チャットGPT(ChatGPT)で図面作成はできる?旋盤フランジ部品で検証した結果とJIS製図の限界【2026年最新】

チャットGPT(ChatGPT)で図面作成はできる?旋盤フランジ部品で検証した結果とJIS製図の限界【2026年最新】
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この記事の要点

  • チャットGPT(ChatGPT)に図面作成を頼むと、指示した寸法を描画するところまでは可能だが、JIS準拠の製図としては成立しない。
  • 2024年12月にGPT-4oで旋盤フランジ部品の図面作成を4回試行した結果、寸法線の引き方・標題欄・格子参照方式が守られなかった
  • 限界の原因はモデルの賢さではなく、チャットの出力がラスタ画像であり、CADが扱うベクタ図面データではないという構造にある。
  • 2026年時点の現実解は、直接描かせるのではなくCADスクリプト(Python の ezdxf など)を生成させ、実行してDXF形式で出力する間接方式。
  • 図面はほぼ確実に機密情報にあたるため、アップロード前に入力データの取り扱い条件を確認することが前提になる。

設計図面の寸法がわずかに変わるだけでも、修正に多くの時間を費やしてしまった経験はありませんか。たった1mmの修正やささいな配置の変更で、図面作成を一からやり直す必要が生じることがあります。手書き図面が残る現場では、生産性を押し下げる要因の一つとして認識されているのではないでしょうか。

すでにデータ化された図面があったとしても、顧客や関係部署からの修正要望が増えれば、設計者は本来の業務に集中できず、プロジェクト全体の進行が遅れます。

この問題の解決策として真っ先に挙がるのが生成AIの活用です。しかし、いざ取り組んでも実用レベルのアウトプットが得られなかったり、業務に落とし込めなかったりするものです。製造DX.comでは、工場長や設計・生産現場の担当者に向けて、「旋盤加工のフランジ部品」を題材にチャットGPTでの図面作成を実際に試し、プロンプトと生成結果をすべて公開しました。

チャットGPT(ChatGPT)で図面作成はできる?

結論からいえば、指示した寸法を図として描画するところまではできますが、そのまま現場で使えるJIS準拠の図面にはなりません。2024年12月にGPT-4oで4回にわたり試行したところ、外径・内径・板厚といった数値指示は反映された一方で、寸法線の引き方、標題欄の記載方法、格子参照方式といった製図規格の要件は満たされませんでした。

そしてこれは「モデルが賢くなれば解決する」種類の問題とは限りません。後半で述べるとおり、チャット画面から返ってくるのは画像であり、CADが編集できる図面データではないという経路の違いが横たわっているためです。まずは実際の検証内容からご覧ください。

そもそも、なぜ図面作成に生成AIが期待されているのか?

設計・製図が製造業の工数の中で大きな比率を占め、かつ定型的な作業を多く含むためです。「生成AI × エンジニアリング」は製造現場の生産性を大きく左右する領域として注目されています。米マッキンゼーは、製造業における生成AIの活用先として「図面作成によるR&Dおよびプロトタイプ時間の短縮」を挙げています。

出典:McKinsey Talks Operations Blog

また、生成AI技術の中でもVLM(Vision Language Model)が注目を集めています。VLMとは、AIがテキストを理解したうえで画像を生成したり、画像から読み取れる情報を理解して説明や新たな画像を出力したりできるAIモデルです。簡潔にいえば「人間と同じようにAIが目で見て理解し、テキストや画像としてアウトプットする」能力を指します。この技術が、生成AIによる図面作成への期待の土台になっています。

実際にチャットGPTでフランジ部品の設計図面を作成してみた(2024年12月・GPT-4oで検証)

ここからは実際の検証です。使用したのは検証時点の最新版であったGPT-4oで、実施日は2024年12月です。以下のプロンプトと生成結果は、すべてこのときのものをそのまま掲載しています。

本記事ではプロンプト(生成AIへの指示文)の解説をしながら図面を作成していきますので、読みながら試していただけます。はじめに与えたプロンプトは次のとおりです。

あなたは優秀な部品図面作成のプロフェッショナルです。
以下の#[Premise]から、#[Constrains]に従って、旋盤加工のフランジ部品の図面をステップバイステップで作成してください。また、#[Supplement]の条件を守るようにお願いします。
図面の作成前には、旋盤加工で物理的に加工できるかをステップバイステップでの検証も実行してください。
なお、ハルシネーションは禁じます。

