RIPSのドキュメント作成例!約30種類をフェーズ・プロセス毎に解説
こんにちは!
産業用ロボットの情報を発信している製造DX.comです。[◎△◎]
最近、ロボットシステムを導入したいという問い合わせが増えているようですね。
ありがたいことです。
ロボットシステムを導入する時にはRIPSを採用していただくように勧めています。
RIPSとは『Robot system Integration Process Standard』の略です。つまり、ロボットシステムの導入において標準的な構築プロセスを管理する手法を表しています。
RIPSについての詳細は『ロボット導入プロセスって決まってるの?標準プロセスRIPSとは?全体の流れを解説!』の記事で解説していますので、下記リンクの記事を参考にしてください。
ロボットシステムを導入する際にはRIPSを採用することで、作業工程毎の状況確認ができます。最も大きなメリットはプロセス管理ができるという点。ただし、それにはしっかりしたドキュメントの作成が大前提です。
そこで、今回はRIPSのドキュメント作成について、例を示しながら詳しく解説しましょう。
これからロボットの導入を検討されている場合には、導入までのプロセス管理に役立つ情報です。ぜひ最後まで記事をご覧ください。
もくじ
RIPSのドキュメント作成は4つのフェーズに分けて考えよう!
RIPSのドキュメントを作成する際には、フェーズ毎に分けて考える必要があります。大まかなイメージは上図の通り。つまり、次の4つのフェーズです。
- 準備フェーズ
- 設計フェーズ
- 製造フェーズ
- テストフェーズ
また、それぞれのフェーズは、更に細かいプロセスに分類することができます。
ロボットシステムを構築するにあたり、各プロセス毎に合意が必要です。
なぜなら、プロセスが後になればなるほど修正は大変。受注する側と受ける側での認識違いを無くす為には、早い段階での確認と合意が必要だからです。
では、その辺りも踏まえて各プロセスにおけるRIPSのドキュメントにはどのようなものが必要なのか見ていきましょう。
準備フェーズにおけるRIPSのドキュメント作成
ロボット導入の準備フェーズは次の2つのプロセスに分けることができます。
- 引き合いプロセス
- 企画構想プロセス
手順としては、引き合いがあり、その後に企画構想段階へと移るというイメージです。では、それぞれのプロセスに分けて、必要となるRIPSのドキュメントを解説しましょう。
引き合いプロセスのRISPドキュメント
引き合いプロセスにおけるRIPSドキュメントの例としては次の3種類です。
- 提案依頼書(RFP)
- ヒアリングシート
- 提案書(構想イメージ・概算見積)
ロボットシステム導入の最初の段階なので、まずはシステムが現実的なものか否かというところから確認する必要があります。そのうえで、顧客側から提案依頼書(RFP)の提出が必要です。
RFPについては別記事で詳しく解説していますので、下記リンク記事を参考にしてください。
>>ロボット導入におけるRFP作成の流れと4つのメリットを詳しく解説!
ヒアリングシートは、
- クライアントの現状
- クライアントが解決すべき課題点
などを顧客から聞き出すためのチェックリストのようなイメージです。ヒアリングシートを元にして、提案書(構想イメージ・概算見積)を作成します。
これら3つのドキュメントは引き合いプロセスのRIPSドキュメントとして必要最低限です。
企画構想プロセスのRIPSドキュメント
企画構想プロセスにおいて必要なRIPSドキュメントは次の4つです。
- 基本契約書・秘密保持契約書
- マスタスケジュール
- 見積仕様書
- 要素技術検証報告書
契約に関するドキュメントは重要です。ただし、基本契約書・秘密保持契約書に関しては取引をする度に必要というわけではありません。以前に取引があり、同様の内容であれば契約書を交わさずに進めることも可能です。
更に、プロジェクト全体の開始から終了までの工程を示すマスタスケジュールと見積もり仕様書も必要となります。
要素技術検証報告書はロボットのハンドなどを実際に作成し、要件が実現可能か事前に検証した報告書です。要素技術検証報告書については顧客から要望されたら提出する必要はありますが、RIPSドキュメントとして必須ではありません。
設計フェーズプロセスは12種類のRIPSドキュメント
設計フェーズは以下の3つのプロセスに分類されます。
- 仕様定義プロセス
- 基本設計プロセス
- 詳細設計プロセス
そして、それぞれのプロセスに必要なRIPSドキュメントがあるので、プロセス毎に紹介しましょう。
仕様定義プロセスに必要なRIPSドキュメント
仕様定義プロセスに必要なRIPSドキュメントは以下の8種類です。
- ユーザーテスト仕様書
- プロジェクト計画書
- スケジュール(中日程)
- テスト計画書
- マニュアル素案(運用イメージ)
