ばね(コイルばね)とは?ばね定数・種類(圧縮・引張・ねじり)とフックの法則・選び方を図解で解説【2026年版】

この記事の要点
- ばねは荷重を受けて弾性変形し、蓄えた力で元に戻ろうとする機械要素。設計でまず決めるのは「種類」と「ばね定数」です。
- コイルばねは大きく圧縮・引張・ねじりの3種類。荷重の向き(押す・引く・回す)で選びます。
- ばね定数kは「1mmたわませるのに必要な力」。フックの法則 F=k×x で、荷重とたわみが比例する範囲で成り立ちます。
- コイルばねのばね定数は k=G・d⁴/(8・D³・Na)。素線径dの4乗で効くため、線径のわずかな違いが硬さを大きく変えます。
- 選定では、へたり(永久変形)・繰り返し荷重による疲労・座屈・材料を、使用条件とセットで確認します。
ばね(スプリング)は、荷重を受けると弾性変形し、蓄えた力で元に戻ろうとする性質を利用する機械要素です。緩衝、位置の保持、戻し、力の調整など、装置のあらゆる場所で使われます。設計で最初に決めるのは「どの種類のばねを、どのくらいの硬さ(ばね定数)で使うか」です。本記事では、コイルばねの3種類、ばね定数とフックの法則、ばね定数の計算式、そして選び方の着眼点を図解で解説します。
ばねとは?種類とばね定数で何が決まるのか?
結論から言うと、ばねは弾性変形を利用する部品で、選定は「種類」と「ばね定数」の2つでほぼ決まります。まずこの2軸を押さえると、以降の設計がぶれません。
ばねとは、外から力を受けると弾性変形し、力を取り除くと元の形に戻ろうとする性質(弾性)を、積極的に利用した機械要素です。ゴムのように大きく変形する材料ではなく、金属線を巻く・曲げるといった形状の工夫で、必要な硬さと復元力を作り込む点が特徴です。
コイルばねの3種類(圧縮・引張・ねじり)はどう違う?
荷重の向きで選びます。押し縮めるなら圧縮コイルばね、引き伸ばすなら引張コイルばね、回す(トルク)なら ねじりコイルばね です。
圧縮コイルばねは、押し縮める方向の荷重を受けて反発力を返すもっとも一般的なばねで、バルブ、金型、緩衝などに使われます。引張コイルばねは両端のフックを引き伸ばす向きで使い、戻しやテンションの用途に向きます。ねじりコイルばねは端末のアーム(脚)を回す向きに使い、ヒンジの戻しトルクなどに使われます。荷重の向きが逆のばねは基本的に置き換えできないため、最初に「押す・引く・回す」のどれかを確定させることが出発点になります。
| 種類 | 荷重の向き | 代表的な用途 | 選定時の留意点 |
|---|---|---|---|
| 圧縮コイルばね | 押し縮める | バルブ・金型・緩衝 | 長く細いと座屈しやすい |
| 引張コイルばね | 引き伸ばす | 戻し・テンション | フック部が応力集中点になりやすい |
| ねじりコイルばね | 回す(トルク) | ヒンジ・戻しトルク | 荷重は「力」でなく「トルクと角度」で扱う |
ばね定数とは?フックの法則で何が決まる?
ばね定数kは「1mm(回転系なら1°)たわませるのに必要な力」で、ばねの硬さを表します。数字が大きいほど硬い(動かしにくい)ばねです。
ばね定数とは、ばねを単位量だけ変形させるのに必要な荷重の大きさ(圧縮・引張ではN/mmなど)です。そしてフックの法則とは、弾性の範囲内では荷重Fとたわみxが比例する(F=k×x)という関係を指します。荷重をたわみで割った傾きがそのままばね定数になる、と考えると図で理解しやすくなります。
注意したいのは、この比例関係が成り立つのは弾性の範囲内だけ、という点です。荷重を上げ続けて材料が降伏点を超えると、力を抜いても元に戻らない永久変形(へたり)が残り、直線から外れます。ばねは「元に戻る範囲で使う部品」だと押さえておくと、後述の選定基準が腑に落ちます。
両者の境目の点を降伏点と呼び、強度計算ではこの降伏点以下の応力を許容応力の基準とします。
コイルばねのばね定数はどう計算する?
