タッチパネル(HMI)とは|PLCとの違い・役割・選び方を図解で解説【2026年版】

この記事の要点

  • タッチパネル(HMI)とは、作業者が機械を操作したり状態を確認したりするための「画面でできた操作盤」です。
  • 機械を実際に動かすのはPLC。タッチパネルは操作と見える化を担い、機器を直接制御はしません。
  • 主な機能は、操作・設定、監視・状態表示、警報・アラーム履歴、データ・グラフ表示の4つです。
  • 選ぶときは「画面サイズ・保護等級・通信規格・開発ソフト・拡張性」の5点を、自社の使い方に合わせて確認します。
  • 一方で、非常停止や保全時の動力遮断のように画面に載せない方がよい操作があります。動力しゃ断装置には法令上の要件があるためです。

工場の装置に付いている小さな液晶画面を触って、運転を始めたり数値を入れたりした経験はないでしょうか。あの画面が「タッチパネル」、制御の世界では HMI(Human Machine Interface=人と機械の接点) と呼ばれる機器です。この記事では、タッチパネルとは何か、よく一緒に語られるPLCとの違い、できること、選び方、そして「画面に載せない方がよい操作」までを、図解と表で整理します。

この記事が支援する判断:装置の設計・更新を担当する設計者や保全担当者が、制御盤の仕様を決める段階で「押しボタン盤をタッチパネルに置き換えるか、どのサイズ・保護等級を選ぶか、どの操作は物理スイッチで残すか」を決めるための判断材料をそろえます。

タッチパネル(HMI)とは?

タッチパネル(HMI)とは、作業者が機械を操作し、機械の状態を確認するための画面装置です。これまで押しボタン・切替スイッチ・表示ランプ・メーターを並べていた制御盤の役割を、タッチ操作できる1枚の画面にまとめたもの、と考えると分かりやすいです。画面に触れると操作の指示がPLCへ伝わり、PLCが持っている運転状態や生産数が文字・ランプ・グラフとして画面に返ってきます。FA(ファクトリーオートメーション)の分野では「プログラマブル表示器」「操作パネル」と呼ばれることもあり、いずれもほぼ同じ機器を指します。

ポイントは、タッチパネルが「情報のやりとりの窓口」であって「動力を扱う機器」ではないことです。モータやバルブに電気を流して動かすのはPLCと周辺機器の仕事で、タッチパネルはその手前で人の意思を受け取り、結果を見せる役割に徹しています。この分担を最初に押さえておくと、後述する選び方と「画面に載せない方がよい操作」の判断がぶれません。

「HMI」と「タッチパネル」は同じもの?

厳密には、HMIは「人と機械をつなぐ仕組み」という広い概念で、タッチパネルはそれを実現する代表的な機器、という関係です。この定義でいえば、押しボタンや表示ランプ、パトライト、さらにはパソコン上の監視画面(SCADA)もHMIに含まれます。ただし日本の製造現場では、HMIという語がほぼタッチパネル式の表示器を指して使われており、カタログ上も両者は区別されずに並記されることがほとんどです。検索でどちらの語を使っても、実務上は同じ機器の情報にたどり着くと考えて差し支えありません。

PR図面バンク — AIで図面を探す・活かすクラウド図面管理システム。

タッチパネルとPLCの違いは?

結論から言うと、タッチパネルは「人が操作・確認するための窓口」、PLCは「機械を実際に動かす頭脳」です。役割が分かれているため、装置はこの2つを組み合わせて構成されることが多くあります。タッチパネルで入力した指示はPLCに伝わり、PLCがプログラムに従って判断し、モータやバルブなどの現場機器へ指令を出します。逆に、PLCが持っている稼働数や異常の情報をタッチパネルが読み取って画面に表示します。

