ロボットのティーチングは何で減らすのか?——ダイレクト・オフライン・生成AIの使い分けと、ティーチング工数が減らない4条件【2026年版】

ロボットを入れたあと、立ち上げや品種追加のたびにティーチングで何日も止まる——。この悩みに対して「オフラインティーチングを入れる」「生成AIでプログラムを書かせる」といった手段が挙がりますが、どれも減らせる作業が違います。この記事では、ティーチングの工数をどの作業で食っているかを見分け、ダイレクト・オフライン・生成AIをどう使い分けるか、どんなときに工数が減らないかを整理します。

この記事の要点

  • ティーチングの工数は「位置を教える」「動きの手順を組む」「実機で確かめる」の3つに分かれ、減らす手段はそれぞれ違います。
  • ダイレクトティーチングは教える点が少ない作業で効き、細かい位置合わせが多い作業には向きません。
  • オフラインティーチングは教える点の多い作業で効きますが、実機での位置補正はほぼ必ず残ります。
  • 生成AIが代われるのは手順・分岐・コメントといった文字で書ける部分で、位置の正しさや干渉の確認は代われません。
  • 実機に近づいて行う確認・補正は法令上の「教示等」に当たり、特別教育と作業規程が必要な点はどの方式でも変わりません。
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この記事はどんな判断に役立つ?

この記事が支援する判断:ロボットを使う現場の生産技術担当者が、立ち上げや品種追加のティーチング工数を減らすために「オフラインのソフト・協働ロボット・生成AIのどれに手を付けるか」を決める場面を支援します。ティーチングペンダントの操作や資格の基本はティーチングペンダントの記事で扱っており、本記事は工数を減らす手段の選び方に絞っています。

ロボットのティーチングは、何で減らすのか?

結論から言えば、手段を選ぶ前に「ティーチングの時間がどの作業に消えているか」を測ります。ティーチングは、ロボットに位置を覚えさせる作業、動きの順番や条件分岐を組む作業、実機で動かして干渉や位置ずれを確かめる作業の3つに分かれます。どの手段も、このうち1つか2つしか減らしません。

図1は、測った結果からどの手段を選ぶかを順に並べたものです。1品種の立ち上げで教える点の数と、手順を組む時間、実機で確かめる時間を書き出しておくと、どこに手を付ければ工数が減るかが決まります。

手段より先に「時間の行き先」を測る1測る教える点の数・手順を組む時間・確認の時間2点が少ない手で動かして教えるダイレクトを検討3点が多いオフラインで作り、実機で補正する4手順が重い分岐・コメントの雛形を生成AIで作る
図1 ティーチング工数を減らす手段を選ぶ4つの段階。②〜④は排他ではなく、測った結果に応じて組み合わせる(編集部作成)

なぜ「測る」ことが最初なのか?

時間の行き先によって、効く手段がまったく違うからです。たとえば教える点が数か所しかない箱詰めで、オフラインのソフトを入れても、モデル作りの手間が増えるだけです。反対に、溶接線に沿って何十点も教える作業では、手で動かして教える方法は時間がかかりすぎます。

測るときは、品種ごとに「新規の立ち上げ」と「既存品種の小さな変更」を分けて記録します。前者で時間を食っているのか、後者の繰り返しで食っているのかで、投資の回収の見込みが変わります。

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ダイレクト・オフライン・生成AIは、どう使い分けるのか?

使い分けの軸は、「教える点の数」と「実機を止められる時間」の2つです。教える点が少なければダイレクト、多ければオフライン、どちらでも手順や分岐を組む時間が重ければ生成AIで雛形を作る、という分担になります。表1は、方式ごとの向く条件と向かない条件をまとめたものです。

方式減らせる作業向く条件向かない条件
ペンダントで教える(オンライン)—(基準となる方式)点が少なく、実機を止められる点が多い、ラインを止められない
ダイレクトティーチング位置を教える時間点が数か所、位置の精度に余裕がある0.1mm単位の位置合わせが多い
オフラインティーチング位置を教える時間・実機の停止時間点が多い、CADデータがある設備やワークの3Dデータがない
生成AIで雛形を作る手順・分岐を組む時間文字で書くロボット言語を使う書式を確かめられる担当者がいない
表1 ティーチング工数を減らす方式ごとの判断基準(編集部作成)

オフラインティーチングで、実機の作業はなくなるのか?

なくなりません。パソコン上のモデルと実際の設備・ワークには、据え付けの誤差や治具のずれがあるためです。過去記事でも次のように整理しています。

オフラインティーチングの注意点は、実際の位置とオフラインでの位置データは異なる場合が多いことです。したがって、ほとんどの場合、最終的にオンラインティーチングでの位置補正が必要となります。

ティーチングペンダントとは?使い方・デッドマンスイッチ・メーカー4社の呼称比較と資格(特別教育)の要否

この補正は、法令上も「教示等」に当たります。労働安全衛生規則の第36条第31号は、ロボットの可動範囲内で行う「マニプレータの動作の順序、位置若しくは速度の設定、変更若しくは確認(以下「教示等」という。)」を特別教育の対象としています(出典:労働安全衛生規則)。オフラインで作る作業は可動範囲の外ですが、実機での確認と補正を担う人には、特別教育が引き続き必要です。

生成AIは、ティーチングのどこまでを代われるのか?

