キー・キー溝とは?種類・JIS規格の寸法・公差・トルク伝達を図解で解説

この記事の要点
- キー(key)は、軸と歯車・プーリ・カップリングなどの回転部品を結合し、回転動力(トルク)を伝える機械要素です。キー溝(keyway)はキーを収めるために軸とハブに切る溝を指します。
- 種類は大きく平行キー・こう配キー・半月キーの3系統。最も一般的なのは平行キーです。
- 寸法は「軸径」で呼び寸法 b×h(幅×高さ)が決まります(JIS B 1301)。溝深さは軸側 t1・ハブ側 t2 を図面に個別指示します。
- キーは主にせん断と圧縮(面圧)でトルクを受けます。伝達トルクが大きいほど、長いキーや2本キーで対応します。
- 現場の損失は寸法選定よりも、公差・端部形状・過去号機の寸法が「どこにあるか分からず探す」ところで発生しがちです。
歯車やプーリを軸に固定するとき、ほとんどの現場で使われているのがキーとキー溝です。ありふれた機械要素ですが、いざ図面を描く・部品を選ぶ段になると「軸径からキーの寸法をどう決めるのか」「溝の公差はどう指示するのか」「なぜこのキーは折れたのか」で手が止まりがちです。この記事では、キーの種類・JIS規格の代表寸法・トルク伝達の考え方・図面指示のつまずきどころを、図解と早見表で整理します。
キーとは?キー溝とは?
結論から言うと、キーとは軸と回転部品(歯車・プーリ・スプロケット・カップリングなど)を結合し、回転動力であるトルクを伝えるための小さな部品です。キー溝とは、そのキーを収めるために軸側とハブ(ボス)側の両方に切る溝を指します。
ねじやピンによる固定と違い、キーは平らな側面という「面」で力を受けます。そのため比較的大きなトルクを確実に伝えられ、しかも分解・再組立てが容易です。この扱いやすさが、動力伝達の結合方式としてキーが広く使われ続けている理由です。

キーの種類は?平行キー・こう配キー・半月キーの違い
キーの種類は、断面形状と固定方法で大きく3つに分かれます。位置決め精度・伝達トルク・着脱性のどれを優先するかで選び分けます。まずは代表3種類を比較表で押さえましょう。
| 種類 | 断面・特徴 | 固定方法 | 主な用途 | 留意点 |
|---|---|---|---|---|
| 平行キー (並行キー) | 上下面が平行な角材 | すきま/中間/締まりばめを選択 | 一般的な動力伝達全般 | 最も普及。ねじ穴付きもある |
| こう配キー | 上面に1/100の勾配 | 打ち込んで固定 | 低速・大トルク、抜け止め重視 | 打ち込みで芯ズレ(偏心)が出やすい |
| 半月キー (ウッドラフ) | 半月形 | 深い溝にはめ、軸に沿う | 小径軸・テーパ軸、工作機械 | 溝が深く軸強度が下がる |
このほか、軸方向に動かせる「すべりキー」、大トルク向けの「接線キー」、多数の歯で伝える「スプライン」などがあります。まずは平行キーを基準に理解し、条件が特殊なときに他の方式を検討する順序が実務的です。歯車を軸に固定する場面が多いため、歯車の種類とあわせて押さえておくと選定がスムーズです。
歯車の種類は「2本の軸がどう配置されているか」で、平行軸・交差軸・食い違い軸の3グループに整理すると迷いません。
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キー溝の寸法・公差はどう読む?
キーの寸法は、伝えるトルクではなく「軸径」を基準に呼び寸法 b×h(幅×高さ)が決まります。JIS B 1301(平行キー及びキー溝)では、軸径帯ごとに標準の b×h が規定されています。たとえば軸径17〜22mmなら 6×6、30〜38mmなら 10×8 が代表値です(図2)。

