三相モーター(三相誘導電動機)とは?仕組み・すべり・極数別の回転数と選び方を図解で解説【2026年最新】

三相モーター(三相誘導電動機)とは?仕組み・すべり・極数別の回転数と選び方を図解で解説【2026年最新】
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この記事の要点

  • 三相誘導電動機(三相モーター)とは、三相交流でつくる「回転磁界」によって回転子を回す、産業用でもっとも普及しているモーターです。
  • 回転子は回転磁界よりわずかに遅く回り、その速度差(すべり)があるからトルク(回転力)が生まれます。
  • 回転の基準となる同期速度は「Ns=120×周波数÷極数」で決まり、実際の回転数はここからすべり分だけ低くなります。
  • 回転子の構造でかご形(堅牢・安価・主流)と巻線形(始動トルク調整向き)に分かれます。
  • 選定は極数(回転数)・出力(kW)・電源(50/60Hz)・効率(IEクラス)・始動方式の5点で見るのが基本です。

工場の搬送コンベヤ、ポンプ、ファン、コンプレッサ——動力源をたどると、その多くが三相誘導電動機(三相モーター)です。結論から言うと、三相誘導電動機は「三相交流がつくる回転磁界に、回転子が引きずられて回る」という単純な原理で動く、産業用の標準モーターです。この記事では、仕組み・同期速度とすべり・極数別の回転数早見表・かご形と巻線形の違い・サーボや同期モータとの使い分け・選び方の5ステップを、図解と早見表で整理します(2026年8月時点)。

三相誘導電動機(三相モーター)とは?

三相誘導電動機とは、三相交流を固定子コイルに流して「回転磁界」を発生させ、その磁界が回転子に電流を誘導することで回転力を得るモーターです。回転子に電源を直接つながず、磁界の作用で電流を「誘導」して回すことから誘導電動機(インダクションモーター)と呼ばれます。ブラシや整流子のような接触部品がなく構造が堅牢で、安価・メンテナンスが少ないという理由から、工場の動力用途で広く使われています。

「三相」とは、位相が120度ずつずれた3つの交流(U相・V相・W相)のことです。この三相を固定子の各コイルに流すと、合成された磁界が円を描くように回り続けます。これが回転磁界で、三相誘導電動機が始動用の補助部品なしでスムーズに回り出せる理由です。

三相誘導電動機の仕組みは?回転磁界と「すべり」

三相誘導電動機の仕組みは、「回転磁界」と「すべり」の2語で説明できます。固定子の三相コイルが回転磁界をつくり、その磁界が回転子の導体(かご形なら棒状の導体バー)に電流を誘導します。誘導された電流と磁界の間に力(トルク)が働き、回転子が磁界を追いかけるように回り始めます。

三相誘導電動機の構造(固定子・回転子)と回転磁界・すべりの関係を示した模式図
図1:固定子の三相コイルが回転磁界をつくり、回転子はそれよりわずかに遅く回る(すべり)。〔参考図・模式図〕

同期速度とすべりとは?

同期速度とは、回転磁界そのものが回る速度のことで、「Ns=120×電源周波数(Hz)÷極数」で計算できます。一方、回転子は同期速度ぴったりでは回れません。なぜなら、回転子と磁界の速度が完全に一致すると電流が誘導されず、トルクが消えてしまうからです。そのため回転子は同期速度よりわずかに遅く回り、この速度差を「すべり」と呼びます。すべり s は「s=(Ns−N)÷Ns」で表し、定格運転時はおおむね数%程度が目安です。

極数と電源周波数50Hz60Hzごとの三相誘導電動機の同期速度を比較した棒グラフ
図2:同期速度は極数と周波数で決まる。同じ4極でも50Hz地域は1500min⁻¹、60Hz地域は1800min⁻¹になる。

ここで重要なのは、同じモーターでも電源周波数が違えば回転数が変わるという点です。東日本(50Hz)と西日本(60Hz)で同じ4極モーターを使うと、回転数が約2割変わります。設備を移設・増設するときに見落としやすいポイントです。

