製造業の基礎知識設計OSとPLMの違い——なぜ既存PLMでは設計者の業務が変わらなかったのか
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もくじ
「30 ±0.1」「φ20 H7」——機械図面に並ぶこうした表記が、寸法公差とはめあいです。結論から言えば、寸法公差は「部品の寸法をどこまでばらつかせてよいか」を決めた幅、はめあいは「軸と穴をどう組み合わせるか(すきま/しめしろ)」を指定する仕組みです。どちらも図面を正しく読み、図面どおりに作って組むための共通言語になります。
公差を理解せずに厳しくしすぎると加工コストが膨らみ、緩すぎると組み立てや動作で不具合が出ます。本記事では、寸法公差とはめあいの基本用語、3種類のはめあい、図面記号(H7・g6など)の読み方、そして公差の決め方とコストの関係までを図解で整理します。前提とする規格はJIS B 0401(ISO 286)「寸法公差及びはめあいの方式」です。
寸法公差とは、図面で指定した基準寸法に対して、製造上許される寸法のばらつきの幅のことです。部品をまったく同じ寸法に作ることは現実には不可能で、加工には必ずばらつきが生じます。そこで「この範囲内なら合格」とあらかじめ決めておくのが寸法公差です。
「30 ±0.1」を例にすると、基準寸法は30mm、上の許容差は+0.1、下の許容差は−0.1です。最大許容寸法は30.1mm、最小許容寸法は29.9mm、そして公差はその差である0.2mmになります。つまり、29.9mm〜30.1mmの間に入っていれば合格、という意味です。
混同しやすいのが「公差」と「許容差」です。許容差は基準寸法からのズレ(+0.1や−0.1のような片側の値)を指し、公差はその上下の幅(0.2のような全体の大きさ)を指します。図面で「±0.1」と書かれていれば許容差を、「公差0.2」と言えば幅そのものを表していると覚えると整理しやすくなります。
なお、公差と並んで図面を読むときの基礎になるのが、材料が力を受けてどう変形するかという特性です。寸法を決める前提として、こちらも押さえておくと設計の判断がつながります。
弾性変形とは、力を取り除くと元の形状に戻る変形のことです。一方塑性変形とは、力を取り除いても元に戻らない変形を指します。
弾性変形と塑性変形の違いとは|応力ひずみ線図・降伏点・0.2%耐力・許容応力の決め方
はめあいとは、軸と穴のように組み合わせる2つの部品の、寸法公差どうしの関係のことです。同じ基準寸法でも、軸と穴それぞれの公差域をどこに置くかによって、組み合わせたときに「すきま」ができるか「しめしろ(締め代)」ができるかが変わります。この関係で、はめあいは大きく3種類に分かれます。
すきまばめは、穴が軸より必ず大きくなるように公差域を設定し、組み合わせると必ずすきまができるはめあいです。回転部や摺動部など、動かす必要がある部位に使います。しまりばめは逆に、軸が穴より大きくなるよう設定し、必ずしめしろができます。圧入や焼きばめで固定する部位向けです。中間ばめは両者の中間で、部品の実寸法によってすきまにもしめしろにもなり得ます。位置決めが必要で、かつ着脱もしたい部位に使われます。
| はめあいの種類 | 軸と穴の関係 | 組み合わせた状態 | 代表的な用途 |
|---|---|---|---|
| すきまばめ | 穴 > 軸 | 必ずすきまができる | 回転軸・摺動部・軸受まわり |
| 中間ばめ | 公差域が一部重なる | すきま/しめしろどちらにもなり得る | 位置決めピン・着脱する部品 |
| しまりばめ | 軸 > 穴 | 必ずしめしろができる | 圧入・焼きばめによる固定部 |
ここで重要なのは、はめあいは「軸と穴のどちらかだけ」では決まらないという点です。両方の公差をセットで指定して初めて、すきまかしめしろかが定まります。図面で軸側だけ、穴側だけを見て判断すると、組み立て段階で「入らない」「ゆるい」といったトラブルにつながります。
そして、公差やはめあいを図面に書いても、合否を判定する基準が人によってばらつくと、同じ寸法指定でも現場での判断が揃いません。これはツールを入れれば自動的に解決する問題ではない、という指摘もあります。
ERPは「お金とモノの記録台帳」、PLMは「図面とBOMの保管庫」であって、業務そのものを実行する仕組みではない。
同じ図面なのに検査員によって合否が変わる——品質判定のばらつきが生むコストと、検査基準を品質OSにそろえる順番
図面では、はめあいを「φ20 H7/g6」のようにアルファベットと数字の組み合わせで指定します。結論から言うと、数字は公差の大きさ(精度の等級)、アルファベットは公差域の位置を表します。
