マテハンはどこから自動化するのか?——コンベヤ・AGV/AMR・自動倉庫の向き不向きと、人で運び続けた方がいい4条件【2026年版】

マテハン(工場内の物の搬送・保管)の自動化を検討すると、「AGVとAMRのどちらを入れるか」から考えがちです。しかし同じ工場の中でも、受入から保管、工程への投入、工程間、出荷までの区間ごとに、運ぶ量も経路も荷姿もまったく違います。この記事では、物の流れを区間に分けて自動化の順番を決める方法と、コンベヤ・AGV/AMR・自動倉庫の向き不向き、そして人で運び続けた方がいい条件を整理します。

この記事の要点

  • マテハンの自動化は設備単位ではなく区間単位で判断します。1つの工場に、自動化しやすい区間としにくい区間が混ざっているためです。
  • 最初に確かめるのは区間ごとの物量と頻度、次が経路が固定か、変わるかです。
  • 経路が固定で物量が多い区間はコンベヤ、経路は決まるが間欠的な区間はAGV、経路やレイアウトが変わる区間はAMRが候補になります。
  • どの手段も、荷姿(容器・向き)がそろっていることが前提です。荷姿がばらばらの区間は、搬送より先に容器をそろえます。
  • レイアウトが近く変わる、物量が少ない、床や通路が整っていない区間は、人と台車・補助機器で運び続ける判断も現実的です。
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この記事はどんな判断に役立つ?

この記事が支援する判断:生産技術や工場管理の担当者が、搬送設備の見積を依頼する前に「どの区間の搬送を設備に任せ、どの区間を人に残すか」を決める場面を支援します。重量物を人力で扱う基準は別記事で扱っており、本記事は搬送・保管の手段の選び分けに絞っています。

マテハンは、どこから自動化するのか?

結論から言えば、最初に確かめるのは「区間ごとの物量と頻度」で、その次が「経路が固定か、変わるか」です。受入から出荷までの物の流れを区間に分け、1日に何回・何個運んでいるかを書き出し、物量が多く経路が決まっている区間から順に設備へ移します。図1の5段階は、前の段階の答えが次の段階の前提になる順に並べています。

区間の書き出しでは、運んでいる時間だけでなく、物を待っている時間も並べておきます。搬送の待ちが工程の停止につながっている区間ほど自動化の効果は大きくなりますが、待ちのほとんどが前工程の遅れから来ている場合は、搬送を速くしても全体は短くならないからです。

設備ではなく「区間」に分けて、物量から見る1区間の列挙受入・保管・投入・工程間・出荷に分ける2物量と頻度1日に何回・何個運び、どれだけ待つか3経路経路が固定か、レイアウトで変わるか4荷姿容器と向きを区間の中でそろえられるか5受け渡し積み下ろしを誰が、どこで行うか
図1 マテハンの自動化の順番を決める5つの段階。②の物量と頻度が分からない区間は、先の段階に進めない(編集部作成)

なぜ設備ではなく「区間」で考えるのか?

搬送は工程と工程をつなぐ作業なので、1区間だけを速くしても、前後の区間で物が滞れば工場全体の流れは変わらないからです。自動化が止まる原因を整理した過去記事でも、工程を切り出して投資する進め方の落とし穴を次のように指摘しています。

1工程だけを自動化しても前後が手作業のままなら全体のリードタイムは短くならず、部分最適が全体の停滞を生みます。

工場の自動化はなぜ失敗するのか——止まる7つの原因と、「まだ早い」条件から先に決める判断基準【2026年版】
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コンベヤ・AGV/AMR・自動倉庫は、どう使い分けるのか?

使い分けの軸は、「物量が連続か、間欠か」と「経路が固定か、変わるか」の2つです。コンベヤは決まった経路を物が途切れず流れる区間で力を発揮し、AGV(床の磁気テープなどに沿って走る無人搬送車)は経路が決まっていて間欠的に運ぶ区間、AMR(地図を持って自律走行する搬送ロボット)は経路やレイアウトが変わる区間に向きます。表1は、代表的な手段について判断基準をまとめたものです。

手段向く区間向かない条件先に決めること
コンベヤ経路が固定で、物が連続して流れる工程間通路を横切る、レイアウト変更が多い流す荷姿と、合流・分岐の位置
AGV(誘導式)経路は決まっているが、間欠的に運ぶ区間床が傷みやすい、経路を頻繁に変える走行経路と、停止・積み下ろし位置
AMR(自律走行)レイアウトが変わる、行き先が複数ある区間通路が狭く、人や台車と混み合う人と交差する場所と、走行の優先順
自動倉庫品目が多く、保管と出し入れの回数が多い品目が少ない、天井高や床荷重が足りない保管する荷姿と、在庫データの持ち方
台車・補助機器物量が少ない、経路が毎回変わる区間重量や回数が人の負担の目安を超える人力で扱う重量と回数の上限
表1 マテハンの区間ごとに搬送・保管の手段を選ぶ判断基準(編集部作成)

1つの工場の中で、手段はどう組み合わせるのか?