観点タッチパネル(HMI)PLC
主な役割操作・監視・表示(人との接点)判断・制御(機械を動かす)
使う人現場の作業者・オペレーター設計・保全の技術者がプログラム
見た目液晶画面(タッチ操作)箱型の制御機器(画面なしが基本)
機器への指令直接は出さない(PLC経由)モータ・バルブ等へ直接出す
主な仕事ボタン表示・数値入力・警報表示条件判断・順序制御・タイマ処理
表1:タッチパネル(HMI)とPLCの役割の違い。

PLCが何をしているのかは、ラダー図の解説記事で次のように説明されています。

PLCにあらかじめ書かれたプログラムによって、装置を動かしたり、周辺機器に動作指令を送ったりということをしています。

【2026年最新】PLCラダー図とは|基本5記号・書き方・主要3メーカー比較

つまり「動かす判断」はPLCの担当で、タッチパネルはその判断を引き出す入力と、結果を見せる出力を受け持つ、という分担になっています。

タッチパネル(HMI)でできることは?

タッチパネルでできることは、大きく「操作・設定」「監視・状態表示」「警報・アラーム」「データ・グラフ表示」の4つに分けられます。1台で複数の押しボタンやランプを置き換えられるため、制御盤の盤面と配線を減らせる点も実務上の利点です。

  1. 操作・設定:運転の開始・停止やモード切替、速度や温度などの設定値入力を画面上で行います。押しボタン盤の置き換えとして使えます。
  2. 監視・状態表示:装置の稼働・停止や生産数を、現場へ行かずに画面で確認できます。
  3. 警報・アラーム:異常が起きたときに警報を表示し、いつ・どの異常が出たかを履歴として残せます。対処手順を併記しておけば復旧も早まります。
  4. データ・グラフ表示:温度や生産数の推移をグラフ化し、稼働データをネットワークへ出力できます。IoTや上位システムへ連携する入口にもなります。

こうしたFAの機器全般について、入門記事では次のように位置づけられています。

FAを実現する機器がFA機器。工場の省人化やコスト削減を実現するにはFA機器が必要不可欠です。

FA機器とは?種類や導入するメリットについて詳しく解説
PR図面バンク — AIで図面を探す・活かすクラウド図面管理システム。

タッチパネルの選び方は?

タッチパネルを選ぶときは、画面サイズ・保護等級・通信規格・開発ソフト・拡張性の5点を、自社の使い方に合わせて確認すると失敗が減ります。多機能な上位機種ほど価格も画面作成の工数も上がるため、「本当に使う機能」を起点に絞り込むのが基本です。以下では、判断に迷いやすい画面サイズと保護等級を先に、残りの3点をまとめて整理します。

画面サイズはどう決める?

画面サイズは「設置スペースに入るか」ではなく、1画面に載せたい情報量から逆算すると決めやすくなります。ボタンを数点置くだけなら小型で足り、トレンドグラフや複数工程の状態を同時に見せたいなら大型が要ります。小さすぎる画面に情報を詰めると、押し間違いと画面の切り替え回数が増え、かえって操作が遅くなります。次の表は、載せたい情報からサイズ帯を絞り込むための目安です。

画面サイズの目安1画面に載せられる情報の目安主な使いどころ
3〜5型操作ボタン数点+数値表示2〜3点単機能の装置・押しボタン盤の置き換え
5〜7型運転操作+状態表示+警報一覧一般的な単体装置(もっとも採用が多い帯)
10〜12型複数工程の監視+トレンドグラフライン単位の監視・段取り操作
15型以上ライン全体の俯瞰+一覧表形式の表示中央監視盤・集中操作盤
表2:載せたい情報量から画面サイズを逆算するための目安。ラインナップは機種により異なるため、最終的にはメーカーのカタログで確認します。

保護等級(IP)はどこまで必要?

