Apollo量産へ——Apptronikが追加520M調達で約1B到達、Mercedes・GXO・Jabil・John Deereが参画する製造業ヒューマノイドの現在地

Apollo量産へ——Apptronikが追加520M調達で約1B到達、Mercedes・GXO・Jabil・John Deereが参画する製造業ヒューマノイドの現在地
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米国AustinのヒューマノイドロボットスタートアップApptronikは2026年2月、シリーズA-X追加調達となる5億2,000万ドル(約780億円)をクローズしました。これにより同社のシリーズAは累計9億3,500万ドル超、総調達額はほぼ10億ドルに達し、ポストマネー評価額は約53億ドルと報じられています。本ラウンドにはB Capital、Google、Mercedes-Benzに加え、AT&T Ventures、John Deere、Qatar Investment Authorityが新たに参画。2026年は同社にとって「パイロットから商用スケール」へと移行する節目の年となります。

調達の全体像——B Capital・Google・Mercedes・John Deere・Qatarが支える

今回のシリーズA-X追加ラウンドの特徴は、事業会社(戦略投資家)と政府系ファンドが顔を揃えた点にあります。既存株主のB Capital・Google・Mercedes-Benzに加え、通信最大手AT&Tのベンチャーファンド、農機・建機世界大手のJohn Deere、そしてカタール投資庁(QIA)が新規で入りました。自動車(Mercedes)・物流(GXO)・電子機器製造受託(Jabil)・農機(John Deere)と、Apollo導入の「需要側」と資本を直結させる設計が明確です。

主要データ

項目内容
ラウンドシリーズA追加(A-X)
調達額5億2,000万ドル(約780億円)
シリーズA累計9億3,500万ドル超
総調達額約10億ドル
評価額(ポストマネー)約53億ドル
主要投資家B Capital、Google、Mercedes-Benz、AT&T Ventures、John Deere、Qatar Investment Authority
主要顧客Mercedes-Benz、GXO Logistics、Jabil
AI提携Google DeepMind(Gemini Roboticsベース)

Apollo——「現場で働くヒューマノイド」の設計思想

Apptronikが開発する二足歩行ヒューマノイドApolloは、製造・物流・小売現場での反復作業を担うことを明確なターゲットに据えて設計されています。2024〜2025年にかけてMercedes-Benz、GXO Logistics、Jabilの各サイトでパイロット運用が進み、CEOのJeff Cardenas氏は「2025年は有用な仕事の実証、2026年から本格的な商用化・スケールに入る」と明言しています。今回の追加調達は、この商用フェーズへの移行を資本面から裏打ちするものです。

Google DeepMindとの「頭脳」提携

Apollo単体のハードウェアに加え、ApptronikはGoogle DeepMindと戦略提携を締結しており、次世代ヒューマノイドはGemini Roboticsをベースとした汎用ロボット基盤モデルの上で動く設計です。ハンドウェアとフィジカルAIの「上下分離」が明確になりつつある業界のなかで、Apptronikは自前筐体+巨大プラットフォーマー製の推論エンジンという組み合わせを選択しました。

Mercedes・GXO・Jabil——3社のユースケースの違い

Mercedes-Benz(ドイツ・ジンデルフィンゲン工場ほか)

Mercedes-BenzはApptronikの早期顧客であり、出資者でもあります。Apolloは同社の自動車組立ラインの一部で、部品のサブアセンブリ・ラインサイド搬送・簡易検査などを担当。2025年3月のシリーズA追加ラウンドでMercedesは追加出資し、パイロットの成果を評価する姿勢を示しました。

GXO Logistics(世界最大規模のサードパーティ物流)

GXO LogisticsはApptronikと2024年に複数フェーズのR&D提携を開始しました。GXOは倉庫内のピッキング・ソーティング・ケース搬送など、人手が不足しがちな領域にApolloを段階投入する設計。物流業界ではBoston Dynamicsの「Stretch」など箱詰め専用機も並走するなか、Apolloは汎用性を軸に差別化しています。

Jabil(受託製造EMS世界2位)

Jabilとの提携は二重構造が特徴的です。第一に、JabilはApolloの受託製造パートナーとしてApptronikの量産をサプライチェーン面で支える役割を担います。第二に、JabilはApolloの導入顧客でもあり、自社の製造ラインで検査、ソーティング、キッティング、ラインサイド搬送、治具配置、サブアセンブリなど多様なタスクにApolloを投入予定です。製造→納入先で実績を積んだうえで、他顧客サイトへ展開するという「段階的実証」の仕組みが構築されています。

Tesla Optimusとの競争構図

ヒューマノイドロボット市場では、Figure AI(評価額390億ドル、BMWとパイロット中)、Tesla Optimus(2026年に約2兆円の設備投資計画)、中国AGIBOT(Longcheer量産ラインに世界初投入済)と並び、Apptronikが「製造業×物流」領域の最前列に位置しています。Apptronikの強みは(1)大手事業会社との早期かつ深いパイロット、(2)Jabilによる量産基盤、(3)Google DeepMindのフィジカルAI、の3点を同時に揃えた点にあります。

日本の製造業・装置メーカーへの示唆

日本の製造業および装置メーカーにとって、Apptronikの動きから読み取るべき論点は3つあります。

  1. ヒューマノイド導入の「入口」は物流・サブアセンブリ——精密組立よりも、搬送・ピッキング・キッティングなど人手不足が顕在化した領域がファーストユースケース。日本でも物流倉庫や部品供給工程から逆算した導入計画が合理的です。
  2. ハードとAIの「上下分離」構造を前提にする——Apollo+Gemini Roboticsのように、筐体と汎用AI基盤を別々に選ぶ時代が到来。将来の自社ロボ選定では、ハード性能だけでなく上に載るAIプラットフォームの選択肢を確認すべきです。
  3. 装置メーカーは「ヒューマノイドと共存する工場」の設計視点を持つ——2026年以降、顧客工場にヒューマノイドが入ってくる前提で、自社装置のHMI・安全柵・動線設計を見直す必要があります。人協働ロボット(コボット)よりさらに汎用性が高い存在が現場に加わることで、装置側のインターフェースも進化が求められます。

まとめ

Apptronikは今回の追加520M調達で、シリーズA累計935M・評価額53億ドルの水準に到達しました。Mercedes・GXO・Jabil・John Deereという「需要側の巨人」を資本と顧客の両面で取り込み、Google DeepMindと組んだフィジカルAIで頭脳側を強化。2026年を「パイロットから商用スケール」への転換点と位置付ける同社は、製造業ヒューマノイド領域における最有力プレーヤーの一社に名乗りを上げました。日本の製造業・装置メーカーも、ヒューマノイドが前提となる工場設計を真剣に議論すべきタイミングにあります。

出典

  • The Robot Report「Apptronik brings in another $520M to ramp up Apollo production」(2026年2月)
  • SiliconANGLE「Apptronik raises $520M to produce humanoid Apollo robot commercial deployments」(2026年2月11日)
  • Robotics and Automation News「Apptronik nears $1 billion in funding with $520 million extension to Series A round」(2026年2月12日)
  • The AI Insider「Humanoid Robotics Startup Apptronik Closes Over $935M Series A with New $520M Extension Round」(2026年2月11日)
  • TechCrunch「Apptronik’s humanoid robots take the first steps toward building themselves」(2025年2月)
  • The Robot Report「Apptronik collaborates with Jabil to produce Apollo humanoid robots」
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