溝深さは、軸側の t1 とハブ側の t2 を別々に図面へ記入します。この2つを取り違えると、キーが浮いたり入らなかったりします。はめあいは、幅 b に対して「すきま結合」「普通形」「締まり結合」の3クラスから、許容するガタに応じて公差記号で指示します。位置決め精度が要る所はすきまを詰め、大トルクで確実に効かせたい所は締まり側を選ぶのが基本です。
単に「つなぐ」だけでなく、2本の軸のわずかな芯ズレ(ミスアライメント)を吸収する役割を持ちます。
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キーはなぜ壊れる?せん断と圧縮でトルクを伝える仕組み
キーが受ける力は主に2つです。ひとつはキー断面を横切って切ろうとする「せん断」、もうひとつは側面が軸溝・ハブ溝を押しつぶそうとする「圧縮(面圧)」です。伝達トルクが大きいほど、また軸径が小さいほど、この力は大きくなります。
強度が足りないときの対処は、(1)キーを長くする、(2)キーを2本(180°または90°配置)にする、(3)材質を上げる・熱処理する、(4)キーをやめてスプラインなどに替える、の順に検討するのが定石です。逆に、過負荷時にキーが先に折れて機械本体を守る「安全装置」として使う設計もあり、狙いによって寸法の決め方が変わります。
型番・リード・精度等級・予圧が図面や部品表のどこに定義され、誰でもたどれる状態になっているかが、選定ミスと再発注ロスを防ぐ分かれ目になります。
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図面でのキー溝指示、現場でつまずくポイント
「キーは規格品だから図面指示は簡単」と思われがちですが、つまずきは寸法そのものより情報の抜けで起きます。よくあるのは、(a)幅の公差記号を書き忘れて“ガバガバ”か“入らない”になる、(b)軸溝深さ t1 とハブ溝深さ t2 を取り違える、(c)キー端の形状(両丸・片丸・角)と溝の逃げを指定していない、(d)過去号機のキー寸法が図面のどこにあるか分からず毎回探す、の4つです。
特に(d)は、寸法を間違えること以上に「探す時間」のロスが積み上がります。呼び寸法・公差・キー長さ・端部形状を、図面と部品表の決まった場所に必ず書く運用にするだけで、照合と再発注のミスは目に見えて減ります。
自己診断チェックリスト:あなたの現場は大丈夫?
- 軸径からキーの呼び寸法 b×h を、規格表を見ずに担当者ごとの記憶で決めていないか
- キー溝幅の公差記号(はめあいクラス)を図面に必ず記入するルールがあるか
- 軸溝深さ t1 とハブ溝深さ t2 を、別々に・正しく指示できているか
- 大トルク部で、キー1本の強度検討(せん断・面圧)を行っているか
- 過去号機のキー寸法・端部形状を、誰でも同じ場所からたどれるか
次のアクション
キーとキー溝は、規格に沿えば選定自体は難しくありません。むしろ現場の損失は、寸法や公差・端部形状といった「決まっているはずの情報」が図面や部品表のどこにあるか分からず、毎回探し直すところで発生します。まずは自社の標準キー寸法と公差ルールを1枚に整理し、図面での記載位置を固定するところから始めるのが近道です。
「キー溝に限らず、図面や仕様の情報が人によって・号機によってバラバラで、探す時間が積み上がっている」と感じたら、どの帳票のどの項目が属人化しているかを棚卸しする業務診断から着手すると、改善の当たりが早くつきます。
よくある質問(FAQ)
キーの寸法は何で決まりますか?
伝達トルクではなく軸径で呼び寸法 b×h が決まります(JIS B 1301)。トルクが大きい場合はキーを長くするか2本にして対応します。
平行キーとこう配キーはどう使い分けますか?
位置決め精度や着脱性を重視するなら平行キー、低速・大トルクで確実な抜け止めを重視するならこう配キーが目安です。ただしこう配キーは打ち込みで芯ズレが出やすい点に注意します。
キー溝の公差はどう指示しますか?
幅 b に対してはめあいクラス(すきま/普通/締まり)を選び、公差記号で指示します。溝深さは軸側 t1・ハブ側 t2 を個別に記入します。
半月キーはどんなときに使いますか?
小径軸やテーパ軸、工作機械の主軸など、溝がキーに自然に馴染む用途で使われます。溝が深く軸強度が下がるため、大トルクには不向きです。
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出典
- JIS B 1301「キー及びキー溝」(日本産業標準調査会 JISC)
- 本記事の寸法は同規格の平行キー代表値の抜粋です。実際の設計・製作時は最新のJIS原典を参照してください。










