ロボットの安全柵はどう決めるのか?——固定柵・扉のインターロック・ライトカーテンの使い分けと、柵が守りにならない5つの条件【2026年版】

この記事の要点
- 安全柵は「人が入らない場所」「扉から入る場所」「手だけ入れる場所」に分け、固定柵・インターロック付きの扉・光線式安全装置を使い分けます。
- 柵の高さや開口部は腕や脚が届かない距離(JIS B 9718)、光線式安全装置の位置は遮ってから止まるまでに手が進む距離(JIS B 9715)で決めます。
- 扉のスイッチは接点が溶着しても切れる構造を選び、無効化されにくい位置に付けます。
- 全身で入れる扉には、中に人がいるまま再起動されない仕組みを加えます。
- 何度も開ける場所を固定柵にする、可動範囲と柵の間に挟まる空間を残す、といった設計は避けるべきです。
この記事が支援する判断:ロボットセルの導入を担当する生産技術者が、SIerのレイアウト図を受け取ったときに、柵の種類・扉の位置・インターロックが自社の作業に合っているかを確かめ、発注前に直す箇所を決める場面を支援します。
レイアウト図の柵を見て「高さは足りるのか」「扉はどこに付けるべきか」と迷う担当者は少なくありません。結論から言えば、柵の設計は「その場所に人がどれだけの頻度で、体のどこまで入るか」で決まります。入らない場所は固定柵で囲い、入る場所には止まる扉を付け、手だけ入れる場所は手が届く前に止まる位置に装置を置きます。
ロボットの安全柵は、どんな場面で何を使い分けるのか?
労働安全衛生規則第150条の4は、産業用ロボットの運転中に「当該産業用ロボツトに接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、さく又は囲いを設ける等当該危険を防止するために必要な措置を講じなければならない」と定めています(e-Gov法令検索で2026年10月13日に確認)。柵なしで運転できる条件(2013年の基発1224第2号)は柵をなくせる条件を整理した記事で扱い、本稿は柵を設ける場合の設計を扱います。
選び方は、厚生労働省「機械の包括的な安全基準に関する指針」の解説(基安安発0731004号)が参考になります。解説はガードを固定式・可動式(扉)・調節式に分け、正常な運転で人が入る必要がなければ全体を囲い、固定式ガードを優先して採用することが望ましいとしています。
| 場所の性質 | 使う安全防護 | 向く場面 | 確かめること |
|---|---|---|---|
| 運転中に人が入らない | 固定式ガード(固定柵) | セルの外周 | 容易に外せない取り付けか |
| 段取りや保守で人が入る | インターロック付き可動式ガード(扉) | 段取り替え、チョコ停の復旧 | 開けたら止まり、閉めても動き出さないか |
| 部品の供給で手だけ入れる | 光線式安全装置(ライトカーテン)など | 投入口、取り出し口 | 止まる前に手が危険区域へ届かない位置か |
| 全身が入れて中が見えにくい | 在室検知や施錠による管理 | 大型セル、死角のあるセル | 人がいるまま再起動できないか |
柵の高さ・すき間・ロボットまでの距離は、何で決めるのか?
同じ解説は、ガードや保護装置が有効に働くための距離を「JIS等において『安全距離』とされるもの」とし、格子状のガードなら格子の間から身体が入り得る距離以上、光線式安全装置なら遮ってから機械が止まるまでに身体が進み得る距離以上を取るよう示しています。上肢・下肢の安全距離は現在 JIS B 9718:2013(ISO 13857:2008 対応)にまとめられています。数値は規格の表と装置の仕様で確認します。
| 決める項目 | 根拠になる考え方・規格 | SIerに確かめる点 |
|---|---|---|
| 柵の高さと、柵から危険区域までの距離 | 柵の上から腕が届かないこと(JIS B 9718) | ハンドとワークを含む最大可動範囲で測ったか |
| 金網の目や開口部の大きさ | 開口部から腕や指が届かないこと(JIS B 9718) | 開口部と危険区域までの距離の組み合わせ |
| 柵の下端と床のすき間 | 脚が下から届かないこと(JIS B 9718) | 床の段差や配線ダクトでできるすき間 |
| 光線式安全装置の設置位置 | 遮ってから止まるまでに進む距離(JIS B 9715) | 停止時間の実測値と、光軸の間隔 |
| ロボットと周辺設備の間隔 | 挟まれない最小すきま(JIS B 9711)。2013年の留意事項通達は最接近距離500mm以上を一例として示す | 柵・架台・コンベヤとアームの最接近の位置 |
見落としやすいのは、可動範囲にハンドやワークの分を足していないことと、光線式安全装置の位置をセンサの応答時間だけで決め、ロボットが実際に止まるまでの時間を測っていないことです。重い物を持って速く動くほど停止距離は伸びるため、設置後に実測します。
扉のインターロックは、どう選べばよいのか?
扉は、柵の中で最も事故につながりやすい部分です。過去記事でも次のように書きました。
柵に扉を設ける場合、扉を開けたらロボットが停止する仕組み(インターロック)が伴わなければ、柵は入口を作っただけになります。
産業用ロボットの事故はなぜ起きるのか?——柵をなくせる条件・適さない条件と、導入前に決める5つの判断【2026年版】
解説は扉の開を検知するスイッチについて、機械接点式なら「接点部分の溶着による作動不良を防ぐため」強制的に接点が切り離される構造とし、光電式・磁気式などは求められる安全制御のカテゴリー(JIS B 9705-1)に合った機器を選ぶよう求めています。テープや磁石で安全機能が無効化される例にも注意を促しています。なお、扉のインターロックと非常停止は役割が違います。
非常停止は人が操作する付加保護方策、扉のインターロックは危険源へ近づけないための安全防護です。
非常停止回路とは?安全リレーの仕組みと停止カテゴリ0/1/2の違い・安全カテゴリ(PL)を図解で解説【2026年版】
人が全身で入れる扉には、何を足すのか?