極数別の回転数はどれくらい?(早見表)

結論として、極数が増えるほど回転数は下がります。同期速度は「Ns=120×周波数÷極数」で一意に決まるため、下表の値は計算で求まる基準値です。実際の回転数は、ここからすべりの分だけ低くなります。

極数同期速度(50Hz)同期速度(60Hz)実回転数の目安(すべり約3%のとき)
2極毎分3,000回転毎分3,600回転約2,910/約3,490回転
4極毎分1,500回転毎分1,800回転約1,455/約1,746回転
6極毎分1,000回転毎分1,200回転約970/約1,164回転
8極毎分750回転毎分900回転約728/約873回転
表1:同期速度は Ns=120×周波数÷極数 で計算した値。実回転数の欄はすべり3%を当てた編集部の概算で、実機のすべりは負荷や機種で変わります。

インバータとは、モーターに供給する交流電源の周波数を変えることで、モーターの回転数を無段階に制御する装置を指します。

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つまり、三相誘導電動機の回転数を変えたいときは、電源周波数を変えるインバータ(VVVF)を組み合わせるのが定石です。電源に直結(直入れ)すると回転数は固定ですが、インバータを使えば搬送速度やポンプ流量を用途に合わせて調整でき、省エネにもつながります。

かご形と巻線形は何が違う?

三相誘導電動機は回転子の構造で「かご形」と「巻線形」に分かれます。現場で目にするほとんどはかご形で、堅牢・安価・メンテナンスが少ないのが特長です。巻線形は外部抵抗で始動特性を調整できるため、大きな始動トルクが必要な用途や、始動電流を抑えたい大容量機で使われます。

項目かご形誘導電動機巻線形誘導電動機
回転子構造導体バーを短絡したかご状コイルを巻きスリップリングで外部接続
価格・保守安価・保守が少ないやや高価・スリップリング保守が必要
始動トルク調整不可(構造で決まる)外部抵抗で調整可能
主な用途コンベヤ・ファン・ポンプなど一般動力大始動トルク・大容量の用途

サーボモータ・同期モータとの違いは?

三相誘導電動機は「一定速度で連続的に回し続ける動力源」が得意分野です。一方、止める位置を正確に決めたい(位置決め)用途には、サーボモータや同期モータが向きます。役割が違うため、優劣ではなく用途で選ぶのが正解です。

種類得意なこと位置決め精度代表用途
三相誘導電動機連続回転・動力源低い(速度制御向き)コンベヤ・ポンプ・ファン
サーボモータ高精度な位置・速度制御高い位置決め・組立・加工軸
同期モータすべりなしの一定速度中〜高定速搬送・高効率動力

サーボは位置決め、インバータは速度制御、ソフトスタータは起動緩和と、役割が明確に違う。

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選び方はどこを見ればいい?

三相誘導電動機の選定は、次の5点を順に確認すると迷いません。①極数(必要な回転数。図2の同期速度を目安に)、②出力(負荷に必要なkW)、③電源(電圧と周波数50/60Hz)、④効率クラス(IE3・IE4などの高効率機は省エネ法のトップランナー制度に対応)、⑤始動方式(直入れ・スターデルタ・インバータ)。この順で詰めれば、カタログ選定で大きく外すことはありません。

三相モーター選定の5ステップ 上から順に決めると、カタログ選定で大きく外さない 1 極数を決める 必要な回転数から。4極50Hzで毎分1500回転が基準 2 出力(kW)を決める 負荷に必要な動力に余裕を見て選ぶ 3 電源を確認する 電圧と周波数。50/60Hzで回転数が約2割変わる 4 効率クラスを選ぶ IE3・IE4などの高効率機を前提に検討する 5 始動方式を決める 直入れ/スターデルタ/インバータから選ぶ
図3:三相モーター選定の5ステップ。上から順に決めると、カタログ選定で大きく外さない。〔編集部作成の概念図〕

ただし、現場でよく起きるのは「選び方」ではなく「選んだ根拠が残らない」問題です。なぜこの極数・このIEクラスにしたのか、電源周波数や始動方式の前提は何だったのか——その判断が担当者の頭の中だけにあると、更新・増設のたびに当時を知る人を探すことになります。これはモーターに限らず、設備の判断材料をどう残すかという業務基盤の問題です。

引き継ぐべき情報をデータモデルとして握るかどうかは、属人化への姿勢の問題ではなく、業務基盤の設計判断です。

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よくある質問(FAQ)

三相誘導電動機と単相モーターはどう違う?

