溶接記号とは?基本記号の種類一覧と図面の読み方・書き方を図解で解説【2026年版】

図面の隅に描かれた矢印と小さな三角形。この「溶接記号」が読めないと、どこを・どちら側から・どれだけ溶接するのかを図面から正確に読み取れません。溶接記号とは、溶接の種類・位置・寸法を図面上で指示するための記号のことで、日本ではJIS Z 3021(溶接記号)に規定されています。
本記事では、溶接記号の基本構成(矢・基線・尾)、基線の上下で溶接する側が変わる読み方のルール、すみ肉溶接・開先溶接など基本記号の種類一覧、サイズ(脚長)や溶接長さの書き方までを図解で整理します。設計・製造・検査のどの立場でも、図面を挟んだやり取りの土台になる知識です。
この記事の要点
- 溶接記号とは、溶接の種類・位置・寸法を図面で指示する記号のこと。JIS Z 3021に規定されている。
- 記号は「矢」「基線」「基本記号」「寸法」「尾」で構成され、矢は溶接する継手を指す。
- 基線の下側に基本記号を書くと「矢の側」を、上側に書くと「矢の反対側」を溶接する。
- すみ肉溶接のサイズ(脚長)は記号の左側に、溶接長さやピッチは記号の右側に書く。
- 全周溶接は丸、現場溶接は旗の補助記号で表し、基本記号と組み合わせて使う。
溶接記号とは?
溶接記号とは、溶接継手の種類(どんな形状の溶接か)、溶接する側、サイズや長さといった施工条件を、図面上で簡潔に指示するための記号です。日本産業規格ではJIS Z 3021(溶接記号)が定めており、国際規格ISO 2553をもとにしています。
記号が必要な理由は、溶接の指示を言葉で書くと長くなり、読み手によって解釈がぶれるからです。「この隅を脚長6mmで全長にわたり溶接する」という指示は、記号なら矢と三角形と数字だけで一義的に伝わります。溶接部は完成後に内部を確認しにくく、指示の曖昧さが強度不足や過剰な施工に直結するため、誰が読んでも同じ意味になる記号が共通言語として使われています。
この「図面の共通言語」という性格は、寸法公差の記事で整理した考え方と同じです。
どちらも図面を正しく読み、図面どおりに作って組むための共通言語になります。
寸法公差・はめあいとは|種類・記号・図面の読み方と選び方を図解で解説【2026年版】
溶接記号の基本構成——矢・基線・尾はどう読む?
溶接記号は、継手を指す「矢」、記号を載せる水平な「基線」、補足を書く「尾」の3つの骨組みに、溶接の種類を表す「基本記号」と「寸法」を組み合わせて構成します。読む順番は、まず矢がどの継手を指しているかを確認し、次に基線の上下どちらに基本記号があるかを見る、の2段階です。
読み方の最重要ルールが基線の上下です。基本記号を基線の下側に書いた場合は「矢の側」(矢が指している側)を溶接し、上側に書いた場合は「矢の反対側」を溶接します。上下両方に記号があれば両側溶接の指示です。
尾には溶接方法や非破壊検査の指定など、記号だけでは表せない補足事項を書きます。補足がなければ尾ごと省略できます。また、レ形やJ形のように開先を取る部材が片方に決まっている継手では、矢を折って開先を取る側の部材を指し示します。
基本記号にはどんな種類がある?
基本記号は、溶接部の断面形状を図案化したものです。開先(溶け込みを確保するために部材の端に設ける溝)の形ごとに記号が決まっています。実務で登場する頻度が高いものを下表にまとめます。
| 名称 | 記号の形 | 主な用途 |
|---|---|---|
| すみ肉溶接 | 直角三角形 | T継手・重ね継手の隅を溶接する。最も使用頻度が高い |
| I形開先 | 平行な2本の縦線 | 薄板の突合せ継手。開先加工なしで突き合わせる |
| V形開先 | V字 | 中厚板の突合せ継手。両部材の端を斜めに開先加工 |
| レ形開先 | 片側だけ斜めのV字 | 片方の部材のみ開先を取る突合せ・T継手 |
| X形開先 | X字(V形の上下対称) | 厚板の突合せ継手。表裏の両面から溶接する |
| U形開先 | U字 | 厚板の突合せ継手。溶着量を抑えたい場合 |
| スポット溶接 | 丸 | 重ねた板を点で接合する抵抗溶接など |
記号の全一覧と細かい表し方はJIS Z 3021に規定されています。上表は頻出の代表例と考えてください。
補助記号——全周溶接と現場溶接はどう表す?
補助記号は基本記号に添えて使う記号です。代表的なものを挙げます。
| 補助記号 | 形 | 意味 |
|---|---|---|
| 全周溶接 | 矢と基線の交点に描く丸 | 継手の全周にわたって溶接する |
| 現場溶接 | 矢と基線の交点に描く旗 | 工場ではなく据付け現場で溶接する |
| 仕上げ方法 | C・G・M・Pの文字 | チッピング(C)・グラインダ(G)・切削(M)・研磨(P)で表面を仕上げる |
全周溶接と現場溶接は併用できます。丸と旗を重ねて描けば「現場で全周を溶接する」という指示になります。
すみ肉溶接のサイズと長さはどこに書く?
