【2026年最新】弾性変形と塑性変形の違いとは|応力ひずみ線図・降伏点・0.2%耐力・許容応力の決め方を図解で解説

弾性変形とは、力を取り除くと元の形状に戻る変形のことです。一方塑性変形とは、力を取り除いても元に戻らない変形を指します。両者の境目となる応力が降伏点(明確な降伏点を持たないアルミ合金などでは0.2%耐力)であり、機械設計ではこの値を基準強さとして安全率で割った許容応力以下に応力を抑えるのが強度設計の基本です。
機械設計や生産技術の現場で必ず登場する「弾性変形」と「塑性変形」。言葉は知っていても、「応力ひずみ線図のどこからが塑性域なのか」「アルミには降伏点がないと言われたが、では何を基準に設計するのか」と聞かれると、説明に詰まる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、応力ひずみ線図の読み方から、降伏点と0.2%耐力の違い、許容応力と安全率の決め方、見落としがちな加工硬化まで、図解付きで一気に整理します。後半では、CAE(強度解析)やAIを使う2026年の設計現場で「弾性域・塑性域の理解」がむしろ重要性を増している理由も解説します。
もくじ
弾性変形と塑性変形の違い——まず結論
鋼などの金属材料は、ある応力以下であれば、力を取り除いたとき元の形状に戻ります。この「元に戻る変形」が弾性変形で、その応力範囲を弾性域と呼びます。
バネを思い浮かべてください。少し伸ばして手を離せば元の長さに戻りますが、あるところを境に伸ばしすぎると戻らなくなります。この「元に戻らない変形」が塑性変形で、その応力範囲が塑性域です。両者の境目の点を降伏点と呼び、強度計算ではこの降伏点以下の応力を許容応力の基準とします。
| 項目 | 弾性変形(弾性域) | 塑性変形(塑性域) |
|---|---|---|
| 力を除いたあと | 元の形状に戻る | 変形が残る(永久ひずみ) |
| 応力とひずみの関係 | 比例(フックの法則・ヤング率が使える) | 非線形(形状・加工条件に依存) |
| 設計での扱い | 通常使用の強度検討はこの範囲で行う | 異常時・安全側の検討(破壊させない設計) |
| 計算の難易度 | 材料力学の公式・線形CAEで計算可能 | 非線形解析が必要で難易度が高い |
| 身近な例 | バネが伸びて戻る | 針金を曲げると曲がったまま |
応力ひずみ線図の読み方——比例限度・降伏点・引張強さ・破断
金属材料に引張荷重をかけたときの応力とひずみの関係を表したグラフが応力ひずみ線図です。軟鋼(一般的な構造用鋼)の場合、以下のような特徴的な経過をたどります。
線図上の代表的なポイントは次の4つです。
① 比例限度〜弾性限度
応力とひずみが直線関係(比例)を保つ範囲です。この直線の傾きがヤング率(縦弾性係数)であり、たわみ計算などの線形計算はこの範囲を前提にしています。
② 降伏点
弾性域と塑性域の境目です。名前の通り材料が「降伏」する点であり、強度計算ではこの降伏点の応力以下を許容応力とするのが基本です。一般的な軟鋼(SS400相当)の降伏点は235〜245MPa程度です。
③ 引張強さ(最大応力)
材料が耐えられる最大の応力です。降伏後もひずみ硬化により応力は一度上昇し、この点を超えるとくびれが生じて破断へ向かいます。
④ 破断
材料が分離する点です。設計上は当然ここに到達させてはいけませんが、衝突・落下のような異常荷重時に「壊れ方をコントロールする」目的で塑性域の挙動を使う設計もあります。
なお、横軸の「ひずみ」の定義があいまいなまま線図を読むと混乱します。当サイトの強度計算の基礎記事では、ひずみを次のように説明しています。
ひずみとは、軸方向に荷重を受けたときの変形と元の長さの比率のことです。こちらは輪ゴムをイメージするとわかりやすいですね。
ひずみは「長さ」ではなく「比率(無次元量)」である、という点を押さえておくと、応力ひずみ線図がぐっと読みやすくなります。
アルミ合金には降伏点がない——0.2%耐力とは
前章の線図は軟鋼の例ですが、アルミ合金や銅などの材料には、明確な降伏点が存在しません。応力を上げていくと、はっきりした折れ点を示さず、なだらかに塑性変形へ移行していきます。
