製造業×生成AI事例現場に埋もれた「技術知」を一瞬で使える資産に—デンソー大安製作所×生成AI「SPESILL」活用事例

自動車部品を中心にグローバルなモノづくりを展開するデンソーでは、2030年に向けて全世界のグループ社員がAIを活用できる環境づくりを進めています。その一環として大安製作所(三重県いなべ市)では、生産現場に眠る膨大な技術文書・ナレッジを生産現場で利活用する取り組みがスタートしました。
仕様書、治具情報、作業手順、品質記録——。日々の判断や改善活動の根幹となる「技術情報」は、実は現場に大量に存在しています。しかし「探す・まとめる・判断する」の負荷が高く、十分に活用しきれていないのが現実です。
こうした課題に対し、大安製作所は製造業に特化した生成AI「SPESILL」を活用し、技術知の利活用に挑戦しています。この新しい取り組みの背景と効果について、大安製作所 次世代生産技術室の藤田圭佑氏にインタビューします。
自動車部品を中心にグローバルなモノづくりを展開するデンソーでは、2030年に向けて全世界のグループ社員がAIを活用できる環境づくりを進めています。その一環として大安製作所(三重県いなべ市)では、生産現場に眠る膨大な技術文書・ナレッジを生産現場で利活用する取り組みがスタートしました。
仕様書、治具情報、作業手順、品質記録——。日々の判断や改善活動の根幹となる「技術情報」は、実は現場に大量に存在しています。しかし「探す・まとめる・判断する」の負荷が高く、十分に活用しきれていないのが現実です。
こうした課題に対し、大安製作所は製造業に特化した生成AI「SPESILL」を活用し、技術知の利活用に挑戦しています。この新しい取り組みの背景と効果について、大安製作所 次世代生産技術室の藤田圭佑氏にインタビューします。
もくじ
Q.生成AIを活用して、「技術の資産」を利活用しようと考えた背景を教えてください。
藤田氏:
デンソーでは「2030年までにグループの全社員がAIを使いこなせる状態をつくる」という方針のもと、各拠点でDX・AI活用を加速しています。大安製作所としても、AI活用領域の探索に取り組んできました。
大安製作所は多くの工程やラインを持っており、「製品・治具の仕様書」「条件設定の根拠」「不具合の再発防止策」など膨大な技術文書が長年蓄積されています。
しかしながら、情報を一つ一つ確認し、プロジェクトごとに必要・不必要かを選んでいく作業は時間を要します。そういったデータをまとめて、チャットベースで情報収集できたり、定型の帳票にアウトプットできたりすると良いのではと考え、言語系の処理に優れる生成AIに大きな可能性を見出しました。

Q. 技術資産を利活用する基盤に「SPESILL」を選ばれた理由には何が挙げられますか?
藤田氏:
私たちが求めているポイントは、単純に「文書を電子化する」「システムに格納する」ことではなく、「過去の知見にすぐアクセスし、判断の質を上げること」にあります。
既存の仕組みでは、「文脈を理解して答えてくれる」部分がどうしても不足していました。
そうした背景の中で、製造業に特化し、技術文書を扱う前提で設計されている生成AI「SPESILL」は次の4つの強みがあると考え、導入を決定しました。
選定理由①:トライアル・PoCが手軽なパッケージアプリ
他社の生成AIアプリケーションは、どうしてもオーダーメイド型の開発伴走になることが多く、 実装までのリードタイムが長くなる懸念がありました。
その点 SPESILLはパッケージアプリとして提供されており、トライアル・PoCをすぐに始められる手軽さが非常に魅力的でした。
選定理由②:現場ニーズと一致する「Excel帳票」の利活用機能
私たちは、最終的にExcelの帳票として利活用できることを求めていました。SPESILLには最初から
- Excelファイルを取り込める
- 中身を生成AIで埋められる
- 出力して帳票として使える
という機能が標準で備わっており、ここが現場のニーズと完全にマッチしていました。
選定理由③:非構造化データをRAGで活用できる技術
生産現場には過去資料・手書き情報・報告書など、非構造化データが大量に存在しますが、従来のシステムでは扱いづらいデータとなっています。SPESILL には、そのような文書をRAG(検索拡張生成)の仕組みで活用可能なデータへ変換できる技術があります。
これにより、使いこなせていなかった手書き文章や過去のトラブル情報といったデータも検索・活用しやすくなり、「現場の技術資産を活かせる」点が大きな決め手になりました。
選定理由④:細かなニーズに対応する、レスポンスの早いカスタマイズ
PoC段階から、こちらの細かな意見や要望に対してカスタマイズへのレスポンスが非常に早く、回答や実装スピードも速いことが印象的でした。
技術検証から現場展開までのスピード感は、AI導入では非常に重要です。SPESILLはその点でも優れており、採用の大事な理由となりました。

Q. 「SPESILL」を導入し、成果や現場からの反響はいかがでしたか?
藤田氏:
生産技術ではFMEA(故障モード影響解析)などの帳票生成、生産管理部門では新人育成をサポートするチャットツール、工場の現場スタッフでは作業のリスクアセスメント帳票の作成といった活用に取り組んでいます。
たとえば数十時間を費やしていたFMEAでは、情報収集や整理、叩き台を作成する業務で70〜80%程度もの工数削減効果が確認されました。ほかにも、部署内で経験のない加工技術についても社内の情報収集がしやすくなるといった効果がありました。
定型の帳票作成や製品・工程に専用のデータベースを作れる点は、業務特化型の生成AIアプリケーションとしてかなり完成度が高く、製作所内からも「SPESILLは価値あるアプリケーションだ」という意見も多数挙がっています。「こういうことに使えないだろうか」というアイデアも活発にやり取りされるほどです。
Q. これから先、製造業において生成AIはどのような存在となると考えますか?
藤田氏:
製造業全体では労働力人口の減少とそれに伴う技能・技術・知見の伝承が共通課題となっています。この対応策の一つとして生成AIは有用だと考えています。生成AIは「仕事を奪う存在」という意見もありますが、私は「業務をより迅速に進めたり、より短期間で精度を上げていくためのサポートツール」に位置付けられると思います。
そうした中でSPESILLは、各製造部門にある技術ノウハウや肝といったものをチームの垣根を越えて共有できる存在になると感じています。社内や製作所内での水平展開を進められると、SPESILLの強みが増していくのではないかと考えています。
製造業では職人的な領域で言語化されていない部分も多くありますが、生成AIによって言語化・可視化され、技能・技術・知見の伝承が進んでいくことに期待をしていきたいです。
【ご紹介】製造業の現場を変える、ものづくりに特化した生成AI
ファースト・オートメーションでは、ものづくりに特化した生成AI「SPESILL」を提供しています。仕様書や帳票といった技術文書の自動作成からチャットを活用した情報検索など幅広いAIソリューションを提供します。
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