- 納入仕様書
- 製作仕様書
- リスクアセスメントシート(1)
上記の内、ユーザーテスト仕様書だけが顧客から提出されるものです。また、上記のドキュメントの中で「マニュアル素案」と「製作仕様書」に関しては必須ではありません。
「マニュアル素案」「製作仕様書」は「納入仕様書」として一つのドキュメントにまとめることも可能です。その辺りは臨機応変に対応してください。
基本設計プロセスに必要なRIPSドキュメント
基本設計プロセスにおいて必要なRIPSのドキュメントは次の2種類。
- 詳細スケジュール
- 総合テスト仕様書
企画構想プロセスにおいてマスタスケジュールを作成していますが、ここでは更に詳しいスケジュールを提出する必要があります。また、基本設計を終えた時点で、機械設計・電気設計に関する仕様書や図面一式も揃えておかなければなりません。
詳細設計プロセスにおけるRIPSドキュメント
詳細設計プロセスにおいて必要なRIPSのドキュメントは次の2種類です。
- 出荷前テスト仕様書
- 保守部品リスト
詳細設計プロセスでは設計が完了していることが前提なので、この時点で保守部品を含む機械部品リストのドキュメントが必要となります。
また、電気・制御部門においては、設計書のドキュメントもある程度完了していなければなりません。
製造フェーズの2プロセスで必要な3つのRIPSドキュメント
製造フェーズには次の2つのプロセスがあります。
- 製造プロセス
- 出荷前テストプロセス
ただし、製造プロセスにはRIPSのドキュメントとして必要なものはありません。
一方、出荷前テストプロセスとしては以下の3つのドキュメントが必要です。
- 出荷前テスト報告書
- 納入計画書
- リスクアセスメントシート(2)
詳細設計プロセスでは「出荷前テスト仕様書」の提出が必要となります。そして、製造フェースでは仕様書に沿った出荷前テストを行い、その報告書をRIPSのドキュメントとして提出しなければなりません。
また、納入計画書とリスクアセスメントシート(2)については必須のRIPSドキュメントではないので、顧客から提出を求められた場合のみ準備すれば問題ないでしょう。
最終プロセスはテストフェーズ!RIPSドキュメントは6種類!
ロボットシステム導入の採取プロセスはテストフェーズです。テストフェーズには次の2つのプロセスがあります。
- 総合テストプロセス
- ユーザーテストプロセス
それでは、各プロセスにおけるRIPSのドキュメント例を見ていきましょう。
総合テストプロセスにおける2種類のドキュメント
総合テストプロセスにおいて必要なRIPSのドキュメントは次の2種類となっています。
- 総合テスト報告書
- 操作マニュアル
ただし、操作マニュアルに関しては必須のドキュメントではありません。テスト終了後の完成図書として提出する場合もあるので、その辺りは顧客との連携を取りながら臨機応変に対応してください。
ユーザーテストプロセス
ユーザーテストプロセスにおいて必要なRIPSのドキュメントは次の4つです。
- ユーザーテスト報告書
- リスクアセスメントシート(3)
- 納入完了報告書
- 完成図書
上記の4種類のドキュメントの内、「納入完了報告書」についてはRIPSとして必須ではありません。
また、出荷前テストプロセスで「リスクアセスメントシート(2)」を提出しなかった場合も、ユーザーテストプロセスにおいては「リスクアセスメントシート(3)」として提出が必要です。
ユーザーテスト報告書と共にドキュメントを整理しておきましょう。
最後に
今回はRIPSで必要なドキュメントについて詳しく解説しました。もう一度記事を振り返ってみましょう。
記事内ではロボット導入の際のプロセスを下記の4つに別け、RIPSのドキュメントを一つの例として挙げています。記事内で紹介したドキュメントは下表の通り。
準備フェーズ | 提案依頼書(RFP) ヒアリングシート 提案書(構想イメージ・概算見積) 基本契約書・秘密保持契約書 マスタスケジュール 見積仕様書 要素技術検証報告書 |
設計フェーズ | ユーザーテスト仕様書 プロジェクト計画書 スケジュール(中日程) テスト計画書 マニュアル素案(運用イメージ) 納入仕様書 製作仕様書 リスクアセスメントシート(1) 詳細スケジュール 総合テスト仕様書 出荷前テスト仕様書 保守部品リスト |
製造フェーズ | 出荷前テスト報告書 納入計画書 リスクアセスメントシート(2) |
テストフェーズ | 総合テスト報告書 操作マニュアル ユーザーテスト報告書 リスクアセスメントシート(3) 納入完了報告書 完成図書 |
合計すると、30種類弱のドキュメントが必要です。一度に準備することは難しいので、各プロセスの段階を経て作成していきましょう。
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