#Premise /*前提条件*/
出力形式:pdf
順守する製図規格:日本工業規格(JIS)
図面サイズ:A4サイズ横長
図枠の右下に描画する標題欄の構成:#[部品名],#[品番],#[製作個数],#[投影法(指定なければ等三角法],#[尺度]#[材質],#[作生年月日],#[設計者],#[検図者],#[承認者],#[作成年月日]
記載言語:英語

#Constarins /*制約条件*/
外径:Φ100mm
内径:Φ50mm
厚み:Φ10mm
穴の大きさ:Φ10mm
穴の配置:5個
穴の補足:外径と内径の間で、物理的に旋盤加工が可能な配置をお願いします。
その他の条件:最適なものを提示してください。

#supplement /*補足*/
・部品図面が図枠からはみ出す場合には、尺度を収まるように自動で調整してください。
・図面作成にあたっては格子参照方式を適用してください。
・図面には寸法線を記載してください。

チャットGPTでアウトプットの精度や品質を高めるコツはいくつかあります。AIの立場を設定する、文章の構造化や記号を用いて情報を整理する、数字を用いて条件を定義する、といった点です。

今回のプロンプトでは、チャットGPTが部品図面作成のプロフェッショナルであると定義したうえで、「#」を使った入れ子構造で情報を整理しました。フランジ図面の具体的な数値も記載して作成を指示しています。

さらに、事実に基づかない情報の生成を防ぐ「ハルシネーションの禁止」や、手順を一つずつ実行させて論理的なアウトプットを導く「ステップバイステップ」といった応用的な指示も併用し、図面の精度向上を図りました。

1回目の指示と生成結果はどうなった?

結論として、数値指示は反映されたものの、製図規格に関する指示は守られませんでした。実際の応答と生成された図面がこちらです。

出力された図面を確認すると、#Premiseで指示した「出力形式:PDF」「図面サイズ:A4横長」「図枠右下に描画する標題欄の構成」などは指示どおりに出力されています。#Constrainsで指示した外径や内径などの具体的な数値も同じく反映されました。

一方で#Premiseの「順守する製図規格:日本工業規格(JIS)」については、寸法線の引き方や標題欄の記載方法などが守られませんでした。#supplementで指示した格子参照方式も適用されていません。これでは実用レベルの図面として活用できないため、さらに指示を重ねます。

2回目:AI自身に改善案を出させるとどうなった?

1回目からほぼ変化がありませんでした。生成AIは具体的な数値を用いたプロンプトでより正確なアウトプットを返しますが、守られなかったJISの内容を一つずつ指示するのは効率的ではありません。そこで、チャットGPT自身に改善案を網羅的に調査させ、検証させるプロンプトを与えました。

では、作成いただいた図を100点満点中10点とみなします。

私からみて100点と感じてもらえる図にするには何が必要かをパールグローイング法を用いて検証し、あなたが製図をやり直す上で必要な指示をステップバイステップで作成し、それを自ら実行してください。

なお、ハルシネーションは禁じます。

ここで登場した「パールグローイング法」は、最も重要な情報(パール)を核に関連情報を追加していくことで、深い理解や創造的なアウトプットを引き出す手法です。上記プロンプトを用いた際の応答と生成図面がこちらです。

1回目の生成結果からほぼ変化がありません。JISのように多くのルールを含む規格は、課題の抽出や改善指示の洗い出しまでは可能でも、それを図面に正しく反映する能力は2024年12月時点では確認できないという結果になりました。

3回目:具体的な寸法情報を小分けに与えるとどうなった?

標題欄の描画は変化しましたが、図枠からはみ出す新たな不具合が発生しました。2回目で失敗したJISルールの反映について、具体的な寸法情報を少しずつ指示として与えたときの応答がこちらです。

具体的なプロンプトを与えたことで標題欄の描画が変化し、「図枠の右下に配置」「構成項目ごとに枠を配置」といった指示は守られました。しかし標題欄そのものが図枠からはみ出しており、右下に適切に配置されていません。1回目に指示した「部品図面が図枠からはみ出す場合には、尺度を収まるように自動で調整してください」が守られていないことになります。

3回目(修正版):指示を厳守させるとどうなった?

