ロータリーエンコーダとは|インクリメンタル/アブソリュートの違い・パルス出力と位置決めの仕組みを図解で解説【2026年版】

装置の「いまどこにあるか」を正確に知る——位置決めや速度制御の土台になるのがロータリーエンコーダです。サーボモータやコンベヤ、産業用ロボットの動きが狙いどおりに止まるのは、回転を電気信号に変えて読み取るこのセンサがあるからです。本記事では、まず結論として「インクリメンタル型は相対位置、アブソリュート型は絶対位置を出力する」という一点を押さえ、パルス出力の仕組み・位置決めでの役割・選び方までを図解で整理します。

この記事の要点

  • ロータリーエンコーダとは、回転軸の角度や回転数・回転方向を電気信号(パルス)に変換するセンサです。
  • インクリメンタル型は「原点からの相対位置」、アブソリュート型は「絶対位置そのもの」を出力します。電源を切ったとき位置を保持できるのが後者です。
  • A相・B相の2つの信号が90°ずれて出ることで、回転の「速さ」だけでなく「向き」も判別できます。Z相は1回転に1パルスの原点信号です。
  • サーボの位置決めフィードバック、コンベヤの距離・速度計測、PLCの高速カウンタ入力などに使われます。
  • 選定は「絶対/相対・必要分解能・出力形式・電源OFF時の保持要否」の4点でほぼ決まります。

ロータリーエンコーダとは?

ロータリーエンコーダとは、回転軸の動き(角度・回転数・回転方向)を読み取って電気信号に変換する位置検出センサです。多くは内部の円盤(スリット入りの回転板)に光を当て、通過した光の明暗をパルス信号に変える「光学式」で、ほかに磁気の変化を読む「磁気式」もあります。要するに、モータやローラがどれだけ・どの向きに回ったかを、制御装置が数えられる形にして渡すための部品です。

エンコーダには直線運動を読む「リニアエンコーダ」もありますが、本記事では回転を読むロータリーエンコーダを扱います。回転を読めれば、ボールねじやプーリを介して直線位置に換算でき、装置の多くの動きをカバーできるためです。

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インクリメンタル型とアブソリュート型は何が違う?

結論から言うと、両者の違いは「出力する位置情報が相対値か絶対値か」です。インクリメンタル型は原点を基準にパルス数を数え上げる相対方式、アブソリュート型は1回転内の角度そのものを符号で出す絶対方式です。この一点が、起動時の動作・コスト・用途の差につながります。

インクリメンタル型とアブソリュート型のちがい同じ「回転を読む」でも、出力する位置情報の種類が根本的に異なりますインクリメンタル型(相対位置・パルスを数える)出力する位置情報原点からの「パルス数の積算」電源を切ると現在位置を失う(要・原点復帰)起動時の動作原点センサまで戻して基準を作るコスト・構造比較的安価・配線がシンプル代表用途コンベヤの速度・距離計測汎用サーボの位置決めアブソリュート型(絶対位置・現在値を保持)出力する位置情報1回転内の「絶対角度そのもの」電源を切ると現在位置を保持(原点復帰不要)起動時の動作電源投入直後から現在値が分かるコスト・構造やや高価・多ビット出力や通信式代表用途多関節ロボットの各軸原点復帰させたくない設備
図1:インクリメンタル型は相対位置、アブソリュート型は絶対位置を出力します。電源OFF時の挙動が最大の違いです。
比較軸インクリメンタル型アブソリュート型
位置情報原点からの相対値(パルス積算)絶対角度そのもの
電源OFF時現在位置を失う現在位置を保持
起動時原点復帰が必要原点復帰が不要
コスト比較的安価やや高価
主な用途速度・距離計測、汎用位置決め多関節ロボット、原点復帰を避けたい設備
表1:2方式の違い。電源を切ったときの挙動と起動時の原点復帰要否が、選定上の分かれ目になります。

電源を切ると現在位置はどうなる?

インクリメンタル型は、電源を切るとそれまで数えたパルス数が消えるため、現在位置の情報を失います。次に起動したときは、原点センサ(ドグ)まで一度動かして基準を作り直す「原点復帰」が必要です。一方アブソリュート型は、電源を切っても現在の角度を保持できるため、投入直後から現在値が分かり、原点復帰を省けます。装置の起動を速くしたい、あるいは大型物を不用意に動かしたくない場面では、この差が効いてきます。

分解能(パルス数)はどう読む?

分解能は「1回転あたり何パルス出るか」で表し、単位はP/RやPPRと書かれます。たとえば1000P/Rなら1回転を1000等分して読めるということで、数字が大きいほど細かく位置を分解できます。ただし、細かければ常に良いわけではありません。制御装置(PLCやサーボアンプ)が受け取れる入力周波数には上限があり、高速回転と高分解能を同時に求めると入力が追いつかないことがあります。必要な精度から逆算して、過剰にならない分解能を選ぶのが実務的です。

パルス出力の仕組みとは?A相・B相・Z相の役割

インクリメンタル型のエンコーダは、一般にA相・B相・Z相という3種類の信号を出します。A相とB相は回転に同期したパルス列で、互いに90°(4分の1周期)ずれて出力されます。Z相は1回転に1パルスだけ出る原点(基準位置)の信号です。

A相・B相・Z相のパルス波形と回転方向の見分け方A相とB相は90°ずらして出力され、どちらが先行するかで回転方向が分かりますA相B相Z相1回転に1パルス(原点)正転(CW):A相がB相より先に立ち上がる逆転(CCW):B相がA相より先に立ち上がる → 2相で「速度」だけでなく「向き」も判定できる
図2:A相・B相は90°ずれたパルス列、Z相は1回転1パルスの原点。どちらの相が先行するかで回転方向が分かります。

なぜA相とB相の2chが必要なの?

