設備保全はTBMとCBMのどちらで回すのか?——設備別の使い分け表と、予知保全が向かない3条件【2026年版】

この記事の要点
- 設備保全はTBM(時間計画保全)・CBM(状態基準保全)・BM(事後保全)の3つに分かれます。どれが優れているかではなく、設備ごとに割り当てる問題です。
- 割り当てを決める材料は4つ。止まったときの波及・予備品の入手期間・劣化が時間に比例するか・法定検査の有無です。
- CBMへ移す前に決めるのは「何を測るか」です。電流 → 温度 → 振動 → 油分析の順に初期費用が上がります。
- 正常時のデータが無い設備は、センサを付けてもしきい値を決められません。先にTBMで回しながらデータを貯める段階が要ります。
- 法定の定期自主検査がかかる設備、壊れても波及しない設備、運転条件が毎回変わる設備に予知保全は向きません。
この記事が支援する判断:生産技術・保全部門の担当者が、老朽化した設備の保全計画を見直すにあたり「どの設備をこれまでどおり周期交換で回し、どの設備に状態監視を入れるか」を、センサやシステムの見積りを取る前に切り分ける場面を想定しています。
設備保全にはどんな種類があるのか?
保全は、日本産業規格のディペンダビリティ用語(JIS Z 8115:2019)で予防保全と事後保全に大別されています。予防保全はさらに、あらかじめ決めた周期で行う時間計画保全と、対象の状態を測って判断する状態基準保全に分かれます。
現場ではこれをTBM(Time Based Maintenance)、CBM(Condition Based Maintenance)、BM(Breakdown Maintenance)と略して呼びます。予知保全という言葉は、状態監視のデータから劣化の進み方を読み、交換時期を前もって見積もるCBMの発展形を指して使われます。

ここで押さえておきたいのは、BMを選ぶこと自体は手抜きではないという点です。他工程に波及せず、予備品で数十分で復旧できる設備に監視システムを入れれば、守る価値より手間のほうが大きくなります。BMは条件を確かめたうえで意図して選ぶ選択肢です。
どの設備をどの方式で回すのか?
方式の割り当ては設備の新旧や価格では決まりません。次の5行を自社の設備に当てはめてください。5行のうち3行以上が同じ列に入れば、その列の方式が第一候補になります。
| 確認項目 | BM(事後保全)が妥当 | TBM(時間計画保全)が妥当 | CBM(状態基準保全)が妥当 |
|---|---|---|---|
| 止まったときの波及 | その設備だけで止まる | ラインが止まる | ラインが止まり、復旧に数日かかる |
| 予備品の入手 | 在庫があり即日交換できる | 手配に1週間程度 | 特注品で数か月かかる |
| 劣化の進み方 | 突発的で予兆が出ない | 稼働時間にほぼ比例する | 負荷で変動し、時間と相関しない |
| 法定の定期自主検査 | 対象外 | 対象(周期の順守が前提) | 対象だが、法定検査に上乗せして監視する |
| 状態を測れるか | 測る必要がない | 測らなくても周期で足りる | 電流・温度・振動が常時取れる |
| 代表的な設備 | 照明、予備機のある小型ポンプ | 減速機の給油、ベルト、フィルタ | 主軸、大型モータ、コンプレッサ |
4行目の「法定の定期自主検査」は、他の行と性質が違います。労働安全衛生法第45条により、事業者はボイラーやクレーン、フォークリフトなど政令で定められた機械等について、定期に自主検査を行う義務があります。これは状態が良好でも省略できません。CBMを入れる場合も、法定検査を置き換えるのではなく、その上に監視を重ねる形になります。
着手可否は「量・型・ばらつき」の3条件で粗く切り分けられます。3行のうち1行でも左端(やらない方がいい)に入るなら、機種選定に進む前にその条件を潰すのが先です。
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状態監視では何を測ればよいのか?
CBMに進むと決めた設備でも、次に「何を測るか」で迷います。結論から言えば、すでに取れているものから順に試すのが費用対効果の面で確実です。

