ラダー図を生成AIに読ませると、どこで誤読するのか?——既存プログラムの解説・変更点の洗い出しで外れる場所と、生成AIに向かない4条件【2026年版】

この記事の要点

  • 既存のラダー図を生成AIに読ませると、1行ずつの意味の説明は助けになりますが、回路をまたいだ動き——同じデバイスを使うほかの回路、スキャンの順序、外から書き換わる設定値——で読み違えやすくなります。
  • 研究でも、ラダー図は生成AIが扱いにくい言語とされています。追加の情報なしに例を示すだけでは、ラダー図と工程図(SFC)の相互変換は失敗したと報告されています。
  • 任せやすいのは、1行の説明・コメントの下書き・回路パターンの見分けです。変更の影響範囲と工程全体の動作順は、AIの答えを手がかりに人が確かめます。
  • 安全回路、画面写真しかないプログラム、デバイスコメントのないプログラム、止めて試せない設備——この4つは生成AIに読ませる対象に向きません。

この記事が支援する判断:保全や生産技術の担当者が、前任者や装置メーカーが書いた既存のラダー図を引き継ぎ、解説や改造の準備に生成AIを使おうとするときに、どの作業を任せ、どの答えを人とモニタ・実機で確かめるかを決める場面を支援します。

引き継いだラダー図は、コメントが少なく、書いた人がもういないことがよくあります。生成AIに「この回路は何をしているか」と聞くと、それらしい説明が返ってきます。結論から言えば、その説明は1行の中では当たりやすく、行と行のつながりで外れやすいものです。本稿では、どこで外れるかと、外れた答えを現場で見つける手順を整理します。ラダー図を新しく書かせる使い方は生成AIでPLCプログラムを作る記事で扱っています。

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研究では、生成AIはラダー図をどこまで扱えるのか?

Zhangとde Sousaは2024年の論文で、ラダー図や工程図(SFC)などIEC 61131-3の図形言語を、文字で描いた図(ASCIIアート)として生成AIに作らせる実験をしました。要旨では、例をいくつか与えれば簡単な要求の工程図は正しく作れた一方、ラダー図については“generating a Ladder Diagram (LD) automatically remains a challenge even for very simple use cases”(ごく簡単な用途でも、ラダー図の自動生成は課題として残る)と述べています。さらに、ラダー図と工程図の相互変換も、追加の情報なしに指示の工夫だけでは失敗したと報告しています。

同じ著者の2025年の論文では、ラダー図と工程図の対訳データを作り、そのデータで追加学習した言語モデルに変換させたところ、正答率はデータによって79%から91%でした。専用の学習をしても1〜2割は外れる、と読むのが実務的です。変換は「回路の意味を読み取る」作業でもあるため、既存のラダー図をAIに説明させるときも、この程度の外れは前提にしておきます。

どの作業なら生成AIに任せやすいのか?

同じ「ラダー図を読ませる」でも、作業によって外れやすさが違います。表1で、引き継ぎや改造の準備で頼みがちな作業を並べました。

作業任せやすさ外れやすい点人が確かめること
1行(1ラング)の意味の説明任せやすいa接点とb接点、立ち上がりパルスの取り違え命令の記号を編集ソフトの表示と照らす
デバイスコメントの下書き任せやすい名前から用途を推測して、もっともらしい誤りを書く実配線図・入出力表と突き合わせる
回路パターンの見分け任せやすい複数のパターンが重なった回路の切り分け自己保持・インターロック・タイマに分けて読み直す
変更の影響範囲の洗い出し手がかりまで渡していない回路やプログラムの参照を見落とす編集ソフトのクロスリファレンスで全使用箇所を出す
工程全体の動作順の再構成手がかりまでスキャン順と、行をまたいだ状態の受け渡しモニタで実際の動作順を追う
表1:既存のラダー図を生成AIに読ませる作業ごとの任せやすさと、人が確かめること(判断表)

上の3行は、答えがその行の中で閉じているため、外れても見つけやすい作業です。下の2行は、AIに渡した範囲の外に答えがあるため、外れても気づきにくくなります。とくに回路パターンの見分けは、人が読むときの手順と同じで、過去記事でも次のように述べています。

このように3パターンを身につけると、複雑に見えるラダー図も「どこが自己保持で、どこがインターロックで、どこがタイマか」を切り分けて読めるようになります。

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生成AIは、ラダー図のどこで誤読するのか?

