製造業の基礎知識サーボモータとステッピングモータの違いとは|位置決め精度・脱調・選び方を図解で解説【2026年版】

工場の換気ファンの回転数を変えるのがインバータなら、ロボットアームやXYステージを「狙った位置でぴたりと止める」ために使うのが、サーボモータとステッピングモータです。どちらもパルス指令で動かせる位置決め用のモータですが、最大の違いは「動いた結果を自分で確認する仕組み(フィードバック)を持つかどうか」にあります。この記事では、両者の制御方式・脱調・トルク特性・選び方を、現場で選定を外さない粒度で図解します。
もくじ
この記事の要点
- サーボモータとステッピングモータは、どちらも位置決めに使うモータだが、フィードバックの有無で性格が大きく違う。
- ステッピングモータはパルス数で位置を指定するオープンループ制御。構成がシンプルで低コストだが、負荷が過大だと「脱調」して位置がずれる。
- サーボモータはエンコーダで実際の回転を検出するクローズドループ制御。脱調せず高速・高精度・負荷変動に強いが、構成は複雑でコストは高め。
- 低速・短ストローク・一定負荷ならステッピング、高速・高精度・負荷変動が大きいならサーボ、が基本の使い分け。
- 出典はオリエンタルモーター技術資料ほか(記事末に明記)。
サーボモータとステッピングモータの違いとは?
サーボモータとステッピングモータの最大の違いは、位置を「指令したパルス数で決める(オープンループ)」か、「エンコーダで実際の位置を測りながら補正する(クローズドループ)」かです。前者は構成がシンプルで安価、後者は脱調せず高精度、という性格の差がここから生まれます。
ステッピングモータとは、入力したパルス信号1つにつき決まった角度(ステップ角)だけ回転するモータです。サーボモータとは、エンコーダなどの検出器で回転位置を常に監視し、指令値との差をなくすように追従させる(サーボ=追従する)モータを指します。
| 観点 | ステッピングモータ | サーボモータ |
|---|---|---|
| 制御方式 | オープンループ(パルス数で指定) | クローズドループ(エンコーダで補正) |
| 位置検出 | 基本なし(脱調を検知できない) | あり(常時フィードバック) |
| 脱調 | 過負荷・急加減速で発生 | 原理的に発生しない |
| 低速トルク・保持力 | 大きい | 中程度 |
| 高速トルク | 落ちやすい | 安定 |
| コスト・構成 | 低め・シンプル | 高め・調整が必要 |
| 得意な用途 | 短ストローク・一定負荷・停止保持 | 高速・高精度・負荷変動 |
ステッピングモータとは?脱調はなぜ起きる?
ステッピングモータは、パルス1つで決まった角度だけ回るため、パルス数を数えるだけで位置がわかります。位置を実際に測ってはいないため、負荷が大きすぎたり加減速が急すぎたりすると、指令通りに回れず「脱調」して位置がずれます。
仕組みとしては、ローター(回転子)の歯と電磁石を順番に切り替え、1パルスごとに一定の角度(たとえば1.8度や0.72度)ずつ進めます。指令したパルス数と実際の回転が一致する前提なので、エンコーダがなくても位置決めができ、構成がシンプルで安価です。停止時の保持トルクが大きく、外力で押し戻されにくいため、停止状態を多く含む装置にも向きます。
弱点が脱調です。負荷トルクがモータの能力を超えると、ローターが指令パルスに追従できず回転がずれます。フィードバックがないためドライバ側はずれに気づけず、記録上の位置と実際の位置が食い違ったまま運転が続きます。近年は、ステッピングにもエンコーダを付けて脱調を検知・補正する「クローズドループステッピング」も普及しており、両者の中間的な選択肢になっています。
サーボモータとは?なぜ脱調しないのか?
サーボモータが脱調しないのは、エンコーダで実際の回転を測り、指令値との差を常に補正し続けるからです。負荷が変動して回転が遅れても、その差を検出して電流を増やし、目標位置へ追いつかせます。
サーボモータは、モータ・エンコーダ・サーボドライバを組み合わせ、「指令位置」と「実際の位置」を絶えず照合します。この閉じた制御ループ(クローズドループ)のおかげで、高速でも高精度を保ち、負荷変動にも強く、脱調が原理的に起きません。半面、エンコーダやドライバを含む構成は複雑で、コストは高く、ゲイン調整などのチューニングも必要になります。インバータやソフトスタータとは役割が異なる点も、関連記事で整理しています。
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トルク特性はどう違う?