このような材料では、「除荷した後に残る塑性ひずみが0.2%になるときの応力」を耐力として定義し、鋼の降伏点と同じ意味合いで使います。これが一般に0.2%耐力と呼ばれる値です。
求め方は図2の通りで、弾性域の直線をひずみ0.2%分だけ右に平行移動し、応力ひずみ曲線と交わる点の応力を読み取ります。アルミ材のカタログやJIS規格表で「耐力」と書かれていたら、この0.2%耐力のことだと考えてください。
主要材料の降伏点・0.2%耐力の目安一覧
強度検討の出発点として、よく使う材料の基準強さ(降伏点・耐力)の目安を整理しておきます。実際の設計では、板厚・調質・規格年度によって規定値が変わるため、必ずJIS規格表またはミルシートで確認してください。
| 材料 | 分類 | 降伏点 / 0.2%耐力(目安) | 引張強さ(目安) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| SS400 | 一般構造用圧延鋼材 | 245MPa(降伏点・板厚16mm以下) | 400〜510MPa | 架台・フレームの定番。明確な降伏点あり |
| S45C(焼ならし) | 機械構造用炭素鋼 | 345MPa(降伏点) | 570MPa以上 | 軸・ピンなど機械部品。熱処理で大きく変わる |
| SUS304 | オーステナイト系ステンレス | 205MPa(0.2%耐力) | 520MPa以上 | 明確な降伏点なし。耐力で評価 |
| A5052-H34 | アルミニウム合金 | 約180MPa(0.2%耐力) | 約230MPa | 明確な降伏点なし。調質記号で値が変わる |
注目してほしいのは、SUS304とアルミ合金の欄が「降伏点」ではなく「0.2%耐力」になっている点です。ステンレスの代表格であるSUS304も、実はアルミと同じく明確な降伏点を持たない材料です。「ステンレスは鉄の仲間だから降伏点があるはず」と思い込んでいると、規格表の読み違いにつながります。
また、同じ材料名でも調質(H34などの記号)や熱処理条件で基準強さは大きく変わります。「A5052だから耐力180MPa」と丸暗記するのではなく、「この材料はどの調質か」をセットで確認する習慣をつけましょう。
許容応力と安全率の決め方
許容応力は、次の式で決めるのが基本です。
許容応力 = 基準強さ(降伏点 または 0.2%耐力)÷ 安全率
安全率は荷重の性質によって変える必要があります。古くから使われる目安(アンウィンの安全率・鋼の場合)は以下の通りです。
| 荷重の種類 | 例 | 安全率の目安(鋼) |
|---|---|---|
| 静荷重 | 架台・フレームに一定の重量物を載せる | 3 |
| 繰返し荷重(片振り) | 同一方向の荷重が繰り返し作用するシリンダ駆動部 | 5 |
| 繰返し荷重(両振り) | 正逆に荷重が反転する回転軸・往復動部 | 8 |
| 衝撃荷重 | ワークの落下・衝突が想定される受け部 | 12 |
基本的に設計者は弾性域内で強度検討を進めます。椅子の設計で例えると、「座る・上に立つ」のような通常起こりうる使い方では必ず弾性域内に収めます。一方で、バランスの悪い場所に置いた椅子の上に立つような異常な使われ方をされた場合でも、お客様の安全が第一優先です。脚が曲がってしまっても(塑性変形しても)破壊には至らない——そんな「壊れ方を設計する」場面で塑性域の検討が登場します。
ただし塑性域内の計算は形状に左右されることが多く難易度が高いため、経験のある技術者と一緒に進めることをおすすめします。
加工硬化——「硬くなる」は「脆くなる」でもある
金属に応力を加えて塑性変形させたとき、金属が硬くなる現象を加工硬化(ひずみ硬化)と呼びます。針金をクネクネと曲げたとき、一度曲げたところが硬くなって曲がりづらくなる——あれがまさに加工硬化です。
設計の頭から抜けやすいのは、設計時には加工硬化をコントロールできないからです。たとえば板金設計では素材の物性値で強度計算を行いますが、その後の曲げ加工や絞り加工で材料がどの程度伸ばされるかは、製造元のノウハウに属することが多く、設計段階で加工硬化を織り込んだ計算をすることは稀です。
