はめあいとは?H7・g6の意味とすきまばめ・しまりばめの違い・選び方を図解で解説【2026年版】

この記事の要点
- はめあいとは、軸と穴を組み合わせたときにすきまとしめしろのどちらができるかを決める、寸法公差の組み合わせです(JIS B 0401-1:2016)。
- 記号は大文字=穴・小文字=軸、アルファベット=公差域の位置、数字=サイズ公差等級(IT)。H7 は穴、g6 は軸です。
- 種類はすきまばめ・中間ばめ・しまりばめの3つ。φ30 なら H7/g6 で 7〜41µm のすきま、H7/p6 で 1〜35µm のしめしろです。
- 日本の機械設計は穴基準はめあい方式(H7 を固定し軸側で調整)が原則。穴は工具径に縛られるためです。
- 選定は「動くか」「トルクを摩擦だけで伝えるか」の2問でほぼ決まります。等級を1段厳しくすると加工工程が増えます。
φ30 の穴に φ30 の軸は入りません。図面に「φ30」とだけ書いた部品は、現実には 30.000mm ちょうどには仕上がらないためです。そこで穴と軸それぞれに許されるばらつきの幅を決め、その組み合わせで「するする動く」のか「叩き込まないと入らない」のかを決めます。これがはめあいです。この記事では H7・g6 の読み方から φ30 での実数値、選定の判断手順までを図解でまとめます。
はめあいとは?
はめあいとは、軸(外側サイズ形体)と穴(内側サイズ形体)が互いにはまり合う関係、およびその関係を決める寸法公差の組み合わせのことです。JIS B 0401-1:2016 では「外側サイズ形体と内側サイズ形体(同じ形状の穴及び軸)との間の互いにはまり合う関係」と定義されています。
前提となる寸法公差については、過去記事で次のように整理しています。
寸法公差とは、図面で指定した基準寸法に対して、製造上許される寸法のばらつきの幅のことです。
幾何公差とは?種類・記号・データムの読み方と寸法公差との違いを図解で解説【2026年版】
はめあいは、この公差の幅を穴側と軸側で「どうずらして置くか」の設計です。穴の公差域を軸より上にずらせば必ずすきまができ、下にずらせば必ずしめしろができます。重ねれば、できあがった部品次第でどちらにもなります。つまりはめあいの設計とは、組み立てたあとの状態を、加工前に範囲として保証する行為です。
なお 2016 年の JIS 改正(ISO 286-1:2010 との整合)で用語が更新され、従来の「基準寸法」は図示サイズ、「公差」はサイズ公差と呼びます。古い社内資料と混ざりやすい点です。
H7・g6 の記号は何を表しているのか?
結論から述べます。アルファベットが公差域をどこに置くか(基礎となる許容差)、数字がその幅の等級(サイズ公差等級 IT)を表し、大文字は穴・小文字は軸を意味します。H7/g6 と書けば「H7 の穴に g6 の軸を入れる」という指定です。
| 要素 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 大文字/小文字 | 大文字=穴(内側)、小文字=軸(外側) | H7=穴/g6=軸 |
| アルファベット | 公差域の位置。A〜H(a〜h)はすきま側、p 以降はしめしろ側 | g はすきま側、p はしめしろ側 |
| H(h)の特別な意味 | 基礎となる許容差がゼロ。穴 H は下の許容差=0、軸 h は上の許容差=0 | φ30H7=30.000〜30.021mm |
| 数字(IT等級) | 公差の幅。小さいほど厳しい。IT01〜IT18 | φ30 で IT6=13µm、IT7=21µm |
IT 等級は「同じ等級なら加工の難しさが同程度」という思想で決まっており、寸法が大きいほど許される幅も広がります。IT7 は φ30(18mm超30mm以下)で 21µm、φ100(80mm超120mm以下)で 35µm です。同じ H7 でも実数値は寸法区分ごとに変わります。

この図が示すのは、はめあいの本質が「2本の帯の位置関係」だということです。穴 H7 の帯(0〜+21µm)に対し軸 g6 の帯(−20〜−7µm)は完全に下にあるため、必ずすきまができます。逆に p6(+22〜+35µm)は H7 より上へ抜けるため必ずしめしろができ、k6(+2〜+15µm)のように重なると部品次第でどちらにもなります。
すきまばめ・中間ばめ・しまりばめの違いは?