ステッピングは低速域のトルクと停止時の保持力が強く、サーボは低速から高速まで安定したトルクを出せます。ステッピングモータは回転を上げるとトルクが急に落ちるため高速運転には不向きですが、電源を入れたまま止めておくと強い保持トルクで位置を維持します。サーボモータは定格回転までトルクがほぼ平坦で、瞬間的に定格を超える大きなトルクも出せるため、速い加減速や重い負荷に対応できます。
サーボとステッピング、どちらを選ぶ?
選定は「精度・速度の要求」「負荷変動の大きさ」「コスト・構成の許容度」の3軸で考えると外しにくくなります。短いストロークで、負荷がほぼ一定、停止して位置を保持する時間が長い用途はステッピングが向きます。逆に、高速で動かしたい、位置決め精度を高く保ちたい、負荷が大きく変動する、連続して動き続ける用途はサーボが向きます。
最も典型的な用途は、モータの正転(FWD)と逆転(REV)の同時起動防止です。
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どちらを選んでも、運転・停止・速度・位置の指令を出すのは多くの場合上位のPLCです。モータ単体ではなく、ドライバとPLCを含めた制御の組み合わせで仕様が決まる点は、サーボでもステッピングでも共通しています。
ただし、選定そのもの以上に後で効いてくるのが、「なぜこのモータ・この設定にしたのか」という判断の根拠を残せているかどうかです。担当者の頭の中だけにあると、増設や更新のたびに同じ検討をやり直すことになります。
人に貼り付いた知識を別の人へ移すより、業務基盤に判断材料を残すほうが、再現性のある引き継ぎになります。
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自己診断チェックリスト
- 位置決めに使っているモータが、サーボかステッピングか、その選定理由を説明できる。
- ステッピングを使う装置で、過負荷や急加減速による脱調のリスクを検討したことがある。
- モータの選定が、精度・速度・負荷変動・コストの観点で記録されている。
- パラメータ(ゲイン・パルスレート等)の設定意図が、担当者以外にも分かる形で残っている。
- 増設・更新時に、過去の選定根拠をすぐに参照できる。
まとめ
サーボモータとステッピングモータは、どちらも位置決め用のモータですが、フィードバックの有無で性格が分かれます。ステッピングはオープンループで低コスト・シンプル・保持力が強い反面、過負荷で脱調します。サーボはクローズドループで脱調せず高速・高精度・負荷変動に強い反面、構成が複雑でコストは高めです。低速・短ストローク・一定負荷ならステッピング、高速・高精度・負荷変動が大きいならサーボ、が基本の使い分けです。導入後は、選定とパラメータ設定の意図を組織の資産として残せるかが、装置を長く安定して使えるかを左右します。
よくある質問(FAQ)
サーボとステッピング、結局どちらが高精度?
一般に高速・連続位置決めではサーボが有利です。ただし停止保持や短ストロークの繰り返しでは、脱調しない範囲で使えばステッピングでも十分な精度が得られます。用途次第で優劣は入れ替わります。
脱調とは何ですか?
脱調とは、ステッピングモータが負荷や加減速に追従できず、指令パルス数と実際の回転がずれる現象です。フィードバックがないため検知できず、位置がずれたまま運転が続きます。クローズドループステッピングやサーボでは起きません。
ステッピングにエンコーダを付ければサーボと同じ?
近いですが同じではありません。エンコーダ付きの「クローズドループステッピング」は脱調を検知・補正できますが、トルク特性や高速性能はサーボとは異なります。中速・中精度の中間的な選択肢と捉えるのが実態に合います。
インバータとサーボはどう違いますか?
インバータは主に交流モータの回転数(速度)を制御する装置、サーボは位置決め(と速度・トルク)を高精度に制御する仕組みです。速度を変えたいだけならインバータ、止める位置を正確に決めたいならサーボ、と役割が分かれます。
出典
- オリエンタルモーター「ステッピングモーターとサーボモーターの使い分け」技術資料(制御方式・トルク特性の一般的な解説)。
- 本記事のオープンループ/クローズドループ、脱調、保持トルクに関する記述は、ステッピング/サーボの一般的な技術原理に基づいています。具体的な精度・トルク値は機種・負荷条件で変わるため、選定時は各メーカーの技術資料・仕様書をご確認ください。
