工場の自動化は、どの工程から進んでいるのか?——ロボット国内出荷3.3万台を用途別に読むと見える、自動化しやすい工程・しにくい工程【2026年版】

この記事の要点

  • 日本ロボット工業会の統計では、2025年に国内へ出荷された産業用ロボット(会員ベース)は33,075台でした。用途別に見ると、半導体・FPD(クリーンルーム)25.7%、マテリアルハンドリング21.4%、一般組立14.3%、溶接11.5%が上位です。
  • マテリアルハンドリング・入出荷・工作機械へのロード/アンロードを「運ぶ作業」としてまとめると9,355台(28.3%)になり、工場の自動化は運ぶ工程から進んでいることが分かります。
  • 研磨・バリ取り(0.4%)、塗装(1.5%)、ねじ締め(0.2%)は少数です。ただし専用機による自動化はこの統計に表れません。
  • 統計は事例の多さの目安です。自社の工程は、量・ワークのそろい方・合否の決め方で判断します。

この記事が支援する判断:生産技術や工場運営の担当者が、自動化の対象工程を選ぶ前に「自社が検討している工程は、世の中でどのくらい自動化されている工程か」を確かめ、事例を探しやすい工程から着手するか、条件を整えてから着手するかを決める場面を支援します。

結論から言えば、国内で出荷されたロボットの用途を並べると、自動化は「運ぶ」「組み立てる」「溶接する」工程に集中しています。研磨・塗装・ねじ締めのような工程は、ロボットの出荷台数が少ないぶん事例も少なく、検討には別の準備が要ります。本記事では、日本ロボット工業会の2025年の統計を用途別に読み、工程ごとの位置づけを整理します。

国内の工場では、どの工程にロボットが入っているのか?

2025年に国内へ出荷されたロボットは、会員ベースで33,075台でした(前年40,622台から18.6%減)。用途別の内訳は次のとおりです。日本ロボット工業会の四半期統計に掲載されている2025年暦年の表から、国内出荷の台数と構成比を抜き出しました(出典: 日本ロボット工業会「マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷(用途別)実績【会員ベース】2025年[暦年]」)。

用途(統計の分類)2025年 国内出荷台数構成比前年比
クリーンルーム(半導体・FPDほか)8,513台25.7%−5.1%
マテリアルハンドリング7,089台21.4%−18.4%
組立(うち一般組立 4,739台)5,316台16.1%−30.0%
溶接(アーク 2,082台・スポット 1,638台ほか)3,813台11.5%−36.1%
樹脂成形2,334台7.1%−6.5%
入出荷1,284台3.9%−10.5%
機械加工(うちロード/アンロード 982台・研磨/バリ取り 147台)1,175台3.6%−18.9%
電子部品実装819台2.5%−15.7%
塗装497台1.5%−2.2%
その他用途・用途不明2,235台6.8%—
表1 2025年の産業用ロボット国内出荷(用途別・会員ベース。出典: 日本ロボット工業会 四半期統計 2025年10-12月期の暦年集計表)
2025年 国内出荷33,075台の用途別構成比 半導体・FPD25.7% マテハン21.4% 一般組立14.3% 溶接11.5% 樹脂成形7.1% 入出荷3.9% ロード/アンロード3.0% 電子部品実装2.5% 塗装1.5% 研磨・バリ取り0.4% ねじ締め0.2% 出典: 日本ロボット工業会 四半期統計(会員ベース)から作成
図1 国内出荷の上位4用途で全体の7割を占め、研磨・塗装・ねじ締めは1%前後にとどまる

上位4用途(半導体・FPD、マテリアルハンドリング、組立、溶接)で全体の74.7%を占めます。台数が少ない工程は、参考にできる事例も少なくなります。

PR図面バンク — AIで図面を探す・活かすクラウド図面管理システム。

「運ぶ作業」が最も自動化されているのはなぜか?