同じ工場の中でも、区間ごとに答えは変わります。たとえば、加工機の間を連続して流れる区間はコンベヤ、加工の終わった部品を組立職場に届ける区間はAGVやAMR、資材を受け入れて保管する区間は自動倉庫や棚、と組み合わせて考えるのが一般的です(図2)。

物量と経路の2つの軸で、区間ごとに手段を選ぶ経路が固定経路が変わる物量が多い物量が少ないコンベヤ(連続)AGV(間欠)最初に自動化を検討する区間AMR(自律走行)人と交差する場所を先に決めておく台車+定時の巡回まとめて運ぶ回数を決めるだけで足りることも人+補助機器リフターや台車で人の負担を軽くする自動倉庫は「運ぶ」ではなく「保管と出し入れ」の手段として別に判断する
図2 物量と経路の2つの軸で搬送手段を選ぶ。物量が少ない区間は、設備より運び方の見直しが先になる(編集部作成)

重量物を扱う区間では、運ぶ作業と積む作業を分けて考えることも欠かせません。人力での取り扱いの目安を整理した過去記事では、次のように整理しています。

「重量物の自動化」とひとくくりにされがちですが、作業の中身は「運ぶ(搬送)」と「積む(パレタイズ)」で大きく異なり、適した手段も変わります。

重量物の人手作業は何kgからやめるべき?搬送・パレタイズを自動化する判断基準と進め方【2026年最新】

人力の搬送は、どこまで残してよいのか?

重い物を運ぶ区間は、自動化を原則とし、難しい場合に台車や補助機器で人の負担を減らす、という順番で考えます。厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」は、重量物取扱い作業について「適切な動力装置等により自動化し、それが困難な場合は、台車、補助機器の使用等により人力の負担を軽減することを原則とすること」と定めています(出典:厚生労働省、別紙 I-1)。

同じ指針は、人力で扱う重量の目安を、満18歳以上の男性で体重のおおむね40%以下としています。区間の書き出しでは、運ぶ物の重さと1日の回数も並べ、この目安を超える区間や、軽くても回数の多い区間を優先して自動化の候補にします。女性や年少者の取扱い上限は重量物の基準を整理した記事で扱っています。

人で運び続けた方がいい4条件——自動化が向かないのはどんなときか?

搬送の自動化は、経路と荷姿と物量が一定であることを前提に成り立ちます。次の条件に当てはまる区間は、設備を入れても止まる・待つ・人が手を貸すが続くため、人と台車で運び続けるか、先に条件を整えるべきです。

  • レイアウトが近く変わる——ラインの組み替えが予定されている区間では、コンベヤや誘導式のAGVが変更の足かせになります。
  • 荷姿がそろわない——容器や向きが品目ごとにばらばらだと、積み下ろしのたびに人が手を貸すことになります。
  • 物量が少なく、搬送が待ち時間のごく一部——1日に数回しか運ばない区間は、まとめて運ぶ回数を決めるだけで足りることが多いです。
  • 床や通路が整っていない——段差、床の傷み、狭い通路、人やフォークリフトとの交差が多い区間では、走行が止まりやすくなります。

荷姿の問題は、搬送の先にある設備でも同じように効いてきます。組立工程の自動化を扱った過去記事でも、部品の届き方を最初の関門に挙げ、その理由を次のように述べています。

ロボットや専用機は、決まった位置と向きにある部品しか扱えないからです。

組立工程はどの作業から自動化するのか?——部品供給・ねじ締め・圧入・嵌合の向き不向きと、組立の自動化が向かない4条件【2026年版】

搬送を自動化する前に、何を測っておくのか?

区間ごとに「1日の搬送回数」「1回の量と重さ」「距離」「待ち時間」「荷姿の種類」の5つを、通常の生産の中で数週間記録します。搬送の担当者は運ぶこと以外にも、探す・待つ・並べ直すといった作業をしていることが多く、見積の前にそれを分けておかないと、自動化で減る時間を大きく見積もってしまいます。

記録がそろうと、どの区間を設備にし、どの区間を運び方の見直しで済ませるかを、数字で比べられるようになります。AGVとAMRの走行方式の違いは別記事で、搬送の先にある取り出しの判断はピッキングの自動化を扱った記事で整理しています。

まとめ——マテハンの自動化は「区間ごとの物量」から決める

マテハンの自動化は、工場の物の流れを区間に分け、物量と頻度→経路→荷姿→受け渡しの順に判断します。経路が固定で物量が多い区間はコンベヤやAGV、レイアウトが変わる区間はAMR、品目が多く出し入れの多い保管は自動倉庫が候補です。すべてを置き換えることにこだわらず、レイアウトが近く変わる、荷姿がそろわない、物量が少ない、床や通路が整っていない区間は、人と台車・補助機器で運び続ける判断も選択肢に入れてください。

どの区間を設備に任せ、どこを人に残すかは、対象の区間を1つ挙げて物量を書き出すと決めやすくなります。搬送の自動化の進め方を相談する(無料)

よくある質問(FAQ)

マテハンで、最初に自動化しやすい区間はどこですか?

経路が固定で、物量が多く、荷姿がそろっている区間です。加工機の間を連続して流れる工程間や、決まった職場へ定期的に部品を届ける区間が代表例です。

AGVとAMRは、どちらを選べばよいですか?

経路が決まっていて変える予定がなければAGV、レイアウトの変更が多い、行き先が複数あるならAMRが候補です。どちらも、人や台車と交差する場所と、積み下ろしを誰が行うかを先に決めておく必要があります。

物量が少ない工場でも、搬送を自動化する意味はありますか?

重い物を運ぶ区間なら、人の負担を減らす目的で意味があります。ただし、軽い物を1日に数回運ぶだけの区間は、設備より先に、まとめて運ぶ回数や台車・補助機器の使い方を見直すほうが効果的なことが多いです。

出典

  • 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日改訂)別紙「作業態様別の対策」I 重量物取扱い作業 1・2 PDF(2026年10月13日に原文を確認)

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