製造業の基礎知識VE/VA活動が継続しない設計組織の特徴——AI支援が機能する条件
- #DX
- #機械設計

もくじ
「塑性変形(そせいへんけい)とは何か」を一言でいうと、力を取り除いても元に戻らない、材料に永久に残る変形のことです。金属の板を強く曲げたあと手を離しても、板が完全にはまっすぐに戻らず曲がったまま残る——あの現象が塑性変形です。反対に、輪ゴムやバネのように力を抜くと元の形に戻る変形を弾性変形と呼びます。この記事では、弾性変形と塑性変形の違い、両者を分ける「降伏点」、そして設計図面を読むときや強度計算をするときに知っておきたい実務上のポイントを、図解とあわせて解説します。
塑性変形とは、加えた力(応力)を取り除いても元の形状に戻らない変形です。一方の弾性変形は、力を取り除くと元の形状に戻る変形を指します。同じ「変形」でも、力を抜いたときに元に戻るか戻らないかが決定的な違いです。金属材料に少しずつ力を加えていくと、はじめは弾性変形だけが起こり、ある大きさを超えると塑性変形が始まります。
この2つの領域の関係を1枚で表したのが「応力ひずみ線図」です。横軸に材料の伸び具合(ひずみ)、縦軸にかかる力(応力)を取ると、材料がどこまで弾性変形で耐え、どこから塑性変形に移り、最終的にどこで破断するかが読み取れます。
弾性域では、応力とひずみがほぼ直線的に比例します。これがフックの法則で、その比例定数がヤング率(縦弾性係数)です。たとえば軟鋼のヤング率は約206GPaが目安とされます(出典:日本機械学会 機械工学便覧)。ヤング率が大きい材料ほど、同じ力に対して弾性変形が小さく「たわみにくい」性質を持ちます。
降伏点が重要なのは、部品が「元に戻らない変形」を始める境界線だからです。機械部品や構造物は、使っているうちに永久変形してしまっては困ります。そのため強度設計では、実際にかかる応力が降伏点を超えないように寸法や材料を選びます。金属材料の降伏点や引張強さは、JIS Z 2241「金属材料引張試験方法」で規定された引張試験によって測定されます(出典:JIS Z 2241:2011)。
なお、アルミニウムや銅、ステンレスのように明確な降伏点が現れない材料では、0.2%の永久ひずみが生じる応力を「0.2%耐力」と定め、降伏点の代わりに設計基準として使います(出典:JIS Z 2241:2011)。降伏点や耐力を基準に、さらに安全率で割り込んで「許容応力」を決めるのが一般的な流れです。
両者の境目の点を降伏点と呼び、強度計算ではこの降伏点以下の応力を許容応力の基準とします。
安全率(安全係数)とは|決め方・計算式・材料別の目安と許容応力の関係を図解で解説【2026年版】
弾性変形と塑性変形は、次の4つの観点で整理すると見分けやすくなります。ポイントは「力を取り除いたあとに何が起こるか」です。
| 観点 | 弾性変形 | 塑性変形 |
|---|---|---|
| 力を取り除いた後 | 元の形に戻る | 変形が残る(永久変形) |
| 起こる領域 | 降伏点より前(弾性域) | 降伏点を超えた後(塑性域) |
| 応力とひずみの関係 | 比例する(フックの法則) | 比例しなくなる |
| 身近な例 | バネ・輪ゴム・たわむ棚板 | 曲げた針金・プレス加工品・へこんだ車体 |
ここで注意したいのは、弾性変形と塑性変形は「別々の材料の話」ではなく、同じ材料の中で連続して起こるという点です。力が小さいうちは弾性変形だけ、降伏点を超えると弾性変形に塑性変形が上乗せされていきます。プレスで金属板を曲げたときにわずかに戻る「スプリングバック」は、塑性変形のなかに弾性変形分が残っているために起こる現象です。
塑性変形というと「部品が壊れる前触れ」というマイナスの印象を持たれがちですが、製造現場では塑性変形を積極的に利用する加工が数多くあります。これを塑性加工と呼びます。プレス加工、曲げ加工、鍛造、絞り加工、転造などはいずれも、材料を降伏点以上の力でわざと塑性変形させ、狙った形状を作り込む技術です。金属が塑性域でも急には破断せず、大きく変形しながら耐える「粘り強さ(延性)」があるからこそ成立します。
逆に、鋳鉄やガラスのように塑性変形をほとんどせずに割れる材料は「脆性材料」と呼ばれ、設計上の扱いが変わります。同じ図面・同じ寸法でも、材料が延性か脆性かで安全側の考え方が変わるため、材料選定の段階で塑性変形の性質を押さえておくことが欠かせません。設計者が「迷ったら厚くしておけば安全」と安易に考えるのは危険で、材料特性と応力を正しく見積もる姿勢が求められます。
「迷ったら大きめに取っておけば安全」と考えてしまいがちですが、これは正確ではありません。
寸法公差・はめあいとは|種類・記号・図面の読み方と選び方を図解で解説【2026年版】
こうした材料特性・強度計算・図面上の指示は、本来つながった一連の判断です。しかし現場では、材料データはカタログ、強度計算はExcel、図面はPLM、と情報がバラバラに散らばり、都度探し直すことに時間を取られがちです。「同じ判断を毎回ゼロからやり直している」と感じる場面が多いなら、業務の棚卸し(無料の業務診断)で、どこに繰り返しの手戻りが潜んでいるかを一度整理してみるのも有効です。
力を取り除いたときに元の形に戻るかどうかです。戻るのが弾性変形、戻らずに変形が残るのが塑性変形です。両者の境目が降伏点です。
降伏点は塑性変形が始まる応力、引張強さは材料が耐えられる最大の応力です。応力ひずみ線図では、降伏点のあとに引張強さ(曲線の頂点)が現れ、その後に破断します。
アルミや銅、ステンレスなど降伏点がはっきり現れない材料で、0.2%の永久ひずみが残る応力を降伏点の代わりに使う指標です。JIS Z 2241で規定されています(出典:JIS Z 2241:2011)。
プレス、曲げ、鍛造、絞り、転造などの塑性加工で使われます。材料を降伏点以上の力でわざと塑性変形させ、狙った形状を作ります。
弾性変形と塑性変形の違いは、力を取り除いたときに元に戻るか戻らないか、そしてその分かれ目が降伏点である——この一点を押さえておけば、応力ひずみ線図も強度計算の考え方も一気に読みやすくなります。強度設計では降伏点(または0.2%耐力)以下で使い、塑性加工では逆に降伏点以上でわざと変形させる。同じ現象を、目的に応じて避けたり利用したりしているわけです。
材料特性と設計判断は本来ひとつながりですが、その情報や業務が部門ごとに分断されていると、同じ判断の繰り返しに時間が溶けていきます。
ERPは「お金とモノの記録台帳」、PLMは「図面とBOMの保管庫」であり、いずれも「業務そのもの」を実行する仕組みではない。
同じような部品が毎回新しい型番で登録される——部品マスタが増え続ける構造と、業務OSでそろえられる範囲
設計・調達・品質の判断材料をそろえ、繰り返しの手戻りを減らす「業務OS」の考え方に関心があれば、ファースト・オートメーションの無料の業務診断で、自社のどこに標準化の余地があるかを整理できます。
厳選した記事を定期配信
キャンペーン情報などをいち早く確認