ABBの「My Measurement Assistant+」がGenAIで大幅強化——Genix Copilot×Microsoft Foundryで産業機器保守を多言語・予兆型へ

ABBの「My Measurement Assistant+」がGenAIで大幅強化——Genix Copilot×Microsoft Foundryで産業機器保守を多言語・予兆型へ
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現場のベテランに頼らない保守へ——産業機器の「生成AI窓口」が成熟期に入った

Hannover Messe 2026(4月20〜24日・ドイツ)で、ABBは旗艦の産業機器向けデジタルソリューション「My Measurement Assistant+」を生成AI(GenAI)で大幅に強化したバージョンを発表しました。デモ会場はMicrosoftブース(ホール17・スタンドG06)内で、ABB Genix Copilotを軸に、条件監視・動的QRコード・予兆保全までを1つのアシスタントで提供する姿が披露されています。

現場の計装・計測機器は、メーカーも型番も世代もバラバラで、「トラブル発生時はベテランの記憶に頼る」運用が長らく常態化してきました。ABBが今回示したのは、その状況を「生成AIアシスタント+機器メタデータ+Copilot基盤」で組み直す取り組みです。

My Measurement Assistant+とは

My Measurement Assistant+は、ABBの計測機器(流量計、圧力計、温度計、分析計など)で発生するよくある技術的課題を迅速に解決するためのデジタルアシスタントです。機器固有の情報を前提に、具体的で実行可能なアドバイスを返すことに特化しています。化学・電力・鉱業・上下水道といった、24時間連続運転が前提のプロセス産業を主な対象としています。

今回のアップデート——GenAI多言語対応・予兆保全・条件監視

2026年4月の発表で強化されたのは、次の3点です。

機能内容
多言語GenAIサポート英語に加えて、スペイン語・ドイツ語・イタリア語・フランス語・中国語・ポルトガル語に対応。現場オペレーターが母国語でリアルタイム会話可能に
条件監視(Condition Monitoring)の拡充機器単体ではなく、プラント内のフリートとしての挙動を可視化。異常傾向の早期検知が可能
動的QRコード連携機器に貼られたQRコードがリアルタイム情報と紐づき、スマホから機器固有の診断情報にアクセス
予兆保全(Prescriptive Maintenance)単なる「壊れそう」の通知ではなく、「何をどういう順序で実施すべきか」の処方箋まで提示

背後で動く「Genix Copilot」とMicrosoft Foundryの連携

My Measurement Assistant+の背後で動いているのが、ABBが提供するGenAIソリューション「ABB Genix™ Copilot」です。Genix Copilotは、Microsoft Foundry(Microsoftの企業向け生成AI基盤)上で動作し、ABBが長年蓄積してきた産業データとドメイン知識をAIに文脈として取り込むことで、汎用LLMでは出せない精度の産業ドメイン回答を返します。

さらに注目すべきは、My Measurement Assistant+とGenix Copilotが、ABBの主力フリート監視プラットフォーム「Genix Datalyzer」(排ガスモニタリング等のライブデータ基盤)とも統合されている点です。ライブデータに対してCopilotが直接分析・回答・予兆判断を行うため、現場オペレーターはベテランに頼らずとも、ABBのデジタルシステムに「自然言語で聞いて」操作できるようになります。

現場で何が変わるのか——3つのシーン

実際の現場ではどのように使われるのか、代表的なシーンを3つ挙げます。

  1. トラブル発生時: オペレーターが機器のQRコードをスマホで読み取る → 機器状態とメンテ履歴を引いたCopilotが、「このアラームは前回X月Y日と同じ原因の可能性。まず上流のZを確認」と処方箋を返す
  2. 新人教育: 新人が自国語で「この計器は何のためにあるか、異常時の基本対応は?」と質問 → Copilotが機器固有の説明を返す
  3. 保守計画策定: ライブデータ+過去履歴を踏まえて、Copilotが「今月は3-2系統のセンサーXを点検することを推奨」と保守計画に反映

日本の製造業・装置メーカーへの示唆

第一に、「機器メーカー自身が提供するCopilot」という潮流が本格化します。ABBは自社機器に対する生成AIアシスタントを、自社の責任で、自社の技術データを使って構築しました。これは、装置メーカーが「装置そのもの」だけでなく「装置の使いこなしサポート」までを一体で提供する時代に入ったことを示します。日本の装置メーカーも、自社機器データを文脈に取り込んだ専用Copilotを持つかどうかが、中長期の競争軸になります。

第二に、多言語GenAIの威力を軽視すべきではありません。海外拠点を持つ日系装置メーカーにとって、英語のマニュアルを現地オペレーターに押し付けるモデルは限界を迎えています。ABBが7言語対応を標準装備したことは、顧客側の選定基準を押し上げます。

第三に、「予兆保全」と「処方箋提示」のセット化が当たり前になります。単に「異常が発生しました」だけではなく、「次に何をすべきか」まで返すAIアシスタントを、顧客は機器選定時に当然のように求めるようになります。

まとめ

ABBのMy Measurement Assistant+アップデートは、単一機能のバージョンアップではなく、「産業機器メーカーが生成AIでサービス提供のあり方を再定義する」典型例です。Genix Copilot × Microsoft Foundryという基盤の上で、多言語対応・条件監視・予兆保全・動的QRを束ねた体験は、日本の装置メーカーにとって「自社はこのレベルを次の3年で提供できるか」を問う重要なリファレンスとなります。

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出典

  • Manufacturing Tomorrow「ABB enhances AI capabilities of flagship industrial device digital solutions」(2026年4月17日)
  • ABB News「ABB simplifies industrial device maintenance with Generative AI」
  • Chemical Industry Digest「ABB Integrates GenAI into My Measurement Assistant+ for Smarter Operations」
  • NVIDIA Blog「ABB Robotics Taps NVIDIA Omniverse to Deliver Industrial-Grade Physical AI at Scale」
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