設置環境は、IPに続く2桁の数字(保護等級)で判断します。これは日本産業規格 JIS C 0920(対応国際規格 IEC 60529)で決められた表記で、1桁目が粉じんなどの固形物に対する保護、2桁目が水に対する保護を表します。粉じんが舞う環境なのか、切削油や洗浄水がかかるのかで必要な等級が変わるため、「とりあえず高い等級」ではなく現場の実態に合わせて選びます。

表記意味(JIS C 0920 / IEC 60529)想定する現場
IP541桁目5=防じん形(動作を妨げる量の粉じんが入らない)/2桁目4=防まつ形(あらゆる方向からの飛まつに耐える)粉じんが舞う一般的な工場
IP651桁目6=耐じん形(粉じんの侵入がない)/2桁目5=防噴流形(ノズルからの噴流水に耐える)切削油や水がかかる、水で洗浄する工程
IP671桁目6=耐じん形/2桁目7=防浸形(規定の圧力・時間で水中に浸しても浸水しない)一時的な水没の可能性がある環境
表3:タッチパネルの保護等級の読み方。等級はJIS C 0920(IEC 60529)の定義による。

注意したいのは、カタログの等級が「前面パネルのみ」を指している製品が多い点です。タッチパネルは制御盤の扉に埋め込んで使うことが前提で、背面は盤の中に収まるため対象外になっていることがあります。屋外や洗浄環境で使うときは、前面と背面のどちらの等級なのか、パッキンの取り付け条件は何かを、必ず仕様書側で確認してください。

通信・開発ソフト・拡張性で見るべき点は?

残る3点は、立ち上げ工数と将来の拡張に直結します。通信規格は、使うPLCのメーカー・機種に対応しているかが最優先です。対応していなければそもそも接続できず、変換機を挟む分だけ構成も故障点も増えます。開発ソフトは、画面を作るソフトの使い勝手と、過去に作った画面資産を流用できるかを見ます。同じメーカーで揃えるほど流用が効き、立ち上げが速くなります。拡張性は、将来データ収集やIoTへ広げる可能性があるなら、データ出力やネットワーク対応の有無を先に押さえておきます。

なお、選定の判断が特定のベテランに依存していると、似た装置でも担当者ごとに機種がばらつき、保守部品や画面作成の知識が分散します。これは機器選びに限らず、設計・調達・保全の判断材料が個人に閉じてしまう製造業に共通の構造的な課題でもあります。選定の観点を上記5点のような形で明文化しておくこと自体が、属人化を防ぐ手当てになります。

タッチパネルへの置き換えが向かない操作は?

タッチパネルは万能ではありません。安全に関わる操作と、保全時に確実な遮断が必要な操作は、物理的なスイッチとして残すのが原則です。画面が割れる・フリーズする・電源が落ちるといった事象が起きると、画面上の操作系はまとめて使えなくなります。押しボタンなら1つ壊れても他は生きていますが、1枚の画面に集約した操作は同時に失われる——これが集約の裏側にあるリスクです。

非常停止と保全時の遮断は、なぜ画面に載せないのか?

法令の側からも要件が課されています。労働安全衛生規則は、機械ごとに設ける動力しゃ断装置について次のように定めています(第103条第3項)。

事業者は、第一項の動力しや断装置については、容易に操作ができるもので、かつ、接触、振動等のため不意に機械が起動するおそれのないものとしなければならない。

労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第103条第3項(e-Gov法令検索・2026年9月18日取得)

「容易に操作ができる」という要件に照らすと、画面の階層をたどらないと到達しない操作は適しません。さらに同規則第107条第2項は、掃除・検査・修理のために運転を停止したときは起動装置に錠を掛ける等の措置を求めています。画面上のボタンには錠を掛けられないため、この要件は物理的な断路器やスイッチでしか満たせません。次の表に、画面へ載せてよい操作と残すべき操作を整理します。

どの操作を画面に載せ、どれを残すのか?