読み違いが起きやすい場所は、図1の4つです。どれも、AIに見せた画面や範囲の中だけでは答えが決まらない点が共通しています。

ラダー図を読み違えやすい4つの場所①見えていない回路の参照同じ内部リレーやデータを別の回路・別のプログラムが使っている②スキャンの順序上から順に実行されるため同じ出力を2か所で書くと後の行が勝つ③外から変わる設定値タイマやカウンタの設定値をタッチパネルや別の命令が書き換えている④画面写真の読み取り分岐の線、a接点とb接点デバイス番号の数字を見間違える
図1:生成AIがラダー図を読み違えやすい4つの場所(編集部作成)

①と②は、プログラムの一部だけを渡したときに起きます。ある出力がなぜ切れるのかを聞いても、それを切っている行が渡した範囲の外にあれば、AIは見えている行だけで理由を組み立てます。③は、ラダー図の上ではタイマの設定値が固定に見えても、実際はタッチパネルから変わる場合です。④は画面写真を渡したときに特有の誤りで、編集ソフトからテキストで書き出せる場合は、そちらを渡す方が読み違いを減らせます。

生成AIの答えは、どの順で確かめるのか?

AIの説明は、そのまま信じるのでも捨てるのでもなく、確かめる対象の一覧として使います。手順は図2のとおりです。

AIの説明を確かめる順番①表にするデバイスごとにAIの説明を並べる②全使用箇所クロスリファレンスで出す③モニタON/OFFの順を動作で照らす④止めて試す変更は停止中に試運転で確認外れた説明は表に残し、次にAIへ渡す前提(コメント・入出力表)を足す
図2:生成AIの説明を確かめる4つの手順(編集部作成)

①でAIの説明をデバイスごとの表にすると、②以降で1つずつ消し込めます。②は、図1の①の見落としを防ぐ手順です。③では、運転中のモニタで接点の状態が変わる順番を見て、AIが組み立てた動作順と比べます。改造を伴う場合の④は、生産を止めた状態で行います。外れた説明は捨てずに残しておくと、次にAIへ渡すコメントや入出力表を足す材料になります。

生成AIに読ませるのに向かない4条件とは?

次のどれかに当てはまるプログラムは、AIの説明を確かめる手間が、人が最初から読む手間を上回ります。読ませる前に条件を整えるか、人が読んでください。

  • 安全機能を含む回路——非常停止や扉のインターロックは、説明が1か所外れるだけで事故につながります。安全回路の考え方は非常停止回路と安全リレーの記事で扱っています。
  • 画面写真しかない——図1の④の読み違いが重なります。テキストで書き出せない場合は、AIの説明を全行で照らし直す前提になります。
  • デバイスコメントがほとんどない——AIはデバイスの用途を推測で埋めます。先に入出力表を作る方が早く進みます。
  • 止めて試せない設備——24時間動いている設備で、AIの説明をもとに運転中に書き換えるのは避けてください。

安全回路をPLCのプログラムだけに任せないことは、リレーとPLCの使い分けを扱った過去記事でも次のように述べています。

通常のPLCのプログラムだけに任せず、安全用途向けの安全リレーユニットやセーフティPLCで組みます。

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よくある質問(FAQ)

ラダー図は画面写真で読ませても大丈夫ですか?

読めることはありますが、分岐の線やa接点とb接点、デバイス番号の数字を見間違えることがあります。編集ソフトからテキストで書き出せるなら、そちらを渡してください。写真を使う場合は、AIが書き起こした内容を元の画面と1行ずつ照らします。

社外のクラウド型の生成AIにラダー図を渡してよいですか?

先に、装置メーカーとの契約と社内の情報管理の規定を確かめてください。装置メーカーが作ったプログラムは、扱いが契約で決まっていることがあります。渡す場合も、設備名や顧客名などの固有名詞は伏せ、必要な範囲だけを渡します。

生成AIに既存のラダー図の改造案を書かせてもよいですか?

案として出させるのは構いませんが、そのまま書き込まないでください。研究でもラダー図の生成は簡単な用途で課題が残るとされています。改造案は、影響範囲を全使用箇所で確かめ、停止中に試運転してから反映します。

まとめ

既存のラダー図を生成AIに読ませると、1行の説明・コメントの下書き・回路パターンの見分けは助けになります。一方で、見えていない回路の参照、スキャンの順序、外から変わる設定値、画面写真の読み取りで外れやすく、研究でも図形言語のラダー図は扱いにくいとされています。AIの答えはデバイスごとの表にして、全使用箇所・モニタ・停止中の試運転の順で確かめます。安全回路や止めて試せない設備は、人が読む対象として残してください。

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出典・参考

  • Yimin Zhang, Mario de Sousa「Exploring LLM Support for Generating IEC 61131-3 Graphic Language Programs」(arXiv:2410.15200、2024年。2026年10月14日に要旨を確認)
  • Yimin Zhang, Mario de Sousa「Converting IEC 61131-3 LD into SFC Using Large Language Model: Dataset and Testing」(arXiv:2509.12593、2025年。2026年10月14日に要旨を確認)

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