電流は既設の盤から取れることが多く、追加工事が最小で済みます。モータの負荷変化として現れる詰まりや過負荷であれば、これで拾えます。温度は非接触でも測れるため、軸受や配電盤の発熱を見るには手軽です。
振動は軸受の傷や芯ずれといった回転機械特有の劣化を早く捉えられますが、センサの取付工事が要ります。油分析は採取と外部分析の手間がかかる代わりに、摩耗粉から進行度を読めます。
センサ選びで失敗しないための基準は、①検出対象 ②検出距離 ③設置環境 ④応答速度の4つです。この順に確認すれば、候補は自然と絞り込まれます。
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予知保全が向かない条件とは?
片面だけの推奨は判断材料になりません。次の3つに当てはまる設備では、予知保全に投資しても回収が難しくなります。
条件1:法定の定期自主検査が課されている設備
フォークリフトや車両系建設機械、高所作業車は、1年を超えない期間ごとに1回、有資格者による特定自主検査を受けることが定められています(不整地運搬車は2年を超えない期間ごとに1回)。状態監視で「まだ使える」と判定できても、この周期は短縮も省略もできません。監視を入れるなら、検査の置き換えではなく突発停止の削減を目的に据える必要があります。
条件2:止まっても波及せず、すぐ直せる設備
予備機がある、あるいは在庫部品を交換すれば数十分で復旧する設備では、監視で得られる時間の価値が小さくなります。センサ費用より、取り付け後に発生するしきい値の見直しとアラート対応の工数が重くのしかかります。この条件に当てはまる設備はBMのまま残すのが合理的です。
条件3:運転条件が毎回変わる設備
多品種少量で、段取り替えのたびに回転数も負荷も変わる設備では、同じ振動値が正常にも異常にもなります。条件ごとに正常範囲を分けて持つ必要があり、品種が増えるほど基準の管理が追いつきません。まず条件を揃えられる工程から始めるのが現実的です。
CBMへ移すとき、最初につまずくのはどこか?
センサを付けた後、多くの現場が止まるのはしきい値を決める段階です。メーカーの推奨値はあくまで一般値で、据付状態や周囲の振動源によって同じ設備でも平常値は変わります。したがって正常に動いている期間のデータを一定期間ためて、自社の設備の平常値を掴む工程が先に必要になります。
もうひとつのつまずきは、判断そのものが記録に残らないことです。「この値なら様子見」「この音が出たら交換」という判断は熟練者の頭の中にあり、しきい値として書き出されていないことが少なくありません。センサを付ける前に、いま誰がどの根拠で交換を決めているかを言語化するほうが先です。
このワークフローのどこで判断がばらつくのか。痛みを「人・プロセス・情報・ツール」の4つに分けると、原因が立体的に見えてきます。
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FAQ
TBMからCBMへ全面的に切り替えるべきですか?
全面切り替えはおすすめしません。CBMが効くのは、劣化が稼働時間と相関せず、止まると復旧に日数がかかる設備に限られます。稼働時間にほぼ比例して摩耗するベルトやフィルタは、周期交換のほうが管理も費用も軽くなります。判断基準の表の5行で設備を仕分け、対象を絞ってから着手してください。
状態監視はどのくらいの期間データを取れば判断できますか?
期間より、正常時の運転条件をひととおり通過したかどうかで考えます。季節で周囲温度が変わる設備、生産品種で負荷が変わる設備では、その変動を一巡するまでは平常値が確定しません。逆に、条件がほぼ一定の連続運転設備であれば、数週間でも傾向は掴めます。
古い設備でも状態監視は入れられますか?
通信機能がない設備でも、後付けのセンサや電流の測定から始められます。制約になるのは設備の年式ではなく、測った値を誰がいつ見て、どう判断するかが決まっているかどうかです。データを集める仕組みだけ先に作ると、見られないまま蓄積されていく状態になりやすい点に注意してください。
まとめ
保全方式の見直しは、センサやシステムの比較からではなく設備の仕分けから始めてください。「止まったときの波及」「予備品の入手期間」「劣化が時間に比例するか」「法定検査の有無」の4点を当てはめれば、CBMの対象はごく一部に絞られます。
そして絞り込んだあとに効いてくるのは、測定機器の精度ではなくしきい値を誰が決め、誰が見直し続けるかという運用設計です。ここが決まらないまま導入した監視は、アラートが鳴るだけの仕組みとして現場から見られなくなります。
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出典
- 日本規格協会「JIS Z 8115:2019 ディペンダビリティ(総合信頼性)用語」 https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+Z+8115:2019(2026年9月11日 閲覧)— 予防保全・事後保全・時間計画保全・状態基準保全の用語区分
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第45条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057(2026年9月11日 閲覧)— 定期自主検査の実施義務
- 日本建設機械施工協会 建設荷役車両安全技術協会「特定自主検査」 https://www.sacl.or.jp/inspection/(2026年9月11日 閲覧)— 検査周期と有資格者要件
- 経済産業省「ものづくり白書」 https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/(2026年9月11日 閲覧)— 製造現場の設備・人材に関する課題
- 本文中の図は、分類と測定対象の位置づけを示す概念図です。個々の設備の検査周期・しきい値・測定手法は、設備メーカーの技術資料および適用される法令で必ず確認してください。
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