操作・機能タッチパネルに載せる物理スイッチ等で残す判断の理由
通常運転の開始・停止○—状態表示と一体化でき、操作履歴も残せる
設定値の入力・段取り切替○—数値入力と一覧表示は画面が明らかに有利
警報の確認・履歴の参照○—履歴と対処手順を同じ画面に置ける
非常停止✕○「容易に操作ができる」ことが求められ、画面階層の奥は不適
保全時の動力遮断・施錠✕○起動装置への施錠が前提(規則第107条第2項)
手動の寸動・治具調整△○機械を目視しながら操作するため手元スイッチが安全
表4:押しボタン盤からタッチパネルへ置き換える際の可否判断。安全・保全に関わる操作は物理スイッチで残す。

このほか、操作が3〜4点しかない単純な装置では、タッチパネルの導入費用と画面作成の工数が押しボタンの配線コストを上回ることがあります。装置の台数が少なく画面の流用も効かない場合は、無理に置き換えない判断も十分に合理的です。

FAQ(よくある質問)

タッチパネルとタブレットは何が違う?

見た目は似ていますが、産業用タッチパネル(HMI)は工場の温度・粉じん・振動に耐える設計で、PLCと安定して通信し、長期間連続運転することを前提にしています。市販のタブレットは環境耐性や長期供給の面で産業用途には向きません。

タッチパネルだけで装置は動かせる?

基本的にはPLCと組み合わせて使います。タッチパネルは操作と表示を担い、機械を動かす判断や順序制御はPLCが行うためです。小規模な装置ではPLC機能を内蔵したタッチパネルもあります。

画面はどうやって作る?

各メーカーが提供する専用の作画ソフトで、ボタンやランプ、数値表示などの部品を画面に配置して作ります。PLCのどのデータと連動させるかを設定することで、操作と表示がつながります。

IP65とIP67はどちらを選べばよい?

水がかかる・洗浄する工程ならIP65(防噴流形)で足ります。IP67(防浸形)が要るのは、一時的に水没する可能性がある環境です。等級が高いほど選べる機種と価格帯が限られるため、実際の水のかかり方から必要な等級を決めてください。

古い押しボタン盤から置き換えるメリットは?

多数のボタン・ランプを1画面にまとめられるため、盤面のスペースと配線を減らせます。さらに警報履歴やデータ表示も加えられ、状態の見える化が進みます。一方で画面が壊れると操作系がまとめて止まるため、非常停止など安全に関わる操作は物理ボタンで残すのが一般的です。

まとめ

タッチパネル(HMI)は、作業者と機械をつなぐ「画面の操作盤」です。操作・監視・警報・データ表示を1台で担い、機械を実際に動かすPLCと役割を分担します。選ぶときは画面サイズ・保護等級・通信規格・開発ソフト・拡張性の5点を、自社の使い方に照らして確認するのが近道です。そのうえで、非常停止と保全時の動力遮断は法令上の要件から物理スイッチで残す——この線引きを最初に決めておけば、後戻りのない仕様になります。まずは身近な装置のタッチパネルが、上の4機能のどれを使っているかを見てみると、理解が一気に進みます。

出典

  • 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第103条・第107条/e-Gov法令検索(2026年9月18日取得):https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
  • JIS C 0920「電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)」(対応国際規格 IEC 60529)——本記事の保護等級の定義はこの規格による
  • 当サイト関連記事:PLC・FA機器・シーケンス制御の基礎解説(本文中にリンク)

あわせて読みたい3本

PR図面バンク — AIで図面を探す・活かすクラウド図面管理システム。

次のアクション

製造DXドットコムは、製造業の AX(AI Transformation)= 現場の業務を AI で作り替えることを扱うメディアです。運営は株式会社 New Innovations。

記事一覧
PR図面バンク — AIで図面を探す・活かすクラウド図面管理システム。

製造業の基礎知識 の記事をすべて読む(236 本)

製造業のAI活用、週1回の要点だけ

現場で使える事例と手順を厳選してお届けします。
購読は無料、配信停止はいつでもできます。