1つの信号だけでは「どれだけ回ったか(速さ)」は分かっても「どちらに回ったか(向き)」が分かりません。A相とB相を90°ずらして出すことで、どちらの相が先に立ち上がったかを比べ、正転か逆転かを判別できます。さらに、両相の立ち上がり・立ち下がりを数える「逓倍(ていばい)」を使うと、見かけの分解能を2倍・4倍に高めることもできます。モータ制御では、向きが分かるこの2相方式が前提になります。

サーボは位置決め、インバータは速度制御、ソフトスタータは起動緩和と、役割が明確に違う。

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位置決めではどう使う?サーボモータとの関係

サーボモータが狙った位置でピタリと止まれるのは、エンコーダが「いまどこにいるか」を常にアンプへ返しているからです。アンプは指令した目標位置と、エンコーダが返す実際の位置を比べ、ズレがあれば修正する——この閉ループ(クローズドループ)制御の検出役がエンコーダです。だからこそ、サーボの位置決め精度はエンコーダの分解能と取り付け精度に大きく左右されます。多関節ロボットのように電源投入直後から各軸の姿勢を確定したい用途では、原点復帰のいらないアブソリュート型が選ばれます。

PLCではどう扱う?高速カウンタ入力の考え方

インクリメンタル型のパルスをPLCで受ける場合、通常の入力ポートではなく「高速カウンタ」機能を使うのが基本です。エンコーダのパルスは速いと数十kHz以上になり、一般の入力スキャンでは取りこぼすためです。高速カウンタはA相・B相を専用回路で数え、回転量や位置をレジスタに積算します。コンベヤの搬送距離を測って一定距離ごとに動作させる、といった制御がこの仕組みで実現できます。エンコーダはあくまで「数えられる信号」を出す側で、それを動作に変えるのはPLC側のロジックです。

PLCにあらかじめ書かれたプログラムによって、装置を動かしたり、周辺機器に動作指令を送ったりということをしています。

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どう選ぶ?エンコーダ選定の4ポイント

機種選定で迷ったら、次の4点を順に決めると絞り込めます。第1に絶対か相対か(電源OFF時に現在位置を保持したいならアブソリュート)。第2に必要分解能(求める位置精度から逆算し、過剰にしない)。第3に出力形式(オープンコレクタ・ラインドライバなどのパルス出力か、シリアル通信か。受け側の制御機器に合わせる)。第4に取り付け・環境(軸径、中空か軸付か、振動・粉じん・温度への耐性)。この順で決めれば、カタログの型番選びがかなり機械的になります。

ここで見落とされがちなのが、「なぜその分解能・その型番を選んだのか」という選定理由が記録に残っていないケースです。設定したベテランが異動すると、後任は同等品への置き換えや仕様変更の判断ができなくなります。これはエンコーダに限らず、設備の設定情報全般に共通する課題です。判断材料を人ではなく業務基盤側に残しておく考え方は、次の記事で掘り下げています。

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設備設定の「なぜ」を組織に残す具体策に関心があれば、生産技術OSで判断材料をそろえる考え方もあわせてご覧ください。

自己診断チェックリスト

次の5項目のうち2つ以上に当てはまる場合、エンコーダの選定・設定情報を整理しておく価値があります。

  • 装置の位置決めや距離計測にエンコーダを使っているが、型番ごとの選定理由が記録されていない。
  • インクリメンタル型かアブソリュート型か、現場でどちらをなぜ使っているか即答できない。
  • 原点復帰でつまずく装置があり、起動に時間がかかっている。
  • 分解能の設定値が経緯不明のまま引き継がれている。
  • パルス出力形式と受け側の制御機器の対応を、担当者しか把握していない。

よくある質問(FAQ)

ロータリーエンコーダとポテンショメータの違いは?

ポテンショメータは抵抗値の変化で角度をアナログ電圧として出す検出器で、構造が簡単で安価ですが、可動範囲や寿命・分解能に制約があります。ロータリーエンコーダはパルスやデジタル符号で出力し、高分解能・多回転・高速応答に向きます。連続回転や高精度な位置決めが必要ならエンコーダが適します。

アブソリュート型なら原点復帰は完全に不要?

1回転内の絶対角度は電源を切っても保持されますが、多回転の通し位置まで保持するには、回転数を覚える「マルチターン」対応の機種やバックアップが必要です。シングルターンのアブソリュート型では、複数回転をまたぐ位置は別途管理が要る点に注意してください。

分解能は高ければ高いほど良い?

必ずしもそうではありません。受け側のPLCやサーボアンプが処理できる入力周波数には上限があり、高速回転と高分解能を欲張ると取りこぼしの原因になります。求める位置精度から必要分解能を逆算し、過不足のない値を選ぶのが実務的です。

故障の主な原因は何が多い?

軸のがたつきやカップリングのゆるみによる検出ずれ、振動・粉じん・温度などの環境ストレス、配線のノイズや断線が代表的です。取り付け精度の確保とノイズ対策(シールド・配線分離)が、安定動作の基本になります。

出典

  • 本記事はロータリーエンコーダの一般的な技術原理(光学式・磁気式の検出方式、A相・B相・Z相の位相関係、インクリメンタル/アブソリュートの区分)にもとづいて構成しています。具体的な分解能・出力形式・対応周波数は機種により異なるため、選定時は各メーカーの技術資料・仕様書(オムロン制御機器、キーエンス、多摩川精機ほかの公開技術解説)で確認してください。
  • PLCでの取り扱い(高速カウンタ入力)は一般的なPLCの機能解説にもとづく記述で、対応可否・最大入力周波数は機種仕様に従います。

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