違いは「必ずすきま」「どちらもありうる」「必ずしめしろ」の一点に集約されます。JIS の定義と φ30 での実数値を並べます。
| 種類 | φ30 の例 | すきま/しめしろ | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| すきまばめ 穴の下の許容サイズ ≧ 軸の上の許容サイズ | H7/g6 | すきま 7〜41µm | 回転する軸、しゅう動部 |
| すきまばめ(最小) | H7/h6 | すきま 0〜34µm | 手で組める精密位置決め |
| 中間ばめ すきま又はしめしろのいずれかができる | H7/k6 | すきま最大19µm/しめしろ最大15µm | キー併用のギヤ・スプロケット |
| 中間ばめ(対称) | H7/js6 | すきま最大27.5µm/しめしろ最大6.5µm | 軽い圧入、分解の可能性がある固定 |
| しまりばめ 穴の上の許容サイズ ≦ 軸の下の許容サイズ | H7/p6 | しめしろ 1〜35µm | ブッシュ・ピンの打ち込み |
| しまりばめ(強) | H7/r6 | しめしろ 7〜41µm | 摩擦でトルクを伝える圧入、焼きばめ |
数値の出し方も押さえます。最小すきまは「穴の下の許容サイズ − 軸の上の許容サイズ」、最大すきまは「穴の上の許容サイズ − 軸の下の許容サイズ」です。φ30 H7/g6 なら 0 −(−7)= 7µm、21 −(−20)= 41µm。この2式だけで現場で検算できます。
注意したいのは、しまりばめの「最小しめしろ」です。φ30 H7/p6 の最小しめしろはわずか 1µm しかありません。穴が公差上限・軸が公差下限に仕上がると、ほとんど締まらない状態になり得ます。摩擦だけでトルクを伝えたい場合は p6 では足りず、r6 や s6 が必要になることがあります。「しまりばめだから大丈夫」ではなく、最小しめしろが必要トルクを満たすかを確認するのが正しい手順です。
穴基準と軸基準、どちらを使うのか?
日本の機械設計では穴基準はめあい方式が原則です。穴側を H(下の許容差=0)に固定し、軸側の記号を変えてはめあいを作ります。理由は加工側の事情にあります。穴はドリル・リーマ・エンドミルの工具径にサイズが縛られ狙った寸法へ動かしにくい一方、軸は旋削や研削で削り込む量を連続的に調整できるためです。
軸基準はめあい方式(軸を h に固定し穴側で調整)を使うのは、1本の長い軸に複数の部品を異なるはめあいで付ける場合です。軸を h6 で通し穴側を H7・K7・N7 と変えれば段付き加工を減らせます。搬送コンベヤのローラ軸が典型例です。
ただし市販の機械要素部品ではこの原則が逆転します。転がり軸受は内輪内径・外輪外径の公差がメーカー側で決まっているため、はめあいはこちら側(軸とハウジング)の公差で調整することになります。内輪は軸に対してしめしろ側(k5・k6・m5 など)、外輪はハウジングに対してすきま寄り(H7・J7 など)が一般的です。

実務ではどのはめあいを選ぶのか?
選定は上図の2問で大半が決まります。第一問は「組み立てたあと、軸と穴は相対的に動くか」。動くならすきまばめです。第二問は動かない場合に「トルクを摩擦だけで伝えるか」。摩擦だけならしまりばめ、キーや止めねじで回り止めをするなら中間ばめで足ります。装置設計で頻出する組み合わせを整理します。
| 用途 | 推奨 | 選ぶ理由 |
|---|---|---|
| すべり軸受・回転する軸 | H7/g6、H8/f7 | 油膜と熱膨張の分だけすきまを確保する |
| 位置決めピン(抜き差しする) | H7/h6 | すきま最小0µmでガタを抑えつつ手で抜ける |
| 位置決めピン(打ち込み固定) | H7/p6 | 抜けを防ぎつつ、必要なら圧抜きで外せる |
| キー付きギヤ・スプロケット | H7/k6 | 回り止めはキーが担うため締めすぎない |
| ブッシュ・ライナの圧入 | H7/r6、H7/s6 | 抜け止めと摩擦伝達を確実にする |
| 板金・溶接構造への嵌合 | H9/h9、H10 級 | 母材が変形するため精密級は意味がない |
ただしこの表は出発点です。同じ H7/g6 でも高温部ではすきまが熱膨張で消え、低速・高荷重部では油膜が切れます。その部位の温度・荷重・潤滑の条件で必ず検算してください。樹脂部品は線膨張係数が金属の数倍になるため、金属同士の表をそのまま持ち込めません。
はめあいを厳しくしすぎると何が起きるのか?
