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【話題のGPTs】未来の産業界を変革する「GPT駆動型ロボットSIer」の登場 -「AIロボットSIer」をつくってみた
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CAE(Computer Aided Engineering)は、部品の強度や流体の流れを数値解析で求める技術であり、効率的な設計に不可欠なツールです。しかし、CAEの効果的な活用には専門知識や経験が必要で、解析の設定や計算時間の長さが課題となっています。一方、生成AIの進化により、CAEの問題点を補完する新しい手法が登場しつつあります。
本記事では、CAEの課題と生成AIを活用した解決策を紹介し、最新の事例を3つ取り上げます。
もくじ
CAEの活用は、以下の3つの観点から必要不可欠とされています。
CAEの必要性は3つの観点から説明できます。1つ目が試作回数の削減とコスト抑制です。実機による試作・評価のサイクルを減らすことで、開発コストを大幅に削減できます。
2つ目が製品性能の事前予測と最適化です。設計段階で様々な条件下での製品性能をシミュレーションすることで、設計品質の向上を図れます。
3つ目がグローバル競争における優位性の確保です。CAEを活用することで、革新的な製品をより早く市場に投入できるようになります。さらに、材料使用の最適化や製品の軽量化を通じて、サステナビリティへの貢献も大いに期待できます。
従来の設計プロセスにおいては、いくつかの重要な課題があります。最も大きな課題は、熟練技術者の知識や経験への依存度が高いことです。CAEツールの効果的な活用には、物理現象の理解や解析手法の選択など、専門的な知識が必要とされます。
また、解析モデルの作成には多大な工数がかかります。形状のモデル化やメッシュ生成、境界条件の設定など、細かな作業が多く必要であるためです。特に詳細な解析では計算時間が長くなる傾向にあり、設計変更のたびに時間がかかってしまいます。解析結果の解釈と判断にも、高度な専門知識が要求されます。
これら従来の課題に加えて、製品設計の複雑化・高度化に伴い、考慮すべき要素が増加するという、新たな課題も浮上しています。強度、熱、流体、振動など、複数の物理現象を同時に考慮する必要性が高まっているためです。
また、性能、コスト、環境負荷など、時として相反する要求に対する多目的最適化の必要性も増しています。さらに解析データの管理も重要な課題となっており、設計プロセスで生成される大量のデータを効率的に管理し、必要な時に適切な情報を取り出せるようにすることが求められています。
生成AIを活用することで、CAE解析の課題に対する新たな解決策が見えてきています。
CAEと生成AIを組み合わせることで、従来の課題に対する新たな解決策が見えてきています。機械学習と物理シミュレーションをかけ合わせたサロゲートモデルによって計算時間を大幅に短縮できるほか、多目的な最適化においてもAIが過去の解析結果から学習した知見を活用して、効率的な設計案を提示できます。さらに、生成AIの特徴である創造的な提案により、設計者が思いつかなかった革新的なアイデアを検討テーブルに乗せることも可能です。
以下では、CAE解析の分野で生成AIが活用された最新の事例を紹介します。
電通国際情報サービスでは大型構造物の振動問題へAIを適用しています。この事例では複数部品を組み上げた際の共振現象を事前に把握する必要があり、特に電動機軸受部の3Dモデルを用いた後に、固有振動現象を特定するシミュレーション業務が必要でした。
従来の手法であるFEM(有限要素法)では、対象となる構造物をメッシュと呼ばれる小さな要素に分割し、固定や部品間のボルト結合条件を境界条件として事前に定義する必要がありました。この手法では、解析条件の指定工数が多く、また計算力学的手法の熟練者でなければ使いこなすことが困難でした。
これに対し、深層学習を用いたアプローチでは、U-Netと呼ばれるセマンティックセグメンテーションモデルをベースに設計仕様と形状を入力して予測結果をピクセルデータで出力するマルチモーダルアーキテクチャを作成しました。約1,900セットの設計仕様のパラメータと、形状の画像を投入して学習を行った結果、Ground Truth(正解値)との比較で95%のケースに対して有効となる精度が得られました。
この適用により、入力して結果を得るスループット時間は数秒以内となり、従来手法の準備に関する手作業や膨大な行列演算による計算時間が不要になり大幅な高速化が実現できました。
SIEMENSが提供するSimcenter Studioなどのツールでは、初期コンセプト段階でシステムアーキテクチャの生成と評価を行います。システムシミュレーション、最適制御手法、強化学習を組み合わせて、要件に基づいて数百のアーキテクチャを検討し評価します。これにより、従来の人手による専門家中心のプロセスと比べて、最適なシステムアーキテクチャをより迅速に導き出すことが可能です。
詳細設計のフェーズにおいては新しい3D形状のデザインが必要です。トポロジー最適化やSimcenter STAR-CCM+などのツールでは、必要な強度や重量などの設計基準と、利用可能な最大空間などの形状制約から始めて、反復的にデザイン案を生成します。シミュレーションによる形状分析、設計変更に対するKPI感度やグラディエントの特定、そして勾配降下型アルゴリズムによる最適形状の特定を行います。
大規模なデータセットを必要としない従来のトポロジー最適化に加えて、過去の設計に基づいて効果的な新しい設計を生成するサロゲートモデリング技術も活用されています。オートエンコーダーを使用して設計の核となる特徴を学習し、類似の設計を検索してくれます。
これらにより、多くの制約がある設計を順次に行うことができるのです。
参考文献:SIEMENS, Generative engineering and the role of simulation(2023-November)
「3D-OWL」と呼ばれる予測系AI(サロゲートモデル)は、製品設計における性能評価を迅速化するために3次元形状をDepth Mapという独自手法で特徴量に変換し、これをCAE解析データや実験結果と組み合わせて学習データとします。機械学習を用いることで、新たな3次元形状の性能を短時間で予測することが可能になります。
一方、トポロジー・形状最適化(ジェネレーティブデザイン)の分野では実行系AIを用います。性能要件や製造技術要件を考慮した製品設計を、最適化技術による形状の自動生成で実現します。設計においては寸法や重量、材質や加工上の条件など背反する複数の条件を達成しなくてはなりません。実行系AIはこのような複雑な解を見つけることに向いています。また、アイデア出しもしてくれるため、新規設計でアイデアを出せずに業務が進まない時にも助かります。
画像分析の分野では識別系AIを用います。AIを用いた画像解析技術により、CAEの結果の自動的な評価・分析が可能です。これには適切な画像データの収集方法と解析手法の選択が重要となります。 結果としてAIは、設計(変更)コストの削減や設計開発スピードのアップ、最適な設計条件の自動的な導出が可能です。また、設計部署には過去の設計データ(図面)が数多く蓄積されています。それらを現在の設計に活かすため、参考になるデータを検索することにも役立つため、設計の最適化や意思決定の迅速化にも貢献します。
参考文献:トヨタシステムズ「AIを活用したエンジニアリング業務の効率化」
CAE解析は、生成AIの活用によってさらなる進化を遂げています。
今後も、生成AIの活用はCAEの分野においてより重要な役割を果たしていくでしょう。 設計者の負担を軽減し、より革新的な製品開発を加速するために、 最新の技術動向を取り入れていくことが求められます。
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