サーボモータの選定とは?イナーシャ比・実効トルク・エンコーダ分解能の決め方を図解で解説【2026年版】

サーボモータの選定とは?イナーシャ比・実効トルク・エンコーダ分解能の決め方を図解で解説【2026年版】
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この記事の要点

  • 選定は「容量(W)を選ぶ作業」ではなく、負荷イナーシャ・トルク・回転数を軸換算して型式を絞り込む作業です。
  • トルクには定常・最大(加速)・実効(RMS)の3種類があり、実効トルクの計算漏れが「動くけれど熱くなる」不具合の主因になります。
  • イナーシャ比(負荷慣性÷モータ慣性)は整定時間と安定性を左右します。推奨上限は機種ごとに異なるため、一般論ではなく採用機種のカタログ値で判断します。
  • 指令分解能はボールねじリード ÷(エンコーダ分解能 × 減速比)で決まり、実際の到達精度は機械側の剛性とバックラッシで頭打ちになります。

サーボモータの選定でつまずく理由はほぼ共通しています。必要な出力(W)を先に決めようとしていることです。先に決まるのは負荷側の条件、すなわち動かすものの慣性・必要な推力・必要な速度であり、容量はその結果として最後に決まります。この記事では、実際に手を動かす順番どおりに選定の要点を整理します。

サーボモータとは? ステッピングモータとは何が違うのか

サーボモータとは、指令値に対して実際の状態をセンサで検出し、差を打ち消し続ける「閉ループ制御」で動くモータです。この閉ループの有無が、開ループで動くステッピングモータとの決定的な違いです。

ステッピングモータは指令パルスの数だけ回る前提のため、負荷が想定を超えると脱調(位置がずれること)し、ずれたこと自体を検出できません。サーボモータは位置を常に検出しているため負荷変動に追従し、追従できない場合はアラームを返します。

比較項目サーボモータステッピングモータ汎用(三相誘導)モータ
制御方式閉ループ(フィードバックあり)開ループ(原則フィードバックなし)開ループ/インバータ併用
位置決め可能・負荷変動に追従可能・脱調のリスクあり原則不可
脱調の検出アラームで検出できる検出できない該当なし
高速時のトルク比較的維持しやすい回転数が上がると低下定格回転数近辺で使う
向く用途高速・高精度・負荷変動が大きい低速・短ストローク・一定負荷連続回転・搬送の主動力
表1:3種類のモータの使い分け。精度より「負荷が変動するか」で分かれる。

低速・短ストローク・一定負荷ならステッピング、高速・高精度・負荷変動が大きいならサーボ、が基本の使い分け。

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サーボモータの選定は、何を計算すれば決まるのか?

選定は4ステップで決まります。負荷イナーシャ → 必要トルク → 必要回転数 → 容量と型式の順で、いずれも「モータ軸に換算した値」で扱うのが原則です。ボールねじや減速機を挟むと、負荷側の数値はそのままモータ軸の数値にはなりません。

サーボモータ選定の4ステップを示したフロー図。負荷イナーシャ算出、必要トルク算出、必要回転数確認、容量と型式の決定と、条件を満たさない場合にSTEP1へ戻る流れ。
図2:選定の4ステップ。3条件を外したら STEP 1 に戻る前提で進める。

STEP 1:負荷イナーシャは何を足し合わせるのか?

負荷イナーシャ(慣性モーメント)は、モータが加減速させる相手の「回りにくさ」です。ボールねじ駆動の直動軸なら、次の要素をモータ軸換算で足し合わせます。

  • ボールねじ軸そのものの慣性モーメント
  • カップリング(軸継手)の慣性モーメント
  • テーブル・治具・ワークの質量をリードで回転系に換算した値
  • 減速機を挟む場合は減速比の2乗で割った換算値

見落としやすいのはワーク質量が変わる装置です。空パレットと満載で負荷イナーシャが数倍変わる搬送軸は、最悪条件(満載かつ最短タクト)で計算しないと量産立ち上げ後にアラームが出ます。

STEP 2:トルクは3種類を分けて計算する

ここが選定の中心です。トルクは定常・最大・実効の3種類を別々に求め、それぞれ別の判定に使います。

サーボモータの1サイクルの動作パターンとトルク波形を示したグラフ。加速時に最大トルク、定速時に定常トルク、サイクル全体の二乗平均平方根が実効トルクになることを表す。
図1:速度パターンとトルクの関係。実効トルクは停止時間も含めて決まる。
種類何を表すかどこで決まるか判定の使い方
定常トルク一定速度で動かし続けるのに要るトルク摩擦・重力・加工反力連続定格トルク以下であること
最大トルク(加速トルク)加速・減速の瞬間に要るトルク総イナーシャ × 角加速度 + 定常トルク最大瞬時トルク以下であること
実効トルク(RMS)1サイクル平均の発熱に相当するトルク停止時間を含む1サイクルのRMS連続定格トルク以下であること
表2:3種類のトルクと判定基準。実効トルクは「熱」の指標。

実効トルクが最も忘れられます。加速トルクが定格内でも、加減速を高頻度で繰り返す装置では発熱が定格を超えます。停止時間を削ると同じ動作でも実効トルクは上がるため、タクトタイム短縮の要望が来たとき、真っ先に再計算すべきはここです。

STEP 3:必要回転数はリードと減速比で決まる

最高速度(mm/s)をリード(mm/rev)で割るとボールねじ軸の必要回転数が出ます。減速機を挟む場合はさらに減速比を掛けた値がモータ軸の必要回転数です。定格回転数を大きく超えるなら、モータを上位機種にするよりリードの大きいボールねじに変えるほうが安く収まります。

すべり軸受と比べて起動時の摩擦が小さく、潤滑管理が簡単で、規格品として入手しやすいという特徴があります。

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STEP 4:イナーシャ比はなぜ重要なのか?

イナーシャ比とは、負荷イナーシャをモータ自身のロータイナーシャで割った比率です。この比が大きいほど負荷が「重すぎる」状態になり、整定時間(目標位置に落ち着くまでの時間)が延び、ゲインを上げると振動しやすくなります。

推奨上限は機種ごとに定められており、共通の絶対値はありません。「10倍以下」という目安が語られることがありますが、高応答が要る用途ではより小さい値が求められます。採用機種のカタログ値で判断してください。

超過したときの打ち手はモータの大型化だけではなく、減速機の追加が有効です。モータ軸換算の負荷イナーシャは減速比の2乗に反比例するため、減速比3で約9分の1になります。

エンコーダの分解能は、位置決め精度とどう関係するのか?

エンコーダの分解能は「指令できる最小単位」を決めるだけで、実際に到達できる精度は決めません。到達精度は機械側の剛性・バックラッシ・熱変位・ボールねじの精度等級で頭打ちになります。

この位置検出を担うのがロータリーエンコーダです。サーボの精度は、エンコーダの分解能とフィードバックの速さに支えられています。

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指令分解能 [mm] = ボールねじリード [mm/rev] ÷(エンコーダ分解能 [pulse/rev] × 減速比)

リード10mmに数百万パルス/revの高分解能エンコーダを組み合わせれば、指令分解能はナノメートルの桁になります。しかし装置がその精度で位置決めできるわけではありません。分解能を上げても精度が改善しない場合、原因は制御側ではなく機械側にあります。

選定をやり直さないためのチェックリスト

選定を提出する前の確認5項目です。ひとつでも「いいえ」があれば STEP 1 に戻る合図です。

  1. 実効トルクを、停止時間を含む1サイクル全体で計算しましたか。
  2. 負荷イナーシャを最悪条件(最大ワーク質量・最短タクト)で計算しましたか。
  3. イナーシャ比を、採用機種のカタログ推奨値と照合しましたか。
  4. 垂直軸の場合、電源遮断時の落下防止(保持ブレーキ)と重力トルクを織り込みましたか。
  5. 非常停止時の停止方法と安全機能(STO など)を、装置全体の安全設計と整合させましたか。

5番目は後から追加すると型式変更になりやすい項目です。停止カテゴリの考え方は非常停止回路の記事で扱っています。

FAQ(よくある質問)

Q. サーボモータの容量は、余裕を見て大きめに選んでよいですか?

A. 大きくするとイナーシャ比は改善しますが、ロータイナーシャが増えて加速トルクも増え、アンプ容量・盤スペース・コストが上がります。余裕は実効トルク側で確保し、容量を上げる前に減速比やリードの見直しを検討してください。

Q. イナーシャ比は何倍までなら大丈夫ですか?

A. 共通の絶対値はありません。推奨上限は機種ごとにカタログで定められ、高応答が必要な用途ほど小さい値が求められます。「10倍以下」は一般論であり、採用機種の値で判断してください。

Q. 実効トルクと定格トルクは何が違いますか?

A. 定格トルクはモータが連続して出せる上限値(カタログ値)、実効トルクは装置の動作パターンから計算される連続相当のトルクです。判定は「実効トルク ≦ 連続定格トルク」で行います。

Q. 減速機を入れるとサーボモータを小さくできますか?

A. 負荷イナーシャは減速比の2乗に反比例、必要トルクは減速比に反比例して小さくなるため容量を下げられる場合があります。ただし必要回転数は減速比に比例して上がるため、定格回転数を超えないか併せて確認してください。

まとめ

サーボモータの選定は、負荷イナーシャ・トルク・回転数をモータ軸に換算し、イナーシャ比・実効トルク・最大トルクの3条件で検証する作業です。出力から入らず負荷側から積み上げること、そして3条件を外したらモータを大きくする前に減速比・リード・動作パターンを見直すこと。この2点でやり直しはかなり減ります。

次に読む

出典・参考

  • JIS B 1192(ボールねじ)— リード・精度等級の定義
  • JIS B 9960-1(機械類の安全性-機械の電気装置)— 停止カテゴリの区分
  • IEC 61800-5-2(可変速電気駆動システム-安全要求事項)— STO などの定義
  • ISO 13849-1/JIS B 9705-1(制御システムの安全関連部)
  • イナーシャ比・実効トルクの推奨値は機種ごとに異なります。数値は各メーカーの選定資料・カタログの記載を出典として確認してください(本記事では特定の機種値を断定していません)

駆動系の選定基準が、担当者ごとにばらついていませんか

イナーシャ比の判断や実効トルクの計算条件が個人の経験に閉じていると、担当者が変わるたびに選定結果が変わります。ファースト・オートメーションでは、業務の分解からどこを標準化すべきかをご一緒に整理しています。

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