リレー回路のままにするか、PLCに置き換えるか?——入出力点数・変更頻度・保全体制で決める境界と、リレーで残すべき4条件【2026年版】

この記事の要点
- リレー回路かPLCかは、回路の大きさだけでなく、立ち上げ後にどれだけ変わるかと誰が直すかで決まります。
- 入出力が少なく、動作が固定で、保全担当がテスタと回路図で追える回路は、リレーのままで合理的です。
- タイマ・カウンタ・条件分岐が重なり、品種切替や改造が年に何度もある設備はPLCに寄せます。
- 非常停止や扉インターロックはPLC化の対象ではなく、安全リレーユニットやセーフティPLCで別に組みます。
この記事が支援する判断:装置の電気設計・生産技術・保全の担当者が、新しく組む制御回路をリレーで組むかPLCにするか、または既存のリレー盤をPLCに置き換えるかを決める場面を支援します。リレーやPLCの仕組みそのものは別記事で扱い、本記事は決め方に絞っています。
リレー回路で組むか、PLCにするかは、何で決まるのか?
結論から言えば、決め手は4つの問いです。入出力の数とロジックの複雑さ、立ち上げ後の変更の頻度、保全を誰が担うか、そして安全機能を含むかどうかです。前の3つはリレー寄りかPLC寄りかを決める物差しで、4つ目の安全機能は別枠として扱います。
違いの根っこは、ロジックをどこに持つかにあります。日本産業規格 JIS B 3501:2004 は、PLC を「ディジタル又はアナログ入出力を介し,種々の機械及びプロセスを制御するために,論理,順序,計時,計数及び算術演算のような特有機能を実行し,使用者が使う命令を内部に記憶するためにプログラマブルメモリを使用し,工業環境下で使用するために設計されたディジタル演算電子システム。」と定義しています(JIS B 3501:2004 3.5)。
つまり PLC は、論理・順序・計時・計数をメモリ上の命令として持ちます。リレー回路は同じことを、リレー・タイマ・カウンタという部品と配線で持ちます。この差が、変えるときの手間と、壊れたときの追い方の差になります。
どこからPLCにすべきか?判断基準を表で見る
4つの問いを、リレーのままでよい側とPLCに寄せる側に分けると表1のようになります。数字は規格で決まるものではなく、現場で判断するときの目安です。
| 判断の軸 | リレーのままでよい | PLCに寄せる |
|---|---|---|
| 入出力とロジック | 入出力が数点〜十数点で、タイマ・カウンタがほとんどない | 入出力が数十点以上で、タイマ・カウンタ・条件分岐が重なる |
| 立ち上げ後の変更 | 立ち上げ後はほぼ変えない | 品種切替・工程追加・条件変更が年に何度もある |
| 保全の体制 | 保全担当がテスタと回路図で追え、PLCの道具を扱う人がいない | プログラムの保管・版管理と、道具を扱える人を社内か委託先で確保できる |
| 状態の見える化 | ランプと目視で足りる | 異常履歴・稼働時間・タッチパネル表示・上位への通信が要る |
| 安全機能(別枠) | 非常停止・扉インターロックは安全リレーユニットで構成 | 安全機能が多く構成が変わるならセーフティPLC |
表のうち迷ったときに重く見るのは、2つ目と3つ目の軸です。一度組んだら変えない回路なら、多少大きくてもリレーで回ります。反対に、変更が多い回路は小さくてもPLCの方が、配線をやり直す手間を何度も払わずに済みます。図1は、この4つの問いを順に当てはめたものです。
PLCにすると、何が変わるのか?
PLCにすると、動作の変更は配線のやり直しではなくプログラムの修正になります。盤の中のリレーやタイマが減るため配線量と故障点も減り、モニタ機能で接点の状態を画面で追えるようになります。今の設備の多くがPLCで組まれているのはこのためです。
シーケンス制御はリレー回路でも実現できますが、現在の多くの設備ではPLCで実装されています。
シーケンス制御とは|フィードバック制御との違い・リレーとPLCの仕組み・制御の流れを図解で解説【2026年版】
一方で、増えるものもあります。プログラムという「目に見えない回路」の管理です。バックアップ、版、開発用の道具、パスワードの管理が要り、盤の配線図だけでは動作が分からなくなります。テスタと回路図で追えた故障が、パソコンと道具なしでは追えなくなる——これが、3つ目の保全の軸を軽く見てはいけない理由です。
PLCが向かない、リレーのまま残すべき条件は?