図枠内には収まりましたが、今度は記載すべき項目が欠落しました。指示が守られない状況を改善すべく、プロンプトを修正して再度生成した結果がこちらです。

標題欄は図枠内に収まるよう生成されました。しかし「#Premiseや#Constrains、#supplementの指示を厳守した上で」というプロンプトがあるにもかかわらず、標題欄に記載すべき項目が減少しています。

プロンプトを変更すれば生成結果が変わる可能性は見いだせたものの、具体的な内容を指示しても必ず守られるとは限らないことが分かりました。

この「探しても、直しても、思ったとおりに戻ってこない」という感覚は、図面まわりの業務に共通するものです。関連する論点を扱った過去記事から、いくつか引いておきます。

検索時間だけを測ると、設計部全体のコストの3〜4割を占める「検索を起点にした判断遅れ」が完全に視界から消える。

設計部長が知らないと損する、図面検索の本当のコスト——年間1,200時間が消える理由

生成AIにopenpyxlコードを書かせて実行する間接方式が実務の主流で、既存帳票はテンプレートに値を差し込む方式が最も壊れにくい。

AIにExcelを読み込ませる・作らせるには?openpyxl・PDF変換・LibreOfficeの3方式と選び方

生成AI の利用にあたっては、入力情報がどう扱われるかをサービスごとに確認することが第一歩になります。

ChatGPT(チャットGPT)はオフラインで使える?ローカルLLMなど4つの方法と機密情報を守る選び方

検証結果:どこまでできて、どこができなかったのか?

「具体的寸法を含んだ指示を描画する」レベルまでは可能で、JIS準拠の製図としては不十分、というのが4回の試行から得られた結論です。整理すると次のようになります。

指示した内容結果備考
外径・内径・板厚・穴数などの数値反映された数値で明示した条件は再現性が高い
出力形式(PDF)・図面サイズ(A4横)反映された1回目から指示どおり
標題欄の構成項目部分的回を重ねると配置は改善するが項目が欠落
寸法線の引き方(JIS準拠)守られなかった4回とも改善せず
格子参照方式の適用守られなかった指示は認識するが図面に反映されない
図枠からはみ出す場合の尺度自動調整守られなかった3回目で明確な違反が発生
表1:2024年12月にGPT-4oで実施した4回の試行結果の整理。

一方で、プロンプトを変更するトライアンドエラーからは、指示の与え方次第で生成結果が変わることも確認できました。運用方法によって生成AIから得られるメリットは大きく変わるといえます。

【2026年最新】2026年時点では図面を作成できるようになった?

チャット画面で直接「JIS準拠の図面を描いて」と頼む使い方については、2026年時点でも同じ限界が残ると考えられます。ただし、これはモデルの性能が上がっていないという意味ではありません。ボトルネックが別のところにあるためです。

なお、本メディアは2026年7月時点で上記と同一条件の再検証を実施していません。以下は公開情報と、上の検証で観測された事実から整理した内容です。

なぜモデルが新しくなっても同じ限界が残るのか?

チャット画面から返ってくるのがラスタ画像(点の集合)であり、CADが編集できるベクタ図面データではないためです。製図は「線がどの座標からどの座標まで引かれ、どの寸法値と紐づいているか」というデータ構造の上に成り立ちます。画像として出力された図面は、見た目が図面に似ていても、CADで開いて寸法を1mm変更するといった操作ができません。冒頭で挙げた「1mmの修正のために一からやり直す」という課題は、この方式では解消しないことになります。

チャットGPTに「図面を描いて」と頼むと何が起きるかテキスト生成の経路Aと、CADスクリプト生成の経路Bの違い経路A:チャット画面で直接「描いて」と頼む= 2024年12月の本検証で試した方法指示テキスト(寸法・図枠・JIS準拠)LLMがテキスト/画像として生成ラスタ画像・簡易PDFが出力される寸法線・図枠がJIS B 0001に沿わないCADで開いて修正することもできない経路B:CADスクリプトを書かせて実行する= 2026年時点で実務的に使われている方法指示テキスト(寸法・図枠の条件)LLMがCADスクリプトを生成実行するとDXF形式で出力されるCADで開いて編集できる図面になるただしJIS準拠の最終確認と検図は設計者が行う必要が残る
図1:チャットGPTに図面作成を依頼する2つの経路の比較。チャットで直接描かせる経路Aと、CADスクリプトを生成させる経路Bでは、出力されるデータの性質が異なります。

2026年時点の現実解は?