全身が入れるセルでは、中に人がいるのに外の誰かが扉を閉めて再起動する事故の型が残ります。解説は、中の人を検知する装置を設けて人がいるときは起動できないようにすることを求め、その手段にレーザスキャナやマットのほか施錠による進入管理も含めています。全身が入れる扉を閉めると自動で動き出す扉(制御式ガード)にしてはならないこと、内側から開けられる解除手段が望ましいことも示しています。教示や保守で中に入る作業は第150条の3・第150条の5が別に措置を定めているため、手順も同時に決めます。
避けるべき安全柵の設計とは?——柵が守りにならない5つの条件
解説は、ガードが作業を著しく妨げると取り外しや無効化のおそれが高まると指摘しています。次の5つに当てはまる柵は、安全防護として働きません。
| 避けるべき設計 | 守りにならない理由 | 代わりにやること |
|---|---|---|
| 何度も開ける場所をボルト留めの柵にする | 外したまま運転される | インターロック付きの扉か光線式安全装置にする |
| 扉のスイッチを簡単に殺せる位置に付ける | 開けても止まらない状態が常態になる | 強制開離・施錠式のスイッチを触りにくい位置に付ける |
| 柵と最大可動範囲の間に人が挟まる空間を残す | 保守で入った人がアームと柵の間に挟まれる | 最接近距離を取るか、柵を外側に寄せる |
| 光線式安全装置を、停止時間を測らずに取り付ける | 遮ってから止まるまでに手が危険区域に届く | 設置後に停止時間を実測し、距離を確かめる |
| ロボットやハンドを変えたあと、柵を見直さない | 可動範囲や停止距離が変わり、前提が崩れる | 変更のたびにリスクアセスメントをやり直す |
よくある質問(FAQ)
ロボットの安全柵に、決まった高さはありますか?
法令で一律の高さは決まっていません。柵から危険区域までの距離と組み合わせて、柵の上から腕が届かないように決めます。組み合わせの例は JIS B 9718 の表で確かめます。
扉のインターロックは、普通のリミットスイッチでもよいですか?
機械接点式のスイッチを使う場合は、扉の動きに連動して強制的に接点が切り離される構造のものを選びます。接点が溶着すると、扉を開けても止まらなくなるためです。光電式や磁気式のスイッチを使う場合は、求められる安全制御のカテゴリーに合った機器を選びます。
協働ロボットなら、柵は要りませんか?
製品の種類だけでは決まりません。リスクアセスメントで、接触により危険が生ずるおそれが無くなったと評価できる場合に、柵なしの運転が認められます。持たせるワークや周辺設備によっては、協働ロボットでも柵や光線式安全装置が必要になります。
ライトカーテンは、ロボットからどれくらい離せばよいですか?
光線を遮ってからロボットが止まるまでに手や体が進む距離より遠くに置きます(考え方は JIS B 9715)。止まるまでの時間は速度や持つ物の重さで変わるため、設置後に実測します。
まとめ
安全柵は、場所ごとに人が入る頻度と体の入り方を見て、固定柵・インターロック付きの扉・光線式安全装置を割り当てます。寸法は JIS B 9718・B 9715 の考え方で決め、扉のスイッチは溶着しても切れる構造にし、全身が入れる扉には再起動を防ぐ仕組みを加えます。作業を妨げる柵は外されるため、開ける頻度に合った防護を選ぶことが事故を防ぐ近道です。
次に読みたい関連記事
- 産業用ロボットの事故はなぜ起きるのか?——柵をなくせる条件・適さない条件と、導入前に決める5つの判断【2026年版】
- 非常停止回路とは?安全リレーの仕組みと停止カテゴリ0/1/2の違い・安全カテゴリ(PL)を図解で解説【2026年版】
- ティーチングペンダントとは?使い方・デッドマンスイッチ・メーカー4社の呼称比較と資格(特別教育)の要否【2026年8月更新】
出典・参考
- 労働安全衛生規則 第150条の3・第150条の4・第150条の5(e-Gov法令検索。2026年10月13日に条文を確認)
- 厚生労働省 基安安発0731004号(平成19年7月31日)「『機械の包括的な安全基準に関する指針』の解説等について」8 別表第3 安全防護の方法(PDF。2026年10月13日に原文を確認)
- 厚生労働省 基安安発1224第1号(平成25年12月24日)「産業用ロボットに係る労働安全衛生規則第150条の4の施行通達の一部改正に当たっての留意事項について」(PDF。2026年10月13日に原文を確認)
- 厚生労働省 リーフレット「産業用ロボットと人との協働作業が可能となる安全基準を明確化しました」(PDF)
- JIS B 9718:2013・B 9715・B 9711・B 9705-1 は役割のみ記載。数値は規格本文で確認してください。
どの場所をどの防護で守るかは、作業ごとに「入る頻度」と「体の入り方」を書き出すと決めやすくなります。ロボットセルの安全設計の進め方を相談する(無料)