数字はIT基本公差等級と呼ばれ、IT01からIT18まであります。数字が小さいほど公差が狭く(高精度)、大きいほど広く(粗い)なります。一般的な機械部品のはめあいでは、IT5〜IT10程度がよく使われます。アルファベットは公差域の位置で、穴は大文字(A〜ZC)、軸は小文字(a〜zc)で表します。とくに大文字のHは「下の許容差がゼロの穴」、小文字のhは「上の許容差がゼロの軸」を意味し、はめあいの基準として使われます。
はめあいの指定方法には、穴の公差を基準に固定して軸側で調整する「穴基準はめあい(H基準)」と、軸を基準にする「軸基準はめあい(h基準)」があります。実務では穴基準が主流です。穴は内側を加工・測定するため軸より作りにくく、リーマなどで規格寸法(H7など)に仕上げやすい側を基準に固定したほうが、工具や測定具を共通化しやすいためです。たとえば穴基準なら、φ20H7/g6はすきまばめ、H7/k6は中間ばめ、H7/p6はしまりばめ、というように軸の記号を変えて使い分けます。
公差を決めるときの結論はシンプルで、必要な機能(はまり方・動き・位置精度・互換性)から逆算して、必要十分な値を選ぶことです。公差を狭くすれば品質は安定しますが、研削やホーニングといった追加工程、全数測定などが必要になり、加工・検査コストが跳ね上がります。逆に広すぎると、組み立てや動作で問題が出ます。
すべての寸法に個別の公差を書くわけではありません。とくに指定がない一般寸法には、図面の隅に書かれた「普通公差(JIS B 0405、例:中級)」がまとめて適用されます。機能上きびしさが必要な箇所だけ個別に公差を指定し、それ以外は普通公差に任せるのが効率的な書き方です。
陥りやすいのが「迷ったら厳しくしておけば安心」という発想です。これは強度設計における安全率でも同じ罠として知られています。
「迷ったら大きめに取っておけば安全」と考えてしまいがちですが、これは正確ではありません。
安全率(安全係数)とは|決め方・計算式・材料別の目安と許容応力の関係
公差も同じで、不必要に厳しくすることは「安全」ではなくコストの増加を意味します。なぜその公差にしたのかという根拠(機能要件)をセットで残しておくことが、過剰品質と品質不足のどちらも避ける近道です。設計・調達・品質の判断を業務基盤としてそろえる「業務OS」の考え方は、こうした判断の根拠を組織に残すアプローチとして整理できます(設計OSとは——図面・部品表・設計変更を一気通貫させる業務エージェント基盤)。
次の5項目のうち、自信を持って「はい」と言えるのはいくつあるでしょうか。3つ以上「いいえ」がつく場合、公差・はめあいの判断が個人の経験に依存している可能性があります。
寸法公差は1つの寸法に対して許されるばらつきの幅です。一方はめあいは、軸と穴のように組み合わせる2部品の公差どうしの関係を指し、すきま・しめしろの程度を決めます。公差は単独の寸法、はめあいは部品どうしの組み合わせ、という違いです。
アルファベット(H)は公差域の位置を、数字(7)は公差の大きさを表すIT基本公差等級です。大文字は穴、小文字は軸を示し、数字が小さいほど高精度になります。H7は「下の許容差がゼロの穴で、等級7の精度」という意味です。
いいえ。公差を狭くするほど加工・測定コストが上がります。必要な機能を満たす範囲で、できるだけ緩い公差にするのが基本です。機能上きびしさが必要な箇所だけ個別に指定し、それ以外は普通公差に任せるのが効率的です。
普通公差とは、図面に個別の公差指定がない一般寸法に一括で適用される公差です(JIS B 0405)。精級・中級・粗級などの等級があり、図面の表題欄付近に「普通公差 中級」のように記載されます。すべての寸法に個別公差を書く手間を省くための仕組みです。
公差やはめあいの選び方が一部の担当者の頭の中にしかないと、図面ごとに精度のばらつきや過剰品質が生まれます。どの業務から判断基準を整理すべきかを言語化するところから始めるのが近道です。設計・調達・品質の論点を棚卸しする無料の業務診断をご利用いただけます。
出典:JIS B 0401(製品の幾何特性仕様(GPS)—長さに関わるサイズ公差のISOコード方式/ISO 286に整合)、JIS B 0405(普通公差—個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差)ほか、一般的な機械設計の標準規格に基づく。本記事の数値(30±0.1、H7/g6など)はいずれも説明用の一例であり、実際の設計では適用規格と機能要件に基づいて個別に決定してください。
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