統計の分類では、マテリアルハンドリング(7,089台)と入出荷(1,284台)は別の項目で、工作機械へのワークの出し入れを指すロード/アンロード(982台)は機械加工の内訳に入っています。これらを「運ぶ作業」としてまとめ直すと9,355台、全体の28.3%になり、単独の用途としては最も大きい群です。

運ぶ作業は、置く場所と取る場所が決まれば同じ動作の繰り返しで済み、合否は「所定の位置に置けたか」で決まります。教える内容が少なく、1台で多くの量をこなせることが台数の多さにつながっていると考えられます。

ただし、運ぶ工程を自動化すれば工場全体が速くなるわけではありません。どの工程から手を付けるかについては、過去記事で次のように整理しました。

対象工程は「いちばん大変な工程」ではなく、出来高の上限を決めている工程から選びます。ここを取り違えると、投資しても全体の数字が動きません。

省人化と自動化は何が違うのか?——狙う指標の決め方と、省人化に向かない工程の見分け方【2026年版】

組立と溶接は、どのくらい自動化されているのか?

組立用は5,316台で、そのうち4,739台が「一般組立」です。同じ組立の分類でも、ねじ締めは56台、シーリング・グルーイングは182台、はんだ付けは7台にとどまります。部品を取って所定の位置に入れる作業にはロボットが入る一方、締める・塗る・付けるといった個別の作業をロボットで行う例は多くありません。

ただし、ねじ締めにはナットランナなどの専用機があり、ロボットを使わずに自動化されることがあります。組立の作業ごとの向き不向きは、過去記事で次のように書きました。

ねじ締め・圧入・塗布のように、トルクや荷重、吐出量などの数値で合否を決められる作業です。ただし、その作業に部品が向きと位置のそろった状態で届くことが前提になります。

組立工程はどの作業から自動化するのか?——部品供給・ねじ締め・圧入・嵌合の向き不向きと、組立の自動化が向かない4条件【2026年版】

溶接用は3,813台(11.5%)で、アーク溶接2,082台とスポット溶接1,638台が大半です。溶接は前年から36.1%減と、用途のなかで最も大きく落ち込みました。日本ロボット工業会は2025年の概況について「国内向けは自動車製造業向けを中心に主要業種、用途で低調となった」と記しています(出典: 日本ロボット工業会 2026年6月1日プレスリリース)。自動車・自動車部品向けの国内出荷も9,486台(26.5%減)で、溶接は自動車関連の投資の波に左右されやすい用途だと読めます。

PR図面バンク — AIで図面を探す・活かすクラウド図面管理システム。

研磨・塗装・ねじ締めのロボットが少ないのは、自動化できないからか?

研磨・バリ取りの国内出荷は147台(0.4%)でしたが、輸出は1,635台で前年の440台から271.6%増えています。技術的に無理な工程ではなく、国内ではまだ人が担う割合が大きい工程と読むのが妥当です。

研磨や塗装は、仕上がりを目で見て判断する作業を含みます。ワークごとに削る量や塗る厚さが変わると、教える手間が生産量に見合わなくなります。事例を探すより先に「仕上がりの合否を数値で決められるか」を確かめてください。

ロボットが多い工程と少ない工程の違い 国内出荷が多い工程 搬送・一般組立・溶接・成形 国内出荷が少ない工程 研磨・塗装・ねじ締め ・同じ動作を繰り返せる ・ワークの位置がそろう ・合否を位置で決められる ・1台で多くの量をこなす ・仕上がりを目で判断する ・ワークごとに状態が違う ・教える手間が量に合わない ・専用機で置き換えられる 事例が多く検討しやすい 条件を整えてから検討する
図2 統計の分布から読める、ロボットが入りやすい工程と入りにくい工程の性質(編集部の整理)

自社の工程は、どの順で判断すればよいか?