コイルばねのばね定数は k=G・d⁴/(8・D³・Na) で概算できます。素線径dの4乗で効くのが最大の勘所です。
各記号は、G=横弾性係数(材料で決まる定数)、d=素線(線材)の径、D=コイルの平均径、Na=有効巻数です。横弾性係数Gの一般値は、ピアノ線・硬鋼線でおよそ78,500 N/mm²、ばね用ステンレス鋼線でおよそ68,600 N/mm²とされます(実材料・熱処理で変わるため、設計時は材料規格やメーカー値を確認してください)。
この式で覚えておきたいのは、素線径dが4乗で効くことです。たとえば線径を1.1倍にするだけで、ばね定数はおよそ1.1の4乗=約1.46倍に跳ね上がります。逆に有効巻数Naを増やすと柔らかく、コイル平均径Dを小さくすると硬くなります。「硬さは主に線径で作り、微調整を巻数で行う」というのが実務の感覚です。
概算例として、d=2mm、D=16mm、Na=8巻、G=78,500 N/mm² を代入すると、k≒4.8 N/mm(10mmたわませるのに約48N)になります。これは式に代入しただけの概算で、実際には端末形状や座巻の処理などで数値は変わります。あわせて、コイル平均径を素線径で割った「ばね指数 c=D/d」も確認します。目安は一般に4〜15(扱いやすいのは4〜10程度)で、小さすぎると加工が難しく応力も高くなり、大きすぎると座屈やばらつきが出やすくなります。
注意したいのは、強い材料を選べば安全というわけではないことです。材料の強度は設計上の余裕(安全率)とセットで考える必要があります。
ばねの選び方は?失敗しない4つの着眼点
ばねの選定は、①荷重とたわみ ②へたり(永久変形)③繰り返し(疲労)④座屈・材料 の4点を、使用条件とセットで確認すると失敗しにくくなります。
①荷重とたわみでは、「どのくらいの力で、どのくらい縮める(伸ばす)のか」を数値で決めます。この2つが決まればフックの法則から必要なばね定数が逆算できます。②へたりは、使用時の最大応力が弾性の範囲に収まっているかの確認です。降伏点を超える使い方をすると、時間とともに自由長が縮み、狙った力が出なくなります。
③繰り返し荷重がかかるばねでは、疲労を考えます。1回では壊れない応力でも、何万回・何百万回と繰り返すと折損することがあり、想定する繰り返し回数を条件に入れておく必要があります。④圧縮ばねでは、長く細い形状だと横に逃げる座屈が起きやすいため、自由長とコイル径のバランスを見ます。材料は、汎用のピアノ線・硬鋼線に加え、耐食性が要るならステンレス鋼線、と用途で選び分けます。
設計者が一日のうち4割を、図面を探したり、部品表をメンテしたり、設計変更を関係部署に伝えたりすることに使っている
こうしたばねの選定条件(形番・線径・巻数・材料・計算の前提)が担当者個人のExcelや記憶に留まっていると、次の設計で毎回ゼロから選び直すことになります。過去の選定根拠を検索・再利用できる形で残せているかは、部品選定の速さと品質を左右します。
ばねに関するよくある質問(FAQ)
ばね定数の単位は何ですか?
圧縮・引張コイルばねではN/mm(1mmたわませるのに必要な力)が一般的です。ねじりコイルばねなど回転系では、単位角度あたりのトルク(N・mm/° など)で表します。
ばね定数を2倍にするにはどうすればよいですか?
もっとも効くのは素線径dを上げることです。ばね定数は線径の4乗で効くため、他を変えずに定数を上げたいときは線径の見直しが近道です。有効巻数Naを半分にする、コイル平均径Dを小さくする方法でも硬くなります。
圧縮ばねと引張ばねは入れ替えて使えますか?
基本的にはできません。荷重の向き(押す・引く)が逆で、引張ばねはフックで引き伸ばす前提の形状のため、圧縮用途にそのまま転用すると狙った特性が出ません。
ばねが「へたる」のはなぜですか?
弾性限度を超える応力、高温環境、繰り返し荷重などが原因です。使用時の最大応力が降伏点以下に収まるように設計するのが、へたりを防ぐ原則です。
板ばねや皿ばねはコイルばねと何が違いますか?
形状が違います。板ばねは板材のたわみ、皿ばねは円錐状のワッシャ形状を使い、省スペースで大きな荷重を受けたり、荷重とたわみが直線にならない非線形の特性を得たりできます。用途に応じてコイルばねと使い分けます。
自己診断:ばね選定の抜け漏れチェック
次の5項目のうち、いくつに「はい」と答えられるかを確認してみてください。
- 使うばねの荷重とたわみ(回転系ならトルクと角度)を数値で押さえていますか。
- ばね定数を、種類・線径・巻数・材料のどれで作り込むか説明できますか。
- 使用時の最大応力が弾性の範囲(へたらない領域)に収まる確認をしていますか。
- 繰り返し荷重の回数と、疲労・へたりの想定を条件に含めていますか。
- 過去に選定したばねの形番・計算条件を、次の設計で検索・再利用できますか。
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出典・参考
- JIS B 2704-1:2018「圧縮及び引張コイルばね―第1部:設計・性能試験方法」(ばね定数の計算・設計の考え方)
- JIS G 3522「ピアノ線」/JIS G 3521「硬鋼線」/JIS G 4314「ばね用ステンレス鋼線」(材料規格)
- 横弾性係数の一般値(ピアノ線・硬鋼線 約78,500 N/mm²、ばね用ステンレス鋼線 約68,600 N/mm²)は各材料の代表値。実材料・熱処理で変わるため、設計時は材料規格・メーカー値を確認してください。
- 本記事の図表は、ばね定数の式(k=G・d⁴/8・D³・Na)に代入した編集部の概算および概念図であり、特定製品の実測値ではありません。