図面そのものを描かせるのではなく、CADが読み込める形式を出力するスクリプトを書かせ、それを実行する間接方式です。たとえばPythonのDXF操作ライブラリ ezdxf は、DXF形式の図面データをプログラムから生成・編集できます。生成AIにこのライブラリを使うコードを書かせて実行すれば、出力はCADで開いて編集できる図面データになります。AutoCADのスクリプトやAutoLISPを書かせる方法も同じ考え方です。

この構図は、Excelを生成AIに扱わせる際に openpyxl のコードを書かせる方式が主流になっているのと同じです。生成AIに成果物を直接作らせるのではなく、成果物を作る道具を操作させると、扱えるファイル形式と精度が一段上がります。

アプローチ出力されるもの向いている用途注意点
チャットで直接「描いて」と頼むラスタ画像・簡易PDF形状イメージの共有、たたき台CADで編集できず、JIS準拠にならない
CADスクリプトを生成させるDXFなどのベクタ図面データ定型部品、寸法違いの派生図面コードの実行環境が必要。検図は設計者が行う
AI機能を備えたCADを使うCADネイティブの図面既存のCAD運用の延長で効率化製品ごとに対応範囲が異なる
過去図面を検索して流用する既存の承認済み図面類似案件が多い装置・部品検索できる状態に図面が整理されていることが前提
表2:生成AIを図面業務に使う際の4つのアプローチの整理。

4つ目に挙げた「過去図面の検索と流用」は地味に見えますが、装置メーカーの設計現場では新規作図よりも流用判断の頻度が高く、効果が出やすい領域です。

図面をチャットGPTにアップロードするとき、何に注意すべき?

図面は顧客の仕様や自社の加工ノウハウを含む機密情報にあたるため、入力データがどう扱われるかを事前に確認することが前提になります。個人向けプランと法人向けプランでは入力データの学習利用に関する条件が異なり、条件は改定されます。社内で図面を扱う前に、利用するサービスの最新の利用規約と契約条件を確認してください。

顧客から支給された図面の場合は、自社の判断だけでは決められません。取引基本契約や秘密保持契約で第三者提供やクラウドサービスの利用が制限されていないかの確認が必要です。試すのであれば、まずは社外に出しても支障のないサンプル図面から始めるのが安全です。

自己診断:自社は図面業務に生成AIを使える状態か?

  • 図面を外部サービスにアップロードしてよいかどうか、社内ルールが明文化されている
  • 顧客支給図面の取り扱い条件(第三者提供の可否)を契約書で確認できる
  • 過去の類似図面を、担当者に聞かずに検索して見つけられる
  • 設計変更の理由が、図面とは別に文書として残っている
  • Pythonなどのスクリプトを実行できる環境が、設計部門内または情シスにある

チェックが3つ以下であれば、生成AIの導入よりも先に、図面と設計情報が検索・再利用できる状態になっているかを整理したほうが効果が出やすい段階といえます。

よくある質問(FAQ)

チャットGPTで図面作成は無料で試せる?

無料プランでも試すことは可能ですが、利用できる回数やモデルには上限があります。上限の内容は改定されるため、試す前に公式の料金ページで最新の条件を確認してください。なお本記事の検証で分かったとおり、無料か有料かにかかわらず、チャット画面で直接描かせる方式ではJIS準拠の図面にはなりません。

チャットGPTが作った図面をそのまま製造に使ってもいい?

使えません。本検証では寸法線の引き方や標題欄がJIS B 0001の要件を満たさず、格子参照方式も反映されませんでした。形状イメージの共有やたたき台としては使えますが、製造に流す図面としては設計者による作図と検図が必要です。

図面を読み取らせる(既存図面の内容を説明させる)ことはできる?

作図よりは現実的です。VLMの画像理解によって、図面から寸法値や記号を読み取らせる用途は精度が上がっています。ただし読み取り結果の誤りは目視では気づきにくいため、重要な数値は必ず原図と突き合わせてください。

CADスクリプトを書かせる方法は、CADが使えない人でも実行できる?

スクリプトの実行環境が必要になるため、Pythonなどを動かせる環境の準備が前提です。設計部門内に実行環境がない場合は情シス部門との連携が必要になります。生成されたコードをそのまま実行せず、内容を確認する体制も併せて整えてください。

結局、設計部門はまず何から始めるべき?

過去図面を検索して見つけられる状態になっているかの確認からです。本記事の検証が示すのは、生成AIが新規に図面を描く力にはまだ制約があるということです。一方で、既存の図面や設計情報を探して再利用する工程は、現在の技術でも効果が出やすい領域です。

出典・参考情報

関連記事:業務OSの最前線

まとめ

チャットGPTによる図面作成は、指示した寸法を描画するところまでは可能ですが、JIS準拠の製図としては成立しません。そしてその限界は、チャットの出力が画像でありCADの図面データではないという構造から来ています。2026年時点の現実解は、図面そのものを描かせるのではなく、CADスクリプトを書かせて実行する間接方式です。

もっとも、多くの設計現場で先に効くのは新規作図の自動化ではなく、過去図面と設計情報を検索・再利用できる状態にすることだと考えています。本記事を運営する株式会社ファースト・オートメーションは、製造業に特化した生成AIと業務基盤を提供しています。

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