生まれ。愛知県の工業高校卒業後、自動車部品メーカーへ入社し、生産管理部に従事。
大手ロボットSIerの株式会社豊電子工業に転職し、技術営業として工場自動化、ロボット化の提案営業を行う。自動車業界に限らず、物流業界、食品業界、医薬品業界の企業様を担当。画像解析や自動制御技術を活用したロボットシステム提案も経験。
2020年9月、株式会社ファースト・オートメーションを創業。FA設備の調達プロセスを効率化するプラットフォームROGEARを展開し、業界全体の問題解決に取り組む一方で、自社メディアであるROBoINにてロボットSIerや業界の認知度を向上させる活動にも積極的に取り組む。
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