すみ肉溶接では、サイズ(脚長)を基本記号の左側に、溶接長さ・本数・ピッチを記号の右側に書きます。図面で三角形の左に「6」とあれば、脚長6mmのすみ肉溶接の指示です。
脚長とは、すみ肉溶接の断面で継手のルート(付け根)から溶接の止端までの長さのことです。強度の計算は、脚長から求まる有効断面の厚さ「のど厚」で行います。つまり脚長の指定は、継手の強度と溶接量(=工数・コスト・熱ひずみ)を同時に決める数字です。
連続ではなく間隔を空けて溶接する「断続すみ肉溶接」では、1カ所あたりの溶接長さと本数、ピッチ(溶接部の間隔)を記号の右側に書きます。両側を互い違いに配置する千鳥断続すみ肉溶接という指示もあります。表記の細部はJIS Z 3021の例示に従ってください。
▶ 図面の指示や判定が「人によってぶれる」と感じたら:どの業務のどの判断が個人の経験に依存しているかを切り分ける無料の業務診断で棚卸しできます。
記号は正しいのに現場に伝わらないのはなぜ?
溶接記号そのものはJISで決まっていても、実務のつまずきは記号の外側で起きます。典型例は、脚長やピッチの指定が「前の図面のコピー」で引き継がれ、なぜその値なのかを誰も説明できなくなるケースです。必要以上に大きい脚長は溶接量と熱ひずみを増やし、コストにも品質にも跳ね返ります。
業務OSの記事で指摘した構造が、溶接指示にもそのまま当てはまります。
経験者の頭の中だけにフローがあり、退職や異動でブラックボックス化します。
業務OSとは何か——製造業ERPでもPLMでもない、第3の業務基盤の正体
もう1つのつまずきは、図面の指示と検査の判定が連動していないことです。脚長・余盛・アンダーカットをどこまで許容するかの基準が検査員ごとに違えば、同じ溶接部でも合否が変わります。
判定差は「やる気」や「経験年数」だけの問題ではなく、判断に使う情報がそろっていないことから生まれる構造的な現象です。
同じ図面なのに検査員によって合否が変わる——品質判定のばらつきが生むコストと、検査基準を品質OSにそろえる順番
溶接記号を「読める」ことはスタートラインです。脚長の根拠や判定基準を組織でそろえて初めて、図面が共通言語として機能します。指示の根拠が特定の人の頭の中にしかないなら、それは記号の知識の問題ではなく、情報の設計の問題です。
FAQ(よくある質問)
基線の上下に同じ記号があるときはどう読みますか?
両側溶接の指示です。たとえば基線の上下両方にすみ肉の三角形があれば、矢の側と反対側の両方にすみ肉溶接をします。上下でサイズが異なる場合は、それぞれの記号に脚長を書き分けます。
矢はどこに向ければよいですか?
溶接する継手(溶接線)を指します。矢の角度や長さそのものに意味はなく、どの継手の指示かを特定するのが役割です。ただしレ形・J形など開先を取る部材を区別したい場合は、矢を折ってその部材を指します。
溶接記号はどの規格を参照すればよいですか?
日本国内の図面ではJIS Z 3021(溶接記号)が基本です。用語はJIS Z 3001(溶接用語)に定義があります。海外顧客の図面ではISO 2553やAWS A2.4など別の体系が使われる場合があるため、図面の適用規格欄を必ず確認してください。
まとめ——溶接記号は「読む」だけでなく「そろえる」まで
溶接記号は、矢・基線・基本記号・寸法・尾の組み合わせで「どこを・どちら側から・どれだけ溶接するか」を一義的に伝える図面の共通言語です。読み方の核心は、基線の下側=矢の側・上側=反対側というルールと、サイズは左・長さは右という寸法の配置に集約されます。まずは自社の図面のすみ肉指示を1枚、この記事の図と見比べながら読み解いてみてください。
そのうえで、脚長の根拠や検査基準が「人に聞かないと分からない」状態になっていないかが次の論点です。図面・基準・記録のどこが個人依存になっているかを切り分けたい方は、無料の業務診断からご相談ください。
次に読みたい関連記事
- 寸法公差・はめあいとは|種類・記号・図面の読み方と選び方を図解で解説【2026年版】
- 安全率(安全係数)とは|決め方・計算式・材料別の目安と許容応力の関係を図解で解説【2026年版】
- 同じ図面なのに検査員によって合否が変わる——品質判定のばらつきが生むコストと、検査基準を品質OSにそろえる順番
出典
- JIS Z 3021(溶接記号)/JIS Z 3001(溶接用語)— 規格本文は日本産業標準調査会(JISC)のJIS検索で閲覧できます。
- 本文中の記号の説明は、JIS Z 3021の一般原則に基づく編集部の要約です。個別の製品設計への適用は必ず規格本文と社内基準を確認してください。