そして加工硬化には大きなデメリットがあります。「硬くて脆い」という言葉の通り、硬くなるにつれて粘り強さ(じん性)が低下し、耐久試験では素材に比べて割れや破断が発生しやすくなります。曲げ部の近くに荷重がかかる構造では、この点を頭の片隅に置いておきましょう。
【2026年最新】CAEとAIで変わる強度設計——弾性域・塑性域の理解が「前提知識」になる理由
2026年現在、強度検討の現場では線形CAEが当たり前になり、生成AIに材料力学の質問をすれば即座に式が返ってくる時代になりました。しかし、だからこそ「弾性域・塑性域の理解」の重要性はむしろ増しています。
理由は単純で、多くの強度解析(線形解析)は塑性域の計算をしていないからです。一般的な鋼の降伏点は240MPa程度ですが、線形解析は降伏をはるかに通り越した状態でも平然と結果を返します。「解析結果は応力400MPa・変位20mmでした!目標変位以内なので達成です!」と喜ぶ新人さん——実は本来なら部材が降伏している状態です。解析ツールは間違っていません。弾性域の前提を理解せずに結果を読む側の問題です。
AIによる設計支援ツールの内製化が広がる中でも、この構図は変わりません。試作レベルのツールと実務で使える業務基盤の間には大きな溝があります。
試作はサンプル図面10枚で動いても、本番の数万枚で動かすには例外処理・権限制御・他システム連携・監査ログが要ります。
強度検討も同じです。降伏点・0.2%耐力・安全率といった判断基準は、ベテランの頭の中や過去の強度検討書のExcelに散在しがちで、ERPやPLMを導入していても解決しません。
ERPは「お金とモノの記録台帳」、PLMは「図面とBOMの保管庫」であり、いずれも「業務そのもの」を実行する仕組みではないからです。
過去の強度検討の判断(どの材料に・どの安全率を・なぜ採用したか)を組織の資産として引き継げる状態にしておくこと。それが、CAEとAIを安心して使い倒すための土台になります。
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FAQ(よくある質問)
Q1. 弾性変形と塑性変形の違いを一言でいうと?
力を取り除いたとき元の形状に戻るのが弾性変形、戻らず変形が残るのが塑性変形です。境目となる応力を降伏点と呼びます。
Q2. 降伏点と0.2%耐力の違いは何ですか?
軟鋼のように線図上に明確な折れ点(降伏点)が現れる材料では降伏点を使います。アルミ合金や銅のように明確な降伏点がない材料では、除荷後に0.2%の永久ひずみが残る応力(0.2%耐力)を降伏点に相当する値として使います。
Q3. 許容応力はどうやって決めますか?
基準強さ(降伏点または0.2%耐力)を安全率で割って決めます。安全率は荷重の性質で変わり、鋼の場合は静荷重3、片振り繰返し5、両振り繰返し8、衝撃12が古典的な目安です。
Q4. 加工硬化のメリット・デメリットは?
メリットは塑性変形により材料が硬くなる(変形抵抗が増す)こと。デメリットは粘り強さが低下して脆くなり、割れや破断が発生しやすくなることです。設計時には加工硬化を正確にコントロールできない点にも注意が必要です。
Q5. CAEの解析結果で応力が降伏点を超えていたらどうすればいいですか?
線形解析は降伏後の挙動を計算していないため、その結果の変位や応力分布は実物と一致しません。形状変更や板厚アップで降伏点以下(さらに安全率を考慮した許容応力以下)に収めるのが基本です。塑性域の挙動を評価したい場合は弾塑性解析(非線形解析)が必要です。
まとめ
弾性変形と塑性変形の違いは、強度設計のすべての土台になる知識です。「降伏点(または0.2%耐力)を基準強さとし、安全率で割った許容応力以下に抑える」——この原則と、線形CAEが塑性域を計算していないという事実さえ押さえておけば、解析結果やAIの回答を鵜呑みにせず、自分の判断で設計を進められるようになります。
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