三相誘導電動機は三相交流で回転磁界を自然につくれるため、補助部品なしで始動でき効率も高めです。単相モーターは家庭用電源(単相)で動きますが、始動にコンデンサなどの補助が必要で、同出力なら三相の方が小型・高効率になりやすい傾向があります。工場の動力は三相が標準です。

回転数を変えるにはどうすればいい?

もっとも一般的なのはインバータ(VVVF)で電源周波数を変える方法です。極数は製造時に決まり後から変えられないため、運転中に回転数を可変にしたい場合はインバータを組み合わせます。流量・搬送速度の調整や省エネ目的で広く使われます。

すべりが大きいと何が問題になる?

すべりは回転力を生むために必要ですが、過負荷などで過大になると回転子に流れる電流が増え、発熱・効率低下の原因になります。定格運転時のすべりはおおむね数%程度が目安で、これを大きく超えて運転が続く場合は負荷や選定の見直しサインと考えられます。

三相モーターの回転数はどう計算する?

まず同期速度を「Ns=120×電源周波数(Hz)÷極数」で求め、そこからすべり分を差し引くのが基本です。たとえば4極・60Hzなら同期速度は毎分1,800回転で、すべりが3%なら実回転数は毎分約1,746回転になります。極数別の基準値は本記事の表1にまとめています。

IE3・IE4とは何を表す区分?

IEは電動機の効率クラスを示す国際的な区分で、数字が大きいほど高効率を意味します(IE3=プレミアム効率、IE4=スーパープレミアム効率)。日本では省エネ法のトップランナー制度で三相誘導電動機が対象機器となっており、更新・新設ではこの効率クラスを前提に検討するのが一般的です。適用範囲や対象外となる機種があるため、具体的な要否は各メーカーの技術資料と最新の制度資料で確認してください。

まとめと次のアクション

三相誘導電動機は、回転磁界とすべりという単純な原理で動く、産業用の標準モーターです。同期速度(Ns=120×f÷極数)を基準に、極数・出力・電源・効率・始動方式の5点で選べば大きく外しません。回転数を可変にしたいならインバータ、正確な位置決めならサーボと、用途で組み合わせを決めるのが実務の勘所です。そして選定の根拠を「人」ではなく業務基盤に残すことが、更新・増設をスムーズにする次の一手になります。

自己診断:モーター選定の根拠は残っていますか?

  • 既設モーターの極数・出力・効率クラスを、図面や台帳から5分以内に確認できる
  • 「なぜこの極数・この始動方式にしたか」の判断理由が、担当者以外にも追える形で残っている
  • 電源周波数(50/60Hz)の前提が、設備移設の検討資料に明記されている
  • インバータの有無と設定値が、保全記録とひも付いて管理されている
  • 更新・増設のとき、当時の選定担当者を探さなくても仕様を決められる

チェックが3つ以下なら、モーター単体の知識ではなく、選定の判断材料をどこに残すかという業務基盤の設計が次の論点になります。

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出典:同期速度・すべりの計算式(Ns=120×f÷極数、s=(Ns−N)÷Ns)はJIS C 4034(回転電気機械)系規格および各モーターメーカー技術資料に基づく一般原則。効率クラス(IE3・IE4等)は国際規格 IEC 60034-30-1 系の効率クラス区分および省エネ法トップランナー制度の一般的枠組みに基づく。表1の同期速度は計算値、実回転数の欄はすべり3%を当てた編集部の概算。図3は編集部作成の概念図。本記事の数値は一般的な目安であり、具体的な仕様は各製品のカタログ・技術資料をご確認ください。

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