代われるのは、文字で書ける部分だけです。多くのロボットの動作プログラムは、メーカーごとの言語で書かれた文字の命令です。生成AIは、動作の順番、センサ入力による分岐、エラー時の処理、コメントといった部分の雛形を作ったり、前任者が書いたプログラムの流れを説明させたりする用途で役に立ちます。

一方、位置の座標が正しいか、ハンドが治具にぶつからないか、速度を上げても大丈夫かは、実際のセルを見ないと分かりません。生成AIは現場の設備を見ていないため、この部分は代われません(図2)。PLCのプログラムを生成AIで作る検証を行った過去記事の結論も同じ方向です。

つまり生成AIは「ST言語を書けない人がいきなり実用コードを得る」用途より、「ST言語の文法を理解した技術者が、雛形生成の時短に使う」用途で実用性が高い、というのが正確な結論になります。

生成AIでPLCプログラムは作れる?ST言語自動生成の実用度・メーカー差分を5タスクで検証
生成AIに任せられるのは「文字の部分」だけ生成AIで雛形を作れる・動作の順番・センサ入力による分岐・エラー時の処理・コメント・作業手順書実機で人が確かめる・位置の座標が正しいか・ハンドと治具の干渉・速度を上げたときの挙動・ワークのばらつきへの対応右側は可動範囲内での確認になり、特別教育と作業規程が要る
図2 ティーチングの作業のうち、生成AIで雛形を作れる部分と、実機で人が確かめる部分(編集部作成)

生成AIの出力を実機に流す前には、メーカーのマニュアルで命令の書式を確かめ、低速で動かして確認します。労働安全衛生規則の第150条の3は、可動範囲内で教示等を行うときに「当該産業用ロボットの不意の作動による危険又は当該産業用ロボットの誤操作による危険を防止するため、次の措置を講じなければならない」と定め、作業中のマニプレータの速度などを規程で決めるよう求めています。生成AIで作ったプログラムでも、この手順は省けません。

ティーチング工数が減らないのはどんなときか?——向かない4条件

次の条件に当てはまる現場では、ソフトや協働ロボットを入れても工数はあまり減りません。手段を買う前に、条件のほうを整えるべきです。

  • ワークの寸法や置き位置がばらつく——毎回位置を直すことになり、どの方式でも補正の時間が残ります。先に治具や供給の仕方をそろえます。
  • 設備とワークの3Dデータがない——オフラインのモデル作りに時間を取られ、実機で教えたほうが早くなります。
  • プログラムの書き方が担当者ごとに違う——生成AIの雛形も、前任者のプログラムの流用も、読み解きに時間がかかります。命名やコメントの決まりを先に作ります。
  • 同じ品種が二度と流れない——試作や単品が主だと、作ったプログラムを次回に使い回せません。

4つ目については、多品種少量の自動化を扱った過去記事でも判断軸の1つに挙げています。

同じ品種が次にいつ来るか決まっていない——試作・単品が主だと、ティーチングや条件出しの手間を次回に持ち越せません。

多品種少量生産は自動化できるのか?——可否を決める5つの判断軸と、損益分岐ロットの出し方【2026年版】

まとめ——ティーチングは「時間の行き先」から減らす

ティーチングの工数は、位置を教える・手順を組む・実機で確かめるの3つに分けて測ると、減らし方が決まります。教える点が少なければダイレクト、多ければオフラインで作って実機で補正し、手順や分岐を組む時間が重ければ生成AIで雛形を作ります。どの方式でも実機での確認は残り、可動範囲内で行う人には特別教育と作業規程が必要です。ワークのばらつき、3Dデータの有無、書き方の決まり、品種の繰り返しがそろっていない現場では、手段より先に条件を整えてください。ロボットの動かし方で止まりやすい作業は研磨・バリ取りの記事でも扱っています。

どの作業でティーチングの時間を食っているかは、対象の品種を1つ挙げて作業を書き出すと見えてきます。ロボット導入の進め方を相談する(無料)

よくある質問(FAQ)

オフラインティーチングを入れれば、実機でのティーチングは不要になりますか?

不要にはなりません。パソコン上のモデルと実際の設備には据え付けや治具の誤差があるため、実機での位置の確認と補正がほぼ必ず残ります。減るのは、実機を止めて位置を一から教える時間です。

生成AIでロボットのプログラムを書かせても大丈夫ですか?

動作の順番や分岐、コメントの雛形づくりには使えます。ただし位置の座標や干渉は実機でしか確かめられないため、メーカーのマニュアルで書式を確認し、低速で動かして確かめる手順は省けません。

ダイレクトティーチングなら、特別教育は要りませんか?

要ります。労働安全衛生規則は、可動範囲内で行う動作の順序・位置・速度の設定、変更、確認を「教示等」として特別教育の対象にしています。駆動源を遮断せずに手で動かして教える方法も、可動範囲内で位置を設定する作業に当たります。

出典

  • 労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第36条第31号・第150条の3 e-Gov法令検索(2026年9月30日に法令APIで原文を照合)
  • JIS B 8433-1(ISO 10218-1)「ロボティクス―産業用ロボットのための安全要求事項―第1部:ロボット」

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