結論は、加工コストが上がり検査工数が増えるのに、組み立て不良は減らないという結果になりやすい、ということです。等級を1段厳しくすると加工方法が変わります。IT7〜IT8 は旋削・フライスの通常加工で届きますが、IT6 では研削やリーマ仕上げが追加され、IT5 以下は温度管理された環境での研削・ラップが前提です。
公差を理解せずに厳しくしすぎると加工コストが膨らみ、緩すぎると組み立てや動作で不具合が出ます。
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見落とされやすいのは、はめあいは寸法公差だけでは成立しないという点です。φ30H7 の穴が寸法上は合格でも、真円度が崩れていれば軸は入りません。実務ではめあい面には、円筒度・同軸度といった幾何公差と表面粗さの指示を併記します。
そして最も引き継がれにくいのは「なぜその等級にしたか」という判断の根拠です。図面には H7/g6 という結果だけが残り、「熱膨張を見て 20µm のすきまを確保したかった」という前提は残りません。数年後に別の担当者が流用設計するとき、その前提は失われています。この構造は検図の属人化と同じ形をしています。
記録の入れ物は各所にあるのに、判断に使える形で引き出せない、という共通点です。
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公差の決定根拠が図面に残っていない、という自覚がある場合
はめあいの選定は、規格表を引く時間より「前回どう決めたか」を探す時間のほうが長くなりがちです。過去図面・検討メモ・不具合履歴のどこに根拠が散っているかを、業務の流れに沿って棚卸しするところから始められます。
FAQ(よくある質問)
H7 が最もよく使われるのはなぜ?
IT7 が「通常の切削加工で安定して出せる、いちばん厳しい等級」に当たるためです。φ30 なら 21µm の幅があり、旋削・リーマ仕上げで届きます。さらに H は下の許容差がゼロで、図示サイズがそのまま最小寸法になるため、計算が暗算でできます。
H7/h7 のように同じ等級を組み合わせてもよい?
可能ですが、はめあい幅が広くなります。φ30 の H7/h7 は穴 0〜+21µm・軸 0〜−21µm で、すきまが 0〜42µm と振れます。H7/h6 なら 0〜34µm です。メーカー標準穴の指定に従う場合を除き、軸側を1等級細かくするのが一般的です。
しまりばめの部品はどうやって組む?
しめしろが小さければ圧入機やプレスで押し込み、大きい場合は温度差を使います。穴側を加熱する焼きばめ、軸側を冷却する冷やしばめです。しめしろが大きいほど必要な圧入力・温度差が上がり、かじりや母材の割れのリスクも上がります。組立方法を決めてから最大しめしろを設定してください。
公差クラスの表は毎回引かないといけない?
数値は寸法区分ごとに変わるため確認は必要です。ただし実務で使う組み合わせは限られるため、「回転部は H7/g6、キー付き固定は H7/k6、圧入は H7/r6」のように用途別の社内既定値を決め、逸脱時だけ根拠を書き残す運用にすると、判断のばらつきと確認工数を同時に下げられます。
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出典
- 出典: JIS B 0401-1:2016「製品の幾何特性仕様(GPS)-長さに関わるサイズ公差のISOコード方式-第1部:サイズ公差,サイズ差及びはめあいの基礎」(日本規格協会)——はめあい3種と穴基準/軸基準方式の定義
- 出典: JIS B 0401-2:2016「同 第2部:穴及び軸の許容差並びに基本サイズ公差クラスの表」——本記事の φ30(24mm超30mm以下)の許容差数値はすべて同表に基づく
- 出典: ISO 286-1:2010 Geometrical product specifications (GPS) — ISO code system for tolerances on linear sizes — Part 1——対応国際規格
図面に残らない「決めた理由」を、業務の流れごと棚卸しする
はめあいの選定基準、検図の観点、流用設計の前提——設計判断の根拠は担当者の記憶と個人フォルダに散らばりがちです。どこで情報が失われているかを業務単位で可視化する診断を行っています。