PLC化が進んだ設備でも、リレー系の回路を残した方がよい場面があります。次の4条件に当てはまる回路は、PLCへ移す前に立ち止まって考えてください。
| 条件 | リレーで残す理由 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 入出力が数点で、立ち上げ後に変えない回路(単体のコンベアの起動停止など) | PLCと道具を持ち込んでも変更しやすさが使われず、保全の手段が増えるだけになる | 今後の改造予定の有無 |
| 保全担当がPLCの道具とプログラムを扱えず、委託先も決まっていない | 夜間に止まったとき回路を追えず、復旧が業者待ちになる | プログラムの保管場所と、扱える人の名前 |
| 非常停止・扉インターロックなどの安全機能 | 止める判断を通常のPLCのプログラムに任せない | 必要なパフォーマンスレベルと停止カテゴリ |
| PLCが止まっても働く必要がある保護回路 | PLC自体の故障や電源断で機能を失わないよう、配線の回路として独立させる | PLC停止時に各出力がどうなるか |
安全回路は、なぜPLCに移さないのか?
機械の電気装置の規格 JIS B 9960-1:2019 は、故障による危険を減らす方法の例として「電気機械的機器と電子的機器とを組み合わせて冗長構成とする。」を挙げています(JIS B 9960-1:2019 9.4.2.4)。また、非常停止については「非常停止は,停止カテゴリ0又は停止カテゴリ1の停止として機能しなければならない。」と定めています(同 9.2.3.4.2)。止め方は、通常の順序制御とは別に決めるものです。
実務では、安全機能の数と変わりやすさで機器を選びます。過去記事では次のように整理しています。
非常停止と扉が数点で構成が固定的なら安全リレーユニット、安全機能が多い・ゾーンごとに停止範囲を変える・将来構成が変わる場合はセーフティPLCが向きます。
非常停止回路とは?安全リレーの仕組みと停止カテゴリ0/1/2の違い・安全カテゴリ(PL)を図解で解説【2026年版】
既存のリレー盤をPLCに置き換えるなら、何から始めるのか?
置き換えは、PLCの機種を決めるところからではなく、今の回路を確かめるところから始めます。順番は次のとおりです。
- 盤の実配線と回路図が一致しているかを確かめる。改造を重ねた盤は、図面と配線が違っていることが少なくありません。
- 入出力を数え、予備を見込んでPLCの点数を決める。後から足すセンサや表示灯の分を最初から残します。
- 安全回路と保護回路を切り分ける。表2の3・4に当たる回路は、PLCへ移さない範囲として先に線を引きます。
- プログラムの保管場所・版の管理・扱う人を決めてから切り替える。ここが決まらないまま切り替えると、表2の2の状態を自分で作ることになります。
予備を見込むのは、盤が立ち上げ後も変わり続けるからです。制御盤の設計を扱った記事でも、次のように前提を置いています。
制御盤は、装置の立ち上げ後に機器を足す場面が必ずあります。
制御盤の中は何から決めるのか?——機器配置・発熱・配線の順番と、後から機器が入らなくなる4条件【2026年版】
PLCのメーカーや機種をどう選ぶかは、PLCメーカー比較(保守部品・耐環境・納期で選ぶ判断表)で扱っています。リレーそのものの選び方は電磁リレーの仕組みと選び方を参照してください。
よくある質問
リレー回路とPLCでは、初期費用はどちらが安いですか?
回路の規模によります。入出力が数点の単純な回路ならリレーの部品代の方が小さく収まることが多く、入出力やタイマ・カウンタが増えるほど、PLCの方が部品と配線の手間を抑えられます。比べるときは部品代だけでなく、改造と保全にかかる手間も含めてください。
非常停止などの安全回路もPLCで組めますか?
通常のPLCのプログラムだけに任せず、安全用途向けの安全リレーユニットやセーフティPLCで組みます。非常停止と扉が数点で構成が変わらないなら安全リレーユニット、安全機能が多く構成が変わるならセーフティPLCが向きます。
既存のリレー盤は、全部PLCに置き換えるべきですか?
全部を置き換える必要はありません。変更の多い順序制御はPLCへ移し、安全回路と、PLCが止まっても働く必要のある保護回路はリレー系の機器で残す併用が現実的です。
まとめ
リレー回路かPLCかは、入出力とロジックの量、立ち上げ後の変更の頻度、保全を誰が担うかの3つで決め、安全機能は別枠で考えます。変更が多い順序制御はPLCへ、変えない小さな回路と、安全回路・保護回路はリレー系で残すのが基本です。置き換えるときは、実配線の確認と、プログラムを誰がどこで管理するかを先に決めてください。
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出典
- 日本産業規格 JIS B 3501:2004「プログラマブルコントローラ-一般情報」3.5 プログラマブル(ロジック)コントローラ(2026年10月6日確認)
- 日本産業規格 JIS B 9960-1:2019「機械類の安全性-機械の電気装置-第1部:一般要求事項」9.2.3.4.2 非常停止・9.4.2.4 ダイバーシティ(多様化設計)の採用(2026年10月6日確認)
- 表1の数値の目安と図1・図2は、上記と一般的な設計実務を基に編集部が作成したものです。