自社の工程がどの行に当たるかを先に決めてから、事例を探してください。

工程の種類国内出荷での位置着手しやすい条件先に確かめること
搬送・ロード/アンロード・入出荷合計28.3%で最大置く場所と取る場所が固定できる前後の工程の速さ
一般組立14.3%部品が向きと位置のそろった状態で届く部品の供給方法と、品種の切り替え頻度
溶接(アーク・スポット)11.5%同じ形のワークが続き、治具で位置決めできるワークの寸法のばらつき
研磨・バリ取り・塗装各1.5%以下仕上がりの合否を数値で決められる目視の基準を数値にできるか
ねじ締め・塗布などの個別作業各1%未満専用機で足りるかを先に比べる専用機の方が安く確実ではないか
表2 工程の種類別に見た、着手しやすい条件と先に確かめること(国内出荷の構成比は表1の2025年値)

どの行に当たる場合も、1工程だけの自動化で終わらせない視点が要ります。自動化が止まる原因を整理した記事では、次のように指摘しました。

1工程だけを自動化しても前後が手作業のままなら全体のリードタイムは短くならず、部分最適が全体の停滞を生みます。

工場の自動化はなぜ失敗するのか——止まる7つの原因と、「まだ早い」条件から先に決める判断基準【2026年版】

出荷統計だけで判断するのが向かないのは、どんなとき?

出荷台数は目安にすぎません。次のときは、数字をそのまま判断に使わないでください。

  • 専用機で自動化される工程を見ているとき:ねじ締め機、塗装ブース、外観検査装置などはロボットとして数えられません。台数が少なくても、自動化が進んでいないとは限りません。
  • 年ごとの増減で判断しようとしているとき:2025年の減少は自動車関連の投資の影響が大きく、工程の向き不向きを表すものではありません。
  • 台数を効果と読み替えているとき:効果は台数ではなく、自社の量・品種・前後の工程で決まります。
  • 非会員を含む全体と比べたいとき:用途別の数字は会員ベースです。非会員を含む2025年の国内出荷は37,816台で、用途別の内訳はありません。

よくある質問(FAQ)

工場の自動化は、どの工程から始めるのが一般的ですか?

ロボットの国内出荷で見ると、マテリアルハンドリング・入出荷・ロード/アンロードの「運ぶ作業」が合計28.3%で最も多く、次いで組立、溶接が続きます。ただし、自社で始める工程は、出来高の上限を決めている工程から選ぶのが基本です。

研磨やバリ取りはロボットで自動化できますか?

技術としては可能で、2025年の研磨・バリ取り用ロボットの輸出は1,635台と前年の約3.7倍でした。国内出荷は147台と少ないため、検討の前に仕上がりの合否を数値で決められるかを確かめてください。

まとめ——事例が多い工程と、条件を整えてから進める工程を分ける

工場の自動化は、運ぶ作業・一般組立・溶接に集中しており、これらは事例が多く検討を始めやすい工程です。研磨・塗装・ねじ締めは、専用機で済む場合や、仕上がりの基準を数値にする準備が要る場合があります。統計で自社の工程の位置を確かめ、量・ワークのそろい方・合否の決め方で着手の順番を決めてください。

出典

  • 一般社団法人日本ロボット工業会「マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷(用途別)実績【会員ベース】2025年10-12月期」(PDF・2025年暦年の用途別・業種別集計表を含む・2026年10月5日取得) https://www.jara.jp/data/dl/quarter/IR2025-10-12.pdf
  • 一般社団法人日本ロボット工業会「マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷実績 2025年 暦年【会員+非会員】について」(2026年6月1日リリース・2026年10月5日取得) https://www.jara.jp/data/press/2026/260601.html

執筆: 装置メーカーで生産設備の設計・立上げに従事した経験を持つ、製造DXドットコム編集部の設計スペシャリスト

自動化する工程とロボットの構成を検討中の方へ

ROGEARは、ロボットシステムの構成検討を支援する仕組みです。工程の条件からロボット・ハンド・周辺機器の組み合わせを整理し、仕様を固める前の検討を進めやすくします。ROGEARの詳細を見る

PR図面バンク — AIで図面を探す・活かすクラウド図面管理システム。

次のアクション

製造DXドットコムは、製造業の AX(AI Transformation)= 現場の業務を AI で作り替えることを扱うメディアです。運営は株式会社 New Innovations。

記事一覧
PR図面バンク — AIで図面を探す・活かすクラウド図面管理システム。

自動化・ロボットの活用事例 の記事をすべて読む(194 本)

製造業のAI活用、週1回の要点だけ

現場で使える事例と手順を厳選してお届けします。
購読は無料